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映画「スープとイデオロギー」

監督:ヤン・ヨンヒ

「ディア・ピョンヤン」「家族のくに」で在日朝鮮人である自分の家族の姿を見せてきたヤン・ヨンヒ監督。
彼女のオモニ(母)は1948年の"済州4.3"と呼ばれる大虐殺事件で婚約者を殺害された中、生き延びて日本に渡った過去を持つ。以降70年その記憶を閉していたオモニが詳しく語り始めた。しかしその直後からアルツハイマーを患い、徐々に記憶が無くなっていく。ヨンヒ監督がオモニの人生と向き合ったドキュメンタリーです。(注意:今回は私ネタバレ書いてます。情報入れずに映画を見たい方はこれ以降読まないことをオススメします。すみません内容に大きく触れないと感想書きにくいドキュメントでしたので)

想像通り重たい内容モリモリです。でも私は見てちゃんと沈んで学んで考えを巡らせた上でオモニの幸せにも触れた気がしてまして。晴れやかな気分でもあるのです。娘であるヨンヒ監督が母の悪夢を呼び起こし人生を理解していくのはとても苦しい作業だったと思います。事件について詳細を聞いたり済州島を訪れて当時の惨劇と生き残った人の辛さをあらためて理解すると今まで自分が家族に抱いた感情には何か足りなかったと感じてしまったのではなかろうか。想像が追いつかないけども、映画を見てオモニの人生を通して朝鮮半島の方々に少し近づけるのです。映画の素晴らしいところですね。こんな悲劇を経験したら韓国じゃなく北朝鮮に傾倒するかもなあとかアメリカ人日本人と結婚は許さんって発言しちゃうかもなあと自分ごとに考える。

このドキュメンタリーのキーパーソンであるヨンヒ監督の夫の存在に何か、、なんでしょう、、人の可能性を感じます。夫の荒井カオルさんが結婚の挨拶に訪れるシーン。オモニは嬉しそうに得意のスープを振舞い歓迎します、娘が日本人の夫を連れてきたのに。その日から交流を深め、ついにはこの娘婿にスープのレシピを伝授するのです。家族になっていくんだなあ、と。時間と個人が解決するモノがありますね。

スープのレシピを教え、過去の惨劇を語り、ようやく娘たちと故郷の済州島を訪れた際にはもうオモニは病状が進み当時の記憶も薄れていて、夫や息子も生きていると思い込んでたりするのです。それをですね、なんだか良かったなあと感じてしまいました。もちろんアルツハイマーは悲しい病ではあるけどこれまでの辛い出来事を忘れて家族が生きていると信じてるオモニは悲しみから解放された母に見えました。私が当事者ではないから言えることですね。 勝手ながらヨンヒ監督の1つの集大成と感じました今作。
映画観たあとに下の写真を見ると泣けてきちゃうなあ。いいシーンだった。

"スープとイデオロギー" ギュッと詰まったいいタイトルです。



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