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弁護士に必要な、熟考力と即断力のバランス #035

4月になりました。私は体調を崩してしまい、ようやく明日からちゃんと仕事ができそうです。

最近、弁護士って、一見相反する能力や性質をバランスよく使い分けなきゃいけないことが結構ある仕事だなって思うのです。

その中の一つが、熟考力と瞬発力のバランスです。

熟考力

まず、熟考力は割とイメージどおりかと思います。

何か問題に直面したとき、法律や判例、実務書などいろんな所にあたって、悩みながら答えを出すことは、多かれ少なかれ、日々弁護士がしていることでしょう。

即断力

他方、熟考せずに即断することが求められるケースも、結構あると感じています。

弁護士が日々お客様から聞かれる質問は、本当にたくさんあります。中には簡単に答えの出る質問もありますが、大多数はそうではありません。

そんな中、まあまあな数あるのが「時間をかけて調べても新しい情報は出てこないだろうし、思考は深まらないだろうな」と思われる質問です。

これにもさらに様々なパターンがあるのですが、ひとつのパターンは「原理原則論からいうと答えは明らかだが、実際その人の立場に立ったらとても困るだろうな」という質問です。

一例を挙げると

「父親の相続放棄をする予定だけど、父親の所有する土地の上にある簡易な小屋が崩れそうで隣の人から苦情が来る。自分も同じ集落に住んでいるし、このままだと村八分状態だから自力で壊したい」

みたいな質問です。

小屋を壊すのは法定単純承認事由である、財産の「処分」にあたってしまいます。いくら調べてもこの結論は変わらないはずです。

そのため、この種の質問は、時間をかけて熟考するより、即断して回答しまった方が良いです。

具体的には、「放棄が認められなくなると困るから壊せません。隣地の人には諦めてもらってください」と回答するか、はたまた「放棄が認められなくなるリスクはあるけど、壊しても良いのではないか」と回答するか(なお、後者の場合、放棄申述の際には陳述書等で細かく事情を説明するなどの対応も必須です)。

前者ならあまり悩まず答えは出せます。しかし、後者の場合、
・放棄が認められなくなるリスクはどの程度なのか
・小屋を壊す、というのは、そのリスクを冒してでもとるべき行動なのか
・逆に小屋を壊さなかった場合のデメリットはあるのか
・万が一放棄が認められなかったときにお客様が「敵」にならないために弁護士はどういうリスクヘッジをしておくべきか
などなど、考えることは結構あります。

もちろん、お客様のためにも自分のためにも、必要以上にリスクは取れないので、保守的なアドバイスを取らざるを得ないこともあります。

それでも、可能な限り、お客様の「こうしたい」を叶えたいな、と思っちゃいますよね。お客様も、それが難しいことはネットなどで調べればわかった上で、困ってるから質問しているわけなのですから。

「こうしたい」を叶えられる可能性があるのか、それに伴うリスクが弁護士として許容できる範囲のものなのか、といった検討すべきポイントを絞って、短い時間でスパッと決め切る、そんな即断力が弁護士には大事だったりするのではないかな、と考えています。

私のバランス感覚

バランスが大事、という話をしておきながらお恥ずかしいのですが、私は油断すると即断力のほうに偏りがちです。。

現在ほぼ平日9-18時しか仕事をしていないこともあり、ぱっぱと決めていかないと案件が滞留してしまいます。そこで、あまり判断を先送りせずに即断してしまうのですが、後から「実はちゃんと調べればよかった」と気づいて困るケースも結構あります。反省。

即断も大事ですがほどほどに、という自戒込みのnoteです。他にもいろんなバランス話がありますので、また今度!

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