61 頂から見る景色
入院して、14日目。
ぼくは入院中に、Bリーグ日本一の栄冠を手にした。
ぼくは試合終了間際、
いや、間際ではない。
残り3分を過ぎたあたりから、コートではなく、みんなのプレーが映し出されているスクリーンを眺めていた。
そして、その画面に自分が映し出されたときにはじめて自分が泣いていたことに気づいた。
溢れ落ちてしまいそうだったので、上のスクリーンを見上げていた。
あの涙は、嬉し涙なのか悔し涙なのかと疑問を持つ人もいたかもしれない。
答えは、
どちらも正解で、どちらも不正解である。
あのとき、残り3分を切ったあたりから、怪我してから3ヶ月間の苦しかった日々が蘇ってきた。
神様に見放されるどころか、嫌われているのではないかと思うほど、
うまく行くことなんて一つもなかったし、全てが悪い方向に転んでいくようだった。
転げ落ちていく中で、必死に何かに掴まろうと手を伸ばし続けたけど、最後まで転げ落ちて、谷底まで落ちたような気分だった。
転げ落ちていく中で、たくさんの人が手を差し伸べてくれた。
仲間、ブースター、家族、日頃から支えてくれていた人。
そんな人たちの顔が急に、一人一人蘇ってきたのだ。
すると涙腺のコントロールが効かなくなっていた。
結論、あの涙の成分の大半は、その人たちに対する感謝の気持ちだった。
「頂」から見える景色は、人それぞれ異なる気がした。
ぼくの場合は、感謝したい人の顔がたくさん浮かんできたから、それが「頂」からの景色だと思っている。
この3ヶ月を振り返ると、
99%の時間は暗くて冷たい谷を彷徨っているような感覚で、昨日が残りの1%だった。
ただそのたった1%は、99%の苦しかった時間をはるかに上回るほどの嬉しさと幸せをもたらしてくれた。
好きな著名人がこんなことを言っていた。
この言葉は真実だった。
病院食を14日間食べ続けたあとに、ホテルで食べたローストビーフの味は、確かに美味しさが倍増していた。
そして自分のことが嫌いになりかけるまで苦しんだ日々は伏線であり、あの瞬間で多くを回収することができた。
まだ回収できてない伏線がある。
これから一つ一つ回収していけるように顔張るので、これからの回収劇を最後まで見届けてもらえたら幸いである。
今シーズンもたくさんの応援ありがとうございました。
引き続き宜しくお願いします。
keep going!