障がい者の「お金の管理」について考える
昨年2018年は”キャッシュレス元年”でしたね。私自身もiPhone XSを手に入れて、Walletに登録したSuicaやQuick Payで買い物したり、移動したり、いろんなPayサービスの”祭”にも参加しています。すっかりキャッシュレスライフです(飲み会やイベントの割り勘はまだまだ現金が多いけれど…) 。全てのペイメントサービスとMoney Forwardを連携させ、お金の動きをもれなくデータ化しています。データ化=可視化することで節約に繋がるし、一緒に暮らす家族との共有もかんたんです。
ただ、自分の生活においてキャッシュレスが進んでおらず、めちゃくちゃストレスを抱えている部分があります。それは精神障害を持つ父親のお金の管理です。
私の父親は23年前に交通事故に遭い、後遺症で「高次脳機能障害」を持ってます。
高次脳機能障害とは?高次脳機能障害とは、病気や事故などのさまざまな原因で脳が部分的に損傷されたために、言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの知的な機能に障害が起こった状態を指す。注意力や集中力の低下、比較的古い記憶は保たれているのに新しいことが覚えられない、感情や行動の抑制がきかなくなるなどの精神・心理的症状が出現し、周囲の状況に合った適切な行動が選べなくなり、生活に支障をきたすようになる。https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/358-375.pdf
見た目はその辺によくいるおじさんです。普通に話せるし、歩けます。ただ社会活動場面(職場、学校、買い物、役所や銀行の手続き、交通機関の利用など)において、適切な判断をしたり人とコミュニケーションをとったりするのが非常に困難な病気です。1人では生活ができないので、ちょっと若いのですが有料老人ホームに入居しています。
離れて暮らすものの父と生活を共にする中で、「障がいがある人こそキャッシュレス(=非現金化/お金の可視化) が必要なのでは」と感じるようになりました。今回はその必要性を私の父を例にお話したいと思います。
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本人がお金を管理できない
うちの父は甘いものが大好き!の糖尿病持ちでもあります。「これ、次に病院に行く時のタクシー代ね。」と言って現金を渡しても、食欲が制御できないのでコンビニでアイスを買って散財してしまいます泣。 (本人は食べてないと言いますがゴミ箱にめっちゃ入っている。) 老人施設の規約上、施設側ではクレジットカードや現金を管理することができません。そのため、父に見つからないように、手渡しする現金とは別に、5千円札を小さくたたんで父の財布のポケットに忍び込ませて、いざというときに使えるようにします。父がコンビニでお金を使い切ってしまい一文無しにタクシーに乗車し、降車の際、「現金がなくて降りられない。」と電話がかかって来るので、「実はお財布に5千円に入っているよ」と教えてあげます。本人の記憶の曖昧さを利用したギリギリでアナログな管理体制で、いつもヒヤヒヤしています。お財布もバックの中にあるのに見つけられなかったり忘れたりします。
父の場合、現金を渡してしまうと
・気持ちを制御できず無駄遣いしてしまう
・何に使ったかわからない
・セキュリティが甘い
という点で問題があります。
「管理を支援する側」の負担
父のようにお金の自己管理できない人が、不利益を被らないよう、第三者が援助し、何かあれば法的に対処できる「成年後見人制度」というものがあります。
成年後見制度認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。(中略)家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって,本人を保護・支援します。http://www.moj.go.jp/content/001287467.pdf
私たち親子もこの制度を利用し、私が保佐人となり、財産管理をしたり代理でサービスの契約/申請(銀行や保険など)を行なったりします。この制度は、1年に1度家庭裁判所に事務報告のために、財産目録とそのエビデンス(通帳のコピー、領収書、立替金の出納書 等)を提出なければなりません。この作業がめちゃくちゃ大変です(確定申告ばりのめんどくさです)。カード利用明細書など自動でデータ化できていればいいのですが、病院やタクシーは現金しか使えないところが結構あるし、前途のように現金でお小遣いをあげているため、父がいつ、何に、お金を使ったか、私がいつ何円立替えたかを常に記録しないといけません。私自身、管理が苦手なタイプなのでつらい。ただ成年後見人等の不正行為の件数の急増しており、問題視されていることもあり、疑いの目がかけられないためにも報告はちゃんとします。
後見人制度を利用していない場合でも、お金の管理をしている人にとって、管理の簡易化は必要です。
課題は障がい者本人のプライバシーと他者の監視とのバランス
父と私の場合、必要なのは
①必要な時だけ必要な分だけチャージができるプリペードカード
→チャージ元は管理者(第三者)ではなく本人の口座やクレジットカード
→ただしチャージの権限は第三者(スマホアプリがベスト)
②病院/タクシーのクレジット対応…!
です。ただし、①のように過度に監視・監督・制限すると本人の人権を侵害してしまったり、不正に利用される可能性があります。そのため本人の同意と判断能力に応じて、自由と制限のバランスを慎重に見ていく必要があります。
現状「第三者が財産を制限できるサービス」が日本で見当たらないのは、そのような懸念があるからなのではと思います。(そのようなサービスがあったら教えてください!)
親がこどものお金を管理するサービスは結構あります。
【子どものお小遣いにプリペイドカード 履歴確認で安心】
(オリコプリペード、チャージ手数料200円!?うーん...)
米国では高齢者向けプリペイドカードがあるようです。
このサービスは、カードの名義人以外に、家族などの“管理者”を設定するのが特徴だ。管理者は、ウェブサイトを通じて、名義人の利用履歴をモニタリングしたり、利用条件や利用限度額を制御する権限を持つ。
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精神障がい者とキャッシュレスと題しましたが、父のような場合だけでなく、お金の管理が不安になる高齢者やその家族も増えていると思います。
本人と見守る側が「監視する/される」の関係ではく、できるだけ本人の意思を尊重し、自立を支援し、安心して援助できる、そんなお金のやり取りができる世界にしたいし、その手段としてキャッシュレスが一助になるのではと思います。
どうすればこの世界に実現できるのか私ももうちょっと考えます、そして、WHITEでアイデアを実現していきたいです。
ご意見、ご感想あればぜひコメントください。