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AOTY アルバムオブザイヤー 2024

えー、今年も1年間お世話になりました。あっという間ですね。あっという間と感じることもあれば、あれからまだ1年しか経ってないの?と感じることも同じだけある。不思議なものです。

物事によって時間の距離感が違く感じる。ボヤけたりハッキリ見えたり、不思議なもので、時間の距離感というのは乱視のようだ。

今年も通称「AOTY」、アルバムオブザイヤーを決めていきたいわけだ。正直、上半期が終わった頃にもアルバムを数枚取り上げるnoteを書いたので、もうなんかそれでいいじゃないという思いもある。ただ、1年の締めくくりにこれやっとかないとダメな自分もいたりして、厄介。

毎年必ず言っているけど、今年も音楽を全然聴いていない。困った。あんた忘れてないか?と思った時は、こんなアルバムあったよとそっと優しく教えてください。聴きます。

昨年はこちら。結構ちゃんと聴いてるね。





BE:FIRST『2:BE』


BE:FIRST『2:BE』

どうしたって結果として出てしまっているのだ。今年自分が最も再生したアルバムとしてApple Musicが頑張って集計して叩き出した結果がBE:FIRSTの2ndアルバム『2:BE』だった。デビューから3年、前作から2年、この短時間で10年分くらいを全速力で走る彼らのスピード感に振り落とされないように必死だ。
ラップ、ダンス、ヴォーカル、そして楽曲のクオリティ、どれをとっても一級品のJ-POPをリリースし続ける彼らのデビューからの姿勢は。今でも少しも褪せることなく、むしろストイックになり続ける。テレビやライブでも絶対に生歌で、常に原曲よりもクオリティ高くポジティブなエネルギーを届けることを絶対条件にパフォーマンスをする。"慢心も媚びもしないのが主義"そんなスローガンを掲げるBE:FIRSTがJ-POP を引っ提げ、広がる世界へと船を漕ぎ出す新たなBE:FIRSTの始まりのアルバムだ。


berlioz『open this wall』


berlioz『open this wall』

今現在、イギリスで最も聴かれているジャズ・バンドであり、注目を最も集めているイギリス人プロデューサーと言っても過言ではないberlioz。ディズニー映画『おしゃれキャット』に登場するキャラクターberlioz(ベルリオーズ)からとった名前で活動するJasper Attlee。以前はTed Jasperという名義で活動をしており、今回はアーティスト名義をberliozに変えてからの初のアルバム。
以前のエレクトロポップな作風から、ハウスとジャズやブルースを下地にクロスオーバーした音楽性へと緩やかに移行した彼の現行の音楽性が詰まった作品。ビターでありつつ柔らかく、そして開放的。心地良さが第一優先のように感じるメロディとビートに、聴いているだけで空気に解けていきそうな気分になる。来日すれば日本でも間違いなくTom Mischのような存在になることでしょう。


Phoebe Go『Marmalade』


Phoebe Go『Marmalade』

オーストラリアのポップアーティスト、Phoebe Louによるソロプロジェクト Phoebe Go。ソロデビューアルバムとしてリリースされた今作は、ドリーミーであり、内省的な楽曲の持つエネルギーをキャッチーに昇華してくれるメロディが心地よく、力強く聴いている人の心を突き動かしてくれる。
最近はビート感の強い音楽ばかりを聴いてしまっていた耳には、逆にこのギター、ベース、ドラムのシンプルな三点の音が新鮮に心地良く届き、そこにPhoebeの真っ直ぐで儚い歌声が合わさり、思わずグッと来てしまう。ずっと忘れていた音楽の本質的な良さを思い出すアルバム。1曲目の"Love You Know"からクライマックス。この一曲で掴まれたら最後まで掴まれっぱなし。


Little Man Tate『Welcome To the Rest of Your Life』


Little Man Tate『Welcome To the Rest of Your Life』

2005年結成、シェフィールド出身の4人組バンドLittle Man Tate。当時勢いのあったArctic Monkeysと同郷であることもあり、比較されがちだった1stアルバムの『About What You Know』はキャッチーな音楽性がUKでも大きな話題となり、中学生の頃の自分が大熱狂していたバンドのひとつだった。
しかし2009年に突然解散、以来影を潜めていたLittle Man Tateがコロナ禍に突然の再結成を発表。そして今作はなんと16年ぶりの3rdアルバム。
16年ぶりのアルバムともなれば方向性やサウンドが変わって、再結成は嬉しいけどなんだかな…という気持ちになったりするものだけど彼らは2009年の続きをそのままやっている。拳を突き上げたくなるようなキャッチーなパワーポップとストレートなガレージロックのサウンドは健在。
解散前に聴いていた16年前の記憶と繋がって、思わず涙が出てしまった。きっとこういう音楽がひとつでもあれば、死ぬまで音楽と共に生きているということになるのだろうと感じた。


Charli XCX『Brat And It's Completely Different But Also Still Brat』


Charli XCX『Brat And It's Completely Different But Also Still Brat』

2024年を代表する作品と呼んでもいいくらいの強い印象を残したCharli XCXの『brat』。それをさらにデラックスにパワーアップしたバージョン。タイトルが長すぎて覚える気には特になれないので、「bratのなんかスゲー方のやつ」と呼んでいる。持ち前のアグレッシブなダンスミュージックは、さらに強く前向きに。気持ちを強くいきたい人の背中を押すようなビートで、前へ前へと気持ちを押し上げてくれる。
Billie Eilishとのコラボ作の"Guess"を聴くときには、スターをとったマリオのような状態で日常を突き進むことが可能になる。他にもJapanese House、THE 1975&Jon Hopkins、Ariana Grande、Troye Sivanなど挙げればキリがない豪華な共演者たち。世界を巻き込んだポップミュージックの代表作が誕生したわけさ。ちなみにこれまでずっと「Charlie」だと思っていたよ。ごめんねチャリ姐。


FUR『Songs For You』


Fur『Songs For You』

UKブライトン出身の4人組バンドFUR、超絶待望3年ぶりの2ndアルバム『Songs For You』がリリースされた2024年の5月。なんていい年なんだ!と今年の運勢まで確信してしまった。
FURが進む道にはいつでも、脈々と受け継がれてきた伝統的なロックの歴史が横たわっている。60年代のモータウンやオールドスタイルなソフトロック、90年代のブリットポップ、2000年代のガレージロックまでをシームレスかつタイムレスに行ったり来たりする。まるでタイムトラベラー。あまりにロマンに溢れている。
このアルバムでは、そんな音楽の歴史をチューニングするように古いラジオのチャンネルを1曲ごとに変えていく。そんな音楽性の豊かさと、メロディセンスに脱帽してしまう。ずっと彼らの虜だ。


ベランダ『Spirit』


ベランダ『Spirit』

生命力や魂を意味するアルバムタイトルの『Spirit』。結成から10年、前作から6年。待ちに待ったベランダの3rdアルバムが完成した。「"飽くまでキャッチーであること"へのこだわりは揺るぎなく一貫しています。」と、フロントマンの高島が語るようにベランダの本質にあるキャッチーで親しみやすいメロディと高島のヴォーカルは健在。そして涙腺にグッとくる特異なメロディセンスは抜群。
アルバムタイトルにもある1曲目の"スピリット"は聴いた瞬間に心臓を掴まれた。この気持ちは何度聴いても褪せることがない。"生きることしか能がないけれど 何かしなくちゃな 成し遂げなくちゃな"というこのフレーズに込められた6年分の思いというのが詰まりきった、1曲目からベランダというバンドのエモーショナルな展開は多くの人の耳から心に刺さる大名曲だと思う。
そして、そこで歌われる"Tonight(is the night)"(今夜がその夜だ)の歌詞でこのアルバムを締める。生きていくことの平凡も特別も全て噛み締めて明日へと足を進めるための生命力になる、儚くも確かにそこにあり、誰だって誰かの特別になり得ることの証明をする作品だ。


Michael Mayo『Fly』


Michael Mayo『Fly』

BeyoncéやWhitney Houstonらのバックヴォーカリストを務めた母と、
Earth, Wind & Fireではサックス奏者として、Sergio Mendesのバックではホルン奏者としても活躍した父を両親に持つMichael Mayoの2ndアルバム。幼い頃から両親のステージや演奏を見てきた影響で、ヴォーカリストとしてだけでなく、作曲家、作詞家、編曲家として大きな才能を見せている。
Jacob CollierやHerbie Hancockなど数々のアーティストとの共演を重ね、今作ではNate Smithがドラマーとしても参加をしている。
ジャズのスタンダードの名曲とオリジナルの楽曲を行き来する内容のアルバムでありながら、Michael Mayoのアレンジにより、ひとつの作品として聴かせる。ジャズの歴史を感じながら、同時に今とこれからのジャズを堪能できるジャズの旨みたっぷりな作品。


Jamie xx『In Waves』


Jamie xx『In Waves』

"The xxの頭脳"ことDJでプロデューサー、Jamie xxのソロ作品の第二弾。前作である『In Colour』はポップミュージックとダンスミュージックをハイブリッドした圧倒的なマスターピースとして今も君臨している。そんな
中での9年ぶりとなる待望の2ndアルバム。
静寂と開放感に包まれるオープニングトラック"Wanna"から幕を開ける今作。サウンドはアグレッシブでありながらも、常に多幸感に溢れている。それはシーン全体が他者との繋がりを求めているからなのかもしれない。
The xxのメンバーが集結した"Waited All Night"は、もうThe xxの新曲と思ってもいいのでは?と思ってしまう。どうやらようやく彼らのそれぞれのソロ活動が落ち着いて、The xxとしての活動が始まるらしいので、次はそれぞれがソロ活動で感じたことを持ち寄って新たなThe xxの扉が開かれるのを楽しみに待ちたい。


Homecomings『see you, angel.see adore you.』


Homecomings『see you, angel.see adore you.』

今更バンドの説明は不要だと思っている。それほど日本のインディ・オルタナロックシーンでは大きな存在になっているHomecomings。通称ホムカミ。コロナ禍である2021年にリリースされたメジャーデビュー作『Moving Days』から3年で、メジャー3作目となる今作『see you, angel.see adore you.』。
メンバーの脱退を経て、"3人のホムカミとして"完成された初の作品となった今作は、日常に色を添えるHomecomingsらしいサウンドが健在。ギターのリバーブ、ギターのノイズの存在意味を思い出すような美しいサウンド。ギターのリバーブが好きなのは自分の孤独を理解してくれるから、ギターのノイズが好きなのは自分の闇を引き裂いてくれるから。
変わり続ける"変わらない"美しさと、人の心にそっと届ける言葉の確かさに、思わず抱きしめられたような気持ちになる。明日からも生きていく者に与えられる音楽だ。


Common&Pete Rock『The Auditorium,Vol.1』


Common&Pete Rock『The Auditorium,Vol.1』

90年代からヒップホップシーンを駆け抜けてきたラッパーのCommonとプロデューサーのPete Rock。ヒップホップシーンの重要人物である二人のコラボ作。同じ時代、同じシーンをサバイブしながら意外にもこれまでコラボした楽曲は2曲しかなかった彼らが、昨年ヤンキースタジアムで行われたヒップホップ50周年記念コンサートで意気投合したらしく、2024年にして初のコラボアルバムをリリース。
聴いた瞬間に黙らせる。これがヒップホップだと、"THIS IS HIP HOP"と額にベチンと押しつけられるような、90年代から彼らが培ってきたヒップホップが展開される。今年ナンバーワンのヒップホップアルバム。ただ僕はヒップホップが好きであると再認識する作品だ。


Los Campesinos!『All Hell』


Los Campesinos!『All Hell』

2024年最もエモーショナルだったアルバムといえばLos Campesinos!
7作目のアルバム『All Hell』。7作目となる今作は久々のカムバック。そして最高傑作と呼んでもいいほどの名盤がリリースされた。
彼らの根底にあるエモーショナルな音楽性に最も振り切った作風で、2008年のデビューアルバム『Hold On Now, Youngster…』から追い続けている身としてもこのサウンドの原点回帰と、原点以上の最高到達点に思わず涙が止まらなかった。
繰り返されるごとに叙情的になっていく印象的なギターのリフ、現状を吐露するようなリリック、楽曲が展開するごとに開けていく楽曲の世界観、コーラスを重ねて歌われるエモーショナルなメロディ…どれをとってもLos Campesinos!といえばこれだよ!という叫びたくなる数々に、思わず友達にYouTubeのリンクを送り付けたくなるほどの喜びがあった。最高傑作ここにあり!


Tank and the Bangas『The Heart,The Mind,The Soul』


Tank and the Bangas『The Heart,The Mind,The Soul』

ファンク、ヒップホップ、ゴスペルの音楽性を集約して、ポエトリーという表現方法も取り入れ、力強いメッセージを届けるニューオーリンズの4人組、タンク・アンド・ザ・バンガスのアルバム。
今作は、これまでEPとしてリリースされてきた『The Heart』、『The Mind』そして『The Soul』の三部作を一つに集約した作品。現代で最も注目されているジャズシンガーSamara Joyや、Robert Glasperも参加していて内容は豪華で濃厚。
うねるベースとドラムが生み出すグルーヴとエネルギー溢れるパッションは、とにかく聴けば分かる。リリックやサウンドが心や身体の内側に届き、それがゆっくりと外側に溢れていく感覚。その音楽の根源とも言える開放感がこの作品には詰まっている。音楽に身を委ねること、信頼すること。そうすることで音楽側が手を差し伸べてくれる。


The Lemon Twigs『A Dream Is All We Know』


The Lemon Twigs『A Dream Is All We Know』

今年なんだかんだいろいろな音楽を聴いてきたけど、こんなにも新しく楽曲がリリースされるたびに興奮したアルバムはなかった。24歳と26歳になるD'addario兄弟によるThe Lemon Twigs
2017年にリリースされた1stアルバム『Do Hollywood』は60~70年代のロックからインスピレーションを受けた作風が世界でも話題を呼び、何度か来日公演を行なっている。その年のフジロックでステージを見た印象は、まだ2人とも10代だったこともあり、ヤンチャな兄弟というイメージ全開だった。
ただそれから7年もの時が経ち、大人になった彼らがリリースした5作目のアルバムは、原点回帰的な部分も持ちつつも地に足のついた多幸感満載な最高傑作に仕上がった。今年ナンバーワンのトキメキポップアルバムである。


half•alive『Persona』


half•alive『Persona』

「インディポップアルバムで1番よかったのは何か?」と尋ねられればhalf•aliveの『Persona』が1番に思い浮かぶ。
カリフォルニア出身の3人組バンド。2018年にリリースされた"still feel."が3億回以上の再生回数を誇り、MVも大きな話題を呼び鮮烈なデビューを放ったのが印象的なhalf•alive。
今作はそれから6年の時が経ち、落ち着きとさらなる音楽性のアップデートを感じる4作目。
80年代の音楽からの影響を感じる持ち前のダンスポップは健在でありながら、よりエモーショナルに自己のアイデンティティと社会との繋がりを歌う姿にはこの数年で広がっていった彼らの音楽の景色のスケールの大きさを感じる。これからさらに彼らが大きな存在になっていくことを予感させてくれるアルバムになっている。


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