アプリで会った怪しい女性から、生き方みたいなものを学んでいた
緊張した足取りで、指定された新宿のカフェへ向かっていた。
緊張していた理由は言うまでもない。
マッチングアプリ登録以来、ついに一人目の女性と会うことになったから。
ではなく、「これから会う人に何か勧誘されるんじゃないか?」という、“男の勘”が働いていたからだ。
普段は頼りにならない男の勘も、この日だけは妙に冴え渡っている気がした。
学生時代、ネットビジネスの世界に片足を突っ込んでいたおかげで、「新宿のカフェ」という時点で怪しさを感じていた。
さらに、これは紛れもない偏見だけれど、
・LINEのアイコンがリゾートでの一枚
・LINEのタイムラインが頻繁に更新されている
・やけに絵文字が多い
・集団で撮影した写真が多い
・会うまでのハードルが低い
これらに当てはまる人は、いわゆる“そういう人”だと思っている。
その日会う予定だった歳上の女性は、全ての条件を見事に満たしていた。
運命のご対面。
2階の奥の方に、その女性は座っていた。
パソコンで何か作業をしている。この時点でもうチェックメイトだ。
結論を言ってしまうと、その女性はやはりそういう人だった。
直接は語らなかったけれど、随所随所でビジネス臭を漂わせていた。
「おがたのよはくさんは、どんなお仕事をされているんですか?」
「教育系の事業の立ち上げをやっておりまして...」
当時、会社の創業メンバーだった僕は、自身の経歴や創業に参画した背景、思いなどを伝えた。
「事業の内容というより、一緒にやっているメンバーが好きなんですよね。今のメンバーとなら、ぶっちゃけどんな事業をやっても良いかなと思っています」
話の流れで、こんな思いを伝えてみたところ、
「そうなんですね。じゃあ、“教育への思い”はあまり無いんですか?」
すかさず、質問で返された。
教育への思いが無いわけではない、そんなニュアンスの内容を伝えると、その後はなぜか説教のようなことを延々とされた。
ぼくがあまりにも若かったからなのか、ビジネスマンとしてのあり方が未熟だったのか、彼女が先輩面したかっただけなのか、はたまた勧誘のためのトークスクリプトだったのか、目的は分からない。
けれど、確かに淡々と説教をされた。
「なんで初めて会った人に、しかもビジネスのことで説教されなきゃいけないんだ」
当時は、かなり不服だった。
けれど、どこか触られたくない部分を触られた気がして、心のどこかでモヤモヤしていた。
あれから4年経った今、その言葉が思い出される。
自分が何かに没頭できない、最後の最後までやり切れないのは「思いがないから」だ。
全く思いがないわけではない、“そこまで思いがない”のだ。
これまでの人生を振り返る中で、一つのその結論に辿り着いた時、奇しくも彼女の言葉が蘇ってしまった。
部活のメンバーが好きという気持ちだけでは、きっと全国大会への切符は掴めないだろう。
自分自身が取り組むもの、「What」に対しての思い入れは少なからず必要だ。
どの程度を目指すのか次第なのかもしれないけれど、「好きこそ物の上手なれ」という言葉がまさにそう。
思いを持てるものに偶然出会えればそれはベストだけれど、「巡り合うものに思いを乗せられるか」の方が大事かもしれない。
ビジネスマンとしてのあり方というより、もはや生き方の教訓をあの日得ていた。
唐突に動物占いをされて、あれこれ分析されたのも今となっては良い思い出。
何もマッチングはしなかったけれど、こうしてあの時の言葉を回収できて、結果的には良かったのかもしれない。
そして、最後にこれだけは伝えたい。
・LINEのアイコンがリゾートでの一枚
・LINEのタイムラインが頻繁に更新されている
・やけに絵文字が多い
・集団で撮影した写真が多い
・会うまでのハードルが低い
これらに当てはまる人がいたら、おそらく“そういう人”だ。