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映画「おんどりの鳴く前に」

監督:パウル・ネゴエスク

ルーマニアの田舎村、中年警察官のイリエは独身で鬱屈した日々を過ごしつつも果樹園を営む計画を実行しようとしている。しかしある日、平穏なはずの村で惨殺死体が見つかり、イリエは村の裏側に巻き込まれていく。

鑑賞中になんとなく宗教の匂いを感じてしまうのですが、これやはり聖書にある話を基盤にしてるようです。聖書読み込んどるキリスト教徒の方々が観たら「はいはいあれね!旧約聖書の27章ね!」ってなる物語なんかなあ?感覚知りたい。なんの信者でもない私が観てもどこかクラシックな展開というか正義感を試されている教典の香りがしました。

中年男が小さな村で権力者や犯罪と自分の生活を天秤にかけて悩みどうするかって展開に目が離せないのす。警察官て立場に加えて部下への感情や被害者への罪悪感やらでイリエの頭の中が徐々にぐっちゃりしてくる過程を観せられて"これは何か最後に爆発か暴発か?きっと何か起こるんじゃろ?"て予感がモリモリに!あ〜全部書きたい、、ネタバレしたい、、くぅ〜w

酒ばっか飲む田舎

田舎の狭いコミュニティだからこそ起きる犯罪や事件を扱う映画やドラマって珍しくないですよね?トーンの選び方にセンスが出るものです。韓国とか日本だと「〇〇村」みたいなタイトルで薄気味悪いホラー色を出してきたり、ハリウッドだと派手にドンパチしてヒーロー映画にしちゃったり。同じ田舎事件モノを扱っても様々なトーンがあり得る。今作のネゴエスク監督は普通の愚かなおっさんがじんわり徐々に巻き込まれちゃうリアリティを重視したように思います。淡々とした映像。深刻な事態でも普通のおっさんたちの姿が滑稽に見えるんです。クライマックスの川辺にはカッコ悪い人々の末路が日常の延長のように映り、どこか可笑しく映ります水面にw(観た人しか分からない表現ですいません)。教典のごとく正義感を問うたラストのセリフは巧みで刺さります。拍手しそうになりました。

主人公のイリエ。演技うますぎ

ルーマニアの原題だと「OAMENI DE TREABA」だそうで。"善良な人々"という意味で"こちら側の人々"というニュアンスもあるそうです。ちなみに英題は「MEN OF DEEDS」これだけでは深さがない感じしますなw
邦題は「おんどりの鳴く前に」と。なるほどお。新約聖書においてキリストが使徒に予言する際の言葉でもあるそうで、劇中でもおんどりが印象的に出演するしなあ。考えられた邦題な気がします。鑑賞後に意味がわかるとじんわり沁みてくるタイトル。好きですね。


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