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国公立大医学部医学科の共通テスト(センター試験)得点率90%の定員構成比の推移

前回の記事では、久しぶりに共通テストリサーチを用いた統計分析を行いました(データ集計レベルです)。分析テーマは、共通テスト得点率90%の定員構成比です。

前回は東京一工&地帝が対象でしたが、今回は国公立大医学部医学科(医医)を対象に同じ分析を行ってみます。分析の考え方は前回の記事をご参照ください。

なお、国公立大医医は対象が多いので、旧帝国大以外は、駿台全国模試の合格目標ライン偏差値(A判定相当)に基づいて、次の3区分で集計します。駿台偏差値は2023年7月に調べたものです。

駿台全国模試の合格目標ラインと合格者平均の乖離幅を見ると、医学部は他の学部より広めに設定されているようです。そのため、医学部と他の学部で合格目標ラインの偏差値が同等であっても、合格者の学力レベルが同等であるとは限りません(検証中です)。<2024.10.19>

◆難関11大学
駿台偏差値が66以上の大学です。地帝医医や東大理一・理二と同等の合格目標ラインの大学です。具体的には次の11大学で、東名阪の大都市圏+山陽新幹線の沿線に存在しています。

筑波大、千葉大、東京医歯大、神戸大、岡山大、広島大、横浜市立大、名古屋市立大、京都府立医大、大阪公立大、奈良県立医大

◆中堅17大学
駿台偏差値が63〜65の大学です。閾値は大学数のバランスで決めたので、特に意味はないです。この水準が合格目標ラインになるのは、京大理系の上位学部・学科です。顔ぶれを見ると、北陸・東海・九州の大学が多いようです。

群馬大、新潟大、富山大、金沢大、信州大、岐阜大、浜松大、三重大、滋賀医大、山口大、香川大、高知大、長崎大、熊本大、鹿児島大、大分大、和歌山県立大

◆一般14大学
駿台偏差値が61〜62の大学です。この水準が合格目標ラインになるのは、京大理系の下位学部・学科や東工大です。東大理一・理二だとB判定の下限〜C判定くらいです。北海道・東北・中国地方の大学が多くなります。

旭川医大、弘前大、秋田大、山形大、福井大、鳥取大、島根大、徳島大、愛媛大、佐賀大、宮崎大、琉球大、札幌医大、福島県立医大

1. 国公立医医の共テ得点率90%の分析

それでは、分析結果を順番に見ていきます。まずは、分析対象データの一覧です。ベネッセ駿台の共通テストリサーチから集計しています。

表1

あまりにも細かいので、旧帝国大以外の医医は先に述べた3つの区分に集約した上で、5年/10年単位の平均値を集計してみると、こうなります。

表2

右端の過去10年平均を見ると、東大理三と京大医医は定員の9割以上(≒合格者の9割以上)が、共テ得点率9割をクリアしていることがわかります。また、前半5年(2015−2019年)と後半5年(2020−2024年)を比較すると、センター試験時代の前半5年は共テ得点率9割が定員100%の大学がいくつかあったのが、共通テストに移行する後半5年では定員構成比が上下に散けていることがわかります。

この傾向を確認するために、過去10年の推移グラフを作ると、このようになります。

グラフ1

東大理三、京大医医、大阪大医医、名古屋大医医は2019年度入試までは、センター得点率90%が定員の100%でした。2020年以降は散け始めて、東大>京大>大阪大>名古屋大となっていきます。

なお、2015年度から2022年度に向けて全体的に右下がりなのは、テストの難化の影響だけではなく、学力上位層が医医から理系学部へシフトしていることも影響しています。医医から理系学部へのシフトは過去に分析しているので、興味のある方はそちらをご覧下さい。

2. 医医と理系・文系の比較

せっかくなので、医医以外の文系・理系学部との比較も行ってみます。駿台全国模試・合格目標ライン偏差値(A判定80%相当)と後半5年の共テ90%定員構成比の2軸で比較します。どちらも人数の加重平均です。駿台偏差値は科目数や文理の母集団補正は行っていません。そのため、文系のみの一橋大が高めに出て、理系のみの東工大が低めに出ます。

まずは、一覧表です。

表3

駿台偏差値が67〜68のところを黄色でマークしましたが、共テ90%定員比を比較すると、駿台偏差値が一番低い東大の文系・理系が、医学部医学科でマークした4つよりも上にいることがわかります。大学ランクの中心値理論により、近隣により上位の大学があるこのクラスの医医は、学力分布が輪切りとなってしまい、上位層が薄くなることが、ここでも確認できます。

このことを見るために、駿台偏差値と共テ90%定員比の散布図を見ます。共テ90%定員比は底10の対数にしています。ブルーが医医、グリーンが文系・理系学部です。

グラフ2

片対数グラフで概ね右上がりの直線上に分布していますが、グラフの左上に行くほど駿台偏差値に比して上位層が厚く、右下に行くほど駿台偏差値に比して上位層が薄くなります。

パッと見てわかるように、グリーンの文系・理系学部が左上方向、ブルーの医医が右下方向にプロットされています。このことから、国公立医医は文系・理系学部に比べて、相対的に上位層が薄いことがわかります。

過去に同じ共通テストリサーチのデータを用いて、駿台偏差値と学年上位○%の定員構成比の分析を行ったことがあります。この分析では、実際値と回帰予測値の残差を「魅力度」と呼び、駿台偏差値に比して学年上位○%の定員構成比が高いほど、学力上位層を引き寄せる魅力度が高い、という評価を行いました。その結果、国公立医医は魅力度が総じて低いことが確認されています。今回の共テ得点率90%定員比でも、同じ傾向が確認されました(元データが同じなので当たり前ですが)。

3. 最後に

2回に渡って、共通テストリサーチのデータを用いて、共通テスト得点率90%について分析を行ってきました。共テ得点率90%以上の学力優秀層は、東大・京大と一部の難関医学部に集中しており、中堅〜一般の医学部や地帝の文系・理系学部にはほぼいないことがわかりました。年ごとの難易度によって上下変動はしますが、共テ得点率90%というのは、かなりハードルが高いラインのようです。


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