見出し画像

そのイライラ、伝染るんです

ネガティブな感情が伝染するしくみとその影響

ネガティブな空気は「見えない波」で伝わる

私たちは、日常生活のなかであらゆる人と関わっています。

仕事の職場でも家庭でも、あるいは通勤・通学の途中ですれ違う人々からも、知らず知らずのうちに何らかの影響を受けているのです。

特に注目すべきなのは、ネガティブな感情が「まるで見えない波」で伝わる可能性があるということです。

これは、一種の「感情の感染現象」といえます。

例えば、誰かの大きなあくびを見て、思わずこちらもあくびが移ってしまった経験はありませんか?

このように、人間の脳は相手の状態を観察し、それを自分の内部で模倣するという働きをもつ部分があります。

ポジティブな感情に限らず、イライラや疲労感といったネガティブな要素も、知らず知らずのうちに“もらってしまう”のです。

ストレスが移るとパフォーマンスは落ちる

一度、他人が発するネガティブな空気を受け取ってしまうと、自分の思考や感情のバランスが崩れやすくなります。

たとえば職場で、上司がイライラした態度を露わにしていると、部下も釣られたように神経がピリピリしてきたり、仕事へのモチベーションが下がったりすることがあります。

家族やパートナーなど、より近しい間柄であればあるほど、相手の不安や怒りを受け取りやすいとも言われています。

さらに、人間はストレスを感じると体内に特定のホルモンを分泌します。

そのホルモンが、コミュニケーションだけでなく体から発散される微妙な信号や匂いを通じて周囲に伝わり、見るだけ・近くにいるだけでも「移って」しまうのです。

これらのネガティブな要素を受けると、自分の集中力や思考力、さらには身体面にまでも悪影響が及ぶことがあるとされています。

なぜ感情はこんなに広がりやすいのか

私たちは、互いの表情や声音、姿勢、あるいは身体が発するわずかな信号を受け取りながらコミュニケーションをしています。

こうした人間同士の「繊細なやりとり」があるからこそ、相手の気持ちに共感したり、気づかいを見せたりできるわけですが、反面、その共感能力の高さが裏目に出てしまうこともあります。

相手のネガティブな思考や感情に共鳴し、いつの間にかこちらまで巻き込まれてしまうのです。

これは職場だけでなく、SNSやネットのニュースを見ても起こりえます。

誰かが激しい批判をしているのを見ると、自分もイライラしてしまう。

いわゆる「炎上」のような現象もまた、人間の感情が連鎖的に広がる性質を示している例と言えるでしょう。

感情が乱れると正しい決断がしにくくなる

ネガティブな感情がもたらす判断ミス

私たちが何かを決断する際、理性的に考えているつもりでも、実は感情の影響を大きく受けています。

落ち着いた気持ちで考えれば判断できるはずのことも、ストレスや不安が強くなると、焦って誤った選択をしてしまうことがあるのです。

具体的には、イライラがたまっているときには「つい衝動的に行動してしまう」「確認不足のまま結論を下してしまう」ということが起こりやすくなります。

あるいは過度な不安にとらわれていると、目の前の問題を大きく見積もりすぎたり、ネガティブな結果ばかりを想像して行動が消極的になったりします。

冷静さを保つことで見えてくるもの

逆に、冷静な状態を維持していると、現状を俯瞰する力が働きやすくなります。

問題を整理しやすくなり、的確なタイミングで周囲に協力を求めたり、複数の選択肢を比較検討してから最適解を選んだりと、より合理的に行動できるのです。

ビジネスや人間関係の場面で「いかに感情をコントロールするか」が問われるのは、このように感情面が判断に大きな影響を及ぼすからにほかなりません。

そのためにも、まずは自分が余計なストレスを受けずに済むようにし、ネガティブな空気に巻き込まれないように対策をとることが重要となります。

他人のストレスに感染しないための4つのポイント

ここでは、周囲のネガティブ感情を受けにくくし、自分自身の感情を落ち着かせるための4つのポイントを紹介します。

これはあくまで一例ですが、どれも実践しやすいシンプルな工夫ばかりです。

1.ストレスの捉えかたを変えてみる

ネガティブな空気を察知するとき、多くの人は「嫌なものだ」「厄介な状況だ」と感じることでしょう。

もちろん、相手のイライラや焦り、悲しみといったものを「大歓迎」できるわけではありません。

しかし、ストレスには必ずしも悪い面だけでなく、学びの要素や挑戦するきっかけが含まれている可能性があります。

たとえば、難しい課題に直面するとき、それを「自分を鍛えるチャンスだ」と捉えることで、不安や怒りを別のエネルギーに変えることができます。

同じように、イライラした同僚を見たときには、「この人は今、何かに追われているのだろうな」「自分がサポートできることはないだろうか」と発想を変えてみるのです。

そうすることで相手に対する嫌悪感だけで終わらず、ポジティブな行動につなげられます。

さらに言えば、ストレスを適度に活かすことができれば、集中力や創造力を高められるという意見もあります。

短期的に「やる気」を引き出し、さらに難題を乗り越えたあとには充実感を得られることもあるでしょう。

大切なのは「ストレスはすべて悪だ」と思い込まずに、うまく利用する視点を持つことです。

2.会話ややり取りをポジティブに始める

ネガティブな状態の人と接するとき、最初にどのような言葉を交わすかは意外と重要です。

ちょっとした挨拶や一言で、その後のやり取りがポジティブに流れやすくなるか、逆にさらに暗い方向へ進んでしまうかが分かれます。

例えば、相手が明らかに不機嫌そうでも、こちらが冒頭で明るい表情や声かけを意識するだけで、相手の感情が多少和らぐことがあります。

表情筋は感情と密接に結びついており、人間は相手の表情を見て自分の気持ちを変化させやすいからです。

電話やオンライン会議であれば、第一声を「今、少しお時間いただけて嬉しいです」「今日もよろしくお願いします」といった前向きな言葉で始めるように心がけます。

「忙しくてバタバタしています」と言いたくなるときでも、そこをぐっとこらえて、まずはポジティブなトーンで切り出してみましょう。

これだけでも、相手だけでなく自分自身のストレスを減らす効果が期待できます。

3.自分の存在価値や強みを意識する

ネガティブな空気に巻き込まれそうなときこそ、「自分は何のためにここにいるのか」「自分が得意なことは何か」といった自己肯定感を思い出すようにしましょう。

自分の価値をしっかり認識している人は、多少のネガティブ要素が周囲にあっても「自分は自分」と踏ん張れるものです。

逆に、自信がない状態だと、相手の苛立ちや嫌味を過剰に受け取ってしまい、どんどん気分が落ち込むという悪循環に陥りがちです。

ですから、ふだんから自己肯定感を高める習慣をもつことが望ましいでしょう。

  • 成功体験や楽しかった瞬間をノートに書く
    過去にどんな小さな成功をしたのか、誰かに褒められて嬉しかったことは何か、紙に書き留めておくと良いでしょう。
    落ち込んだときにそれを見返すだけで、自分の長所を再認識でき、落ち着きを取り戻しやすくなります。

  • 適度な運動を習慣づける
    運動は心身ともにリフレッシュするだけでなく、「これだけ走れた」「今日は目標回数の筋トレができた」という達成感を得やすい活動です。
    身体を動かすとエンドルフィンなどの物質が脳に作用し、ポジティブな気分を高めてくれます。

  • 得意分野を磨く
    仕事であれ趣味であれ、「これなら人よりちょっと得意」という分野を見つけて磨くことが大切です。
    自分の強みを理解している人は、周囲のストレスに飲み込まれにくくなります。

4.事前の「心の免疫」を高めておく

外出前や、職場に向かう前、あるいはストレスを受けそうな場面が予測できるときには、「自分の心に予防接種をするようなイメージ」を持つと良いでしょう。

具体的には、次のような方法があります。

  • 感謝リストを作成する
    1日に感謝できることを3つ思い浮かべてみます。
    「今日は天気が良い」「同僚が助けてくれた」「朝食が美味しかった」など、どんなにささいなことでも構いません。
    これを習慣にすると、ポジティブな視点をキープしやすくなります。

  • 誰かに短いメッセージを送る
    短い時間で構わないので、家族や友人、同僚などに感謝や応援の気持ちを伝えるメールやチャットを送ってみましょう。
    ポジティブな気持ちを外に向けて表現することで、自分自身もポジティブモードに入りやすくなります。

  • ちょっとした瞑想や深呼吸
    出勤前や自宅を出る前に、1~2分だけ目を閉じて深呼吸をしてみる。
    あるいは好きな風景や色をイメージして、意識的に心拍数をゆったりさせる。
    これだけで精神面をリセットする効果が期待できます。

  • 軽い運動やストレッチ
    朝に少しだけストレッチをしたり、仕事の合間に肩回しや首回しをしたりするのもおすすめです。
    身体を動かすことで血流が良くなり、気分転換になるだけでなく、集中力も高まりやすくなります。

ストレスに負けず、自分の感情を整えるためのヒント

ネガティブなニュースや情報に触れすぎない

ストレスは人間関係からだけでなく、メディアを通じても侵入してくることがあります。

ニュースやSNSが便利な一方で、怒りや悲しみ、不安といった情報を断続的に目にすることで、自分の精神状態が乱されることもあります。

とくに夜寝る前などは、できるだけ刺激の強い情報に触れないようにするなど「情報の取り入れかた」を工夫しましょう。

自分と相手の区別をはっきりさせる

他人が不機嫌そうにしているときに、「自分のせいかも」と思い込む人がいます。

しかし、実際には相手の機嫌の悪さが自分と全く関係ない理由から来ていることも多いものです。

相手の辛い状況を想像して寄り添うことは大切ですが、必要以上に巻き込まれないためには「相手の感情は相手のもの」と適度に割り切ることも必要です。

自分の感情を否定しすぎない

周囲にネガティブな感情をまき散らさないために、自分の感情を必要以上に押し殺す人がいます。

しかし、限界を超えて感情を抑え込んだ結果、突然爆発してしまうケースもあるので注意が必要です。

ストレスを感じたときは、「ストレスを感じている自分」を客観的に捉えて「今、ちょっと疲れているな」「イライラしてるな」と言語化し、深呼吸したりリフレッシュできる行動をとったりすることが大切です。

可能であれば物理的な距離をとる

どうしても相手からネガティブ感情が強く伝わってくる場合には、物理的に距離を取るのもひとつの手です。

長時間同じ空間にいると、どうしても影響を受けやすくなります。

少し席を外して休憩スペースに行く、移動できる環境であれば散歩に出かけるなど、呼吸を整えるだけでも随分と違います。

感情をコントロールして正しい決断を下すためのプロセス

ここまで、周囲のネガティブな感情からの感染を予防・緩和する方法を中心に紹介してきました。

しかし、それだけでは「いつでも正しい決断を下す」というところにはまだ足りません。

最終的には、自分がどういう目的をもって何を成し遂げたいのか、それに対してどんな選択肢があるのかをしっかりと整理したうえで、冷静に判断できるような「心の余裕」を手に入れることが重要です。

  1. 状況を俯瞰する
    まずは自分の置かれている状況や、周囲の人々がどのような状態なのかを客観的に観察します。
    自分自身が余裕を失っていないか、他人の感情に巻き込まれていないかを確認しましょう。

  2. 目的と優先順位を明確化する
    「何をしたいのか」「何が重要なのか」をはっきりさせると、余分なストレスを受けにくくなります。
    目標が定まっていると、ネガティブな情報に直面しても、そこに振り回されることなく行動できます。

  3. 選択肢を複数出す
    判断ミスを避けるためには、一つの選択肢だけに固執せず、複数の可能性を視野に入れることが大切です。
    ストレスが高いときほど「もうこれしかない」と思い込みがちですが、冷静さを取り戻すことで別の解決策が見えてくることも少なくありません。

  4. 小さく試して調整する
    大きな意思決定であっても、まずは小さく試してみる、あるいは一部だけ実行して反応を見てみるという手段があります。
    状況を少しずつ確認しながら進めることで、大きな失敗を回避しやすくなり、結果的にストレスを減らすことができます。

  5. 結果を振り返る
    最終的な結果が出たら、そのプロセス全体を振り返ることを習慣化しましょう。
    「どのような判断を、どんな状態で下したのか」「もっと冷静に判断できる方法はなかったか」などを見直すことで、次に同じような状況に陥ったときに、より適切な行動をとれるようになります。

おわりに:ネガティブもポジティブも「伝わる」ことを意識しよう

私たちの周りには、さまざまな人がいて、さまざまな感情が飛び交っています。

ネガティブな感情は「伝染」しやすいですが、その逆もまた真なりで、ポジティブな感情も周囲に影響を与えます。

つまり、あなたが落ち着きを取り戻し、ポジティブな姿勢でいることで、あなたの同僚や家族、友人もプラスの影響を受けるかもしれないのです。

もちろん、人生には理不尽なことや思い通りにいかないこともたくさんあります。

感情を完全にコントロールするのは不可能ですし、それが人間らしさでもあります。

しかし、ちょっとした考えかたや行動によって感情の「向かう先」を変えることは可能です。

今回ご紹介した「他人のストレスに巻き込まれない4つのポイント」を踏まえ、さらに自分なりのリラックス方法やセルフケアを組み合わせてみてください。

たとえば、趣味の時間を確保する、自然の中を散歩する、ペットと遊ぶ、好きな音楽を聴くなど、自分が前向きになれる手段は人それぞれです。

ネガティブな感情に包まれてしまうと、視野が狭まり、ちょっとした選択ミスが大きな結果を招いてしまうこともあります。

逆に、落ち着いた心と前向きな態度を保っていれば、多少のトラブルがあっても柔軟に対応できるでしょう。

「感情を上手に扱うこと」は決して特別な才能ではなく、意識的な練習と習慣化によって誰にでも身につけられるスキルです。

今まさに人間関係や仕事、さまざまな状況においてストレスを感じている人もいるかもしれません。

そんなときこそ「ネガティブは移りやすいが、ポジティブも同じように伝わりうるのだ」と思い出し、まずは自分自身が心の安定を得る手段を試してみてください。

自分を整えることができれば、きっと次の行動も良い方向に進みやすくなるはずです。

正しい決断をするためには、クリアな頭と揺るぎない心が必要です。

周囲に広がるネガティブな空気をブロックし、ポジティブに変えていく力を養うことで、意思決定の精度は高まり、結果としてあなた自身の人生もより豊かなものになるでしょう。

ぜひ、今日から少しずつでも意識してみてください。きっと日々の選択が大きく変わってくるはずです。



ここから先は

0字
一度マガジンをご購入いただくと、今後追加する有料記事を追加料金なしで読むことができます。 記事数の増加に合わせて販売価格を上げる予定です。なので、現時点の販売価格が最安値となります。 ご興味のあるかたはぜひこの有料マガジンをご購入ください。

世に成功者と呼ばれる人たちが実践している思考法(マインドセット)を解説し、実体験も交えて深掘りしてみようと思います。 週に一度を目処に、…

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得!

よろしければ応援をお願いいたします!いただいたお気持ちがとてもはげみになります。ありがとうございます!