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短編小説 ほれ薬5 

つづき

麻里は相変わらずおしゃべりが止まらない。もう麻里を残して帰ろうかしら。そう思っても口をはさむ余地がない。飲み代だけ置いておこうか。すると麻里が
「ねえあんた、九丁目の銀行のところって言ったわよね」
咄嗟に何のことだか分からなかった。
「ほら、良く当たる占い師だか霊能者がいるとか言ってたじゃない」
九丁目? そう、麻里よく憶えてるわ。
「そう、そう、麻里、行ってみたの? あれから何も言わないから、忘れてると思ってたわ」
「あたし、この前そこに行ってみたのよ。そしたらさあ、・・・あんた場所間違えたんじゃないの? もう一回ちゃんと教えて」
わたしは例のおじいさんのいた銀行の位置を正確に教えた。わたし自身はあの夜以来あそこに行ってはいないが、足が痛くなった時の状況やハイヒールを思い浮かべるとはっきりと思い出した。
「ねえ」麻里が言う。
「そんなとこに銀行なんかなかったわよ。それにその周辺にも銀行なんてないし、占い師らしい人も見なかったわ」
岡山くんも口を出す。
「つまり、銀行に似た建物だったとか、九丁目じゃなく、他の場所だったとか・・・」
確かにあの足の痛みに気を取られていたのは確かだけれど、慣れない道を歩いていた記憶はない。それからみんなでその場所を論じ合った。
が、わたしの言うところにそれらしい建物なんてないというのだ。
話は占い師を見つけることよりもわたしの記憶がどうかしているということになってしまった。麻里はわたしの頭がおかしいと大笑いし、やっぱり抜けているわと馬鹿にするのだった。

翌日、

つづく



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