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2021 best album

えー、年が明けました。
すっかり2021は死語ですが、なんと2021年の年間ベストの記事が2021年内に書き終わらなかったため年を跨いで昨年のことを書いていく始末となっております。ご理解ください。
ただ何でもかんでも早い者勝ちのようにやっていくのはネットの負の遺産であり、そんな生き方では疲れてしまうので僕は僕のペースでやっていきます。皆さんもそんな生き方でもいいのですよ、というある種の提案です。

というか、もう自分のために書きます。来年の自分が読み返すために書くのです。音楽を消費するな?大切にしろ?年間ベストに挙げたからもう"去年の音楽"みたいな扱いをするな?そんな気持ちで書いていきます。やっていきましょう2022。終わらせましょう2021。

昨年の記事はこちら

グソクムズ 『グソクムズ』

『グソクムズ』

■日常に溶け込むグッドミュージック
日本語ロックと呼びたくなる、四畳半のアパートが似合う夕方系の音楽たちがまた生まれました。
グソクムズの1stアルバム、セルフタイトルの『グソクムズ』。そこにあるだけで愛おしく、揺れる電車、公園で遊ぶ子どもたち、商店街のパックに詰められたお惣菜たち、沈む夕日に帰る街角…そんな情景が浮かび上がる東京が風街だった頃の情景がシンクロする2021年的日本語ロックの傑作です。


Lawrence 『Hotel TV』

『Hotel TV』

■世界を揺るがす最強の兄妹
どんな時でも変わらない音楽を歌を届けること、Lawrenceの音楽からはそんなメッセージを感じる。2人の歌の力強さからは生きるパワーを感じるし、ポジティブなエネルギーを感じる。それは巨大で地球を救うようなスーパーヒーローのようなものではないかもしれないけど、隣にいる人に優しくできるような、そっと手をひいてくれるような歌が詰まっている。再生ボタンさえ押してくれれば飛んでくる、やっぱりスーパーヒーローなのかもしれない…。


BLACKSTARKIDS 『Puppies Forever』

『Puppies Forever』

■ヒップホップよりヒップホップ
ヒップホップ、エモやパンク、インディーロックなど様々な音楽から受けた影響を自由に、とにかく自由に乱れ打ちするBLACKSTARKIDSにはボーダーや彼らを定義する音楽性などない。才能や実力、スキルなんて音楽をやる上で本当に必要なものではない。自分たちで作り出したものに想いを乗せるだけなのだ。今のアメリカに中指ではなく拳を突き立てるような、正しさとか賢さとかだけではなく、感情に任せたままでもなく淡々と歌っていく彼らのスタイルがすごく好きだ。CLUELESS AMERICAを世界に発信するBLACKSTARKIDS。


Official髭男dism 『Editorial』

『Editorial』

■生きていく教科書のような作品
近年はJ-popにもいい作品が多くて、こういう音楽が子供たちにもちゃんと届いてるなら音楽の未来も明るいなと思うことも時々ある。特に2021年にリリースされたOfficial髭男dismのアルバム『Editorial』はどんな年齢層の人が聴いても"ちゃんと届く"、ポップスであることの使命と音楽的充実感をどちらも兼ね備えた作品だった。
生きていくことで感じる憤りや不条理さもちゃんと抱えて、死にゆく僕らの日々の意味やその中身にも向き合った作品は2021年的であり、2021年の始まりにリリースされた"Universe"には瑞々しさを感じて2021年の行く末を何か感じさせるような1曲だった。
愛すること、生きること、去りゆくこと、全てを包括した生命としての人間の生活に寄り添った教科書のようなアルバムでした。


吉澤嘉代子 『赤星青星』

『赤星青星』

■吉澤嘉代子が紡ぐ12篇のtapestry
1曲の中で人を生かす、その人の人生を動かす。
吉澤嘉代子の歌の中で生きている人たちの一生が聴いてる人たちに見えてくる。彼女の作り出す音楽は世界に色を与え、心を溶かしていく。
触れて仕舞えば消えてしまいそうなほど繊細な人々の心の機微にそっと触れていく彼女の手触りが伝わる作品。12曲にそれぞれの人生のストーリーが込められていて、その楽曲を聴いている人たちのそのまた多くのそれぞれの人生が見えてくる。やっぱり彼女の才能にはある種の畏怖を感じる。名作でした。


DYGL 『A Daze In A Haze』

『A Daze In A Haze』

■極東島国から世界に鳴り響くアンセム
やっとDYGLを年間ベストに選ぶ時が来た。
これまでのアルバムは常に当落線上(いい表現ではないです)で、個人的に年間ベストにいつも入らなかったのですが今作は1番最初に年間ベスト入りが決まった作品でした。
これまでのガレージロック、ガレージパンクの路線からインディーロックからギターポップまで幅の広い音楽性へと方向転換し、90年代の様々なUS、UKのバンドを思い浮かべるような楽曲が連なる、彼らの音楽性の幅の広さを感じる作品となっている。
特に"Half of Me"、"Sink"などの楽曲の強度のようなものはこれまでの作品では見られなかったほど強くなっているように思う。2021年は自分達の音楽をちゃんと届けていきたい、そんな音楽からの意志を強く感じた作品だった。


beaux 『a loveletter to the moments spent outside』

『a loveletter to the moments spent outside』

■ついにbeauxが動き出した…!
"Dirty Hitの秘蔵っ子"、昔のディスクレビューならそんなふうに書かれていそうなDirty Hitからの新人アーティストことbeaux。
2021年は『a loveletter to the moments spent outside』と『memories written down so i won't forget them』の2枚のアルバムのリリースをしている。このアルバムのタイトルから感じるThe 1975から影響を受けてる感はサウンドにもモロに出ています。瑞々しく繊細なサウンドデザインとメロディセンス。
どちらのアルバムも素晴らしかったけど、個人的には2つで1つだと勝手に思っています。今回挙げたのは先にリリースされて聴いた回数が多かったという点でこちらのアルバムを挙げました。
今後に期待、本当にそれな。という感じです。


Bleachers 『Take the Sadness Out of Saturday Night』

『Take the Sadness Out of Saturday Night』

■天才プロデューサーのマルチな才能に感服
Fun.のギタリストであり、Taylor SwiftやLana Del Reyのプロデューサーとしても近年その才能を爆発させているJack AntonoffのソロプロジェクトBleachers。
聴いた瞬間に人々を虜にしてしまう丸出しのポップセンス。温かみのあるサウンドと懐かしさも感じるホーンの使い方。聴けば分かるから聴いてくれ、そんな気持ちにどうしてもなってしまう最高っぷり。寄ってらっしゃい見てらっしゃい状態である。
30年後の自分が2021年にはBleachersのアルバムが良かったんだよ…まあ、聴いてみてくれと若い子に話している想像をしてしまう。いつまでも色褪せない最高のバイブスをパッケージ!
Clairoの2021年作『Sling』も手がけたJack Antonoff。1年間お疲れ様でしたの気持ちだ。


Rostam 『Changephobia』

『Changephobia』

■天才プロデューサーのマルチな才能に感服②
今年はRostamとBleachersがいる。それだけで素晴らしいことがはっきりと分かる。ここ数年の音楽シーンを語る上で外さないのはJack Antonoffだけではない。
今のアメリカの音楽シーンを語る上で外せないバンドことVampire Weekendの元メンバーであり、バンドの中枢を担ってきたRostam Batmanglij。プロデューサーとしてもHaimやFrank Oceanの『Blonde』やClairoの『Immunity』にも参加しており、この名前を見るだけでも現在の音楽シーンにどれだけ功績を残しているかが理解できる。そんなRostamのアルバムは最高に決まっている、それは植え付けられた印象からくるものではない。聴いた瞬間に分かってしまう。ポジティブなだけでもなくネガティブなだけでもない現在の社会やシーンを眺めながらゆっくりと思慮されたようなそんな作品の奥行きを感じる。インディーポップという言葉や枠組みを緩やかに押し広げて、可能性をどこまでも引き伸ばす音楽のuniverseはここにある。そう思った。


Yogee New Waves 『WINDORGAN』

『WINDORGAN』

■立ち止まった少年たちの航海の先
paraisoを目指して旅立って辿り着いたBlue Harlemの先の話。彼は何を夢見て、そこで何を見て今何を感じているのか、そんな青春の現在地を覗かせるような瞬間が『WINDORGAN』に詰まっているのだと思う。
コロナ禍という時代に立ち止まり、彼らの旅も停留した。迷いや安堵、怒りや悲しみ。愛おしさや優しさ、希望や葛藤。そんな瞬間がこれまでに彼らが見てきた風景を通して見えてくる。時折風が吹いて、雨が降って、晴れ間もあれば止まない雨もある。それでも「あしたてんきになれ」と歌い続ける角舘健悟という音楽家の旅路に、僕らも連れて行ってくれないかという気分になってしまうのだ。


Valley 『Last Birthday』

『Last Birthday』

■EPでもいいよね最高だもん
そうなのです。年間ベストアルバムって、EPは入れちゃいけないのだろうか。ミニアルバムもダメなのだろうか。基準はよく分からないが、基準は自分で作ろう。音楽が変わり続けるなら聴く側も変わり続けたい。オルタナティブにやっていこう。
Valleyの新作は前作より遥かにポップで、ポップさを全部詰め込んだらこんな感じになりましたという空気すら感じる。ジャケも最高に愛おしい。2019年にリリースされた『MAYBE』も当時はもちろん年間ベストに選んではいたが、あの時の気持ちよりも遥かに好きの気持ちが高まっている。今後リリースされるフルアルバムもきっと年間ベストに選ぶほどの作品になるであろう。もう予感と期待はバッチバチに上がっている。


Homecomings 『Moving Days』

『Moving Days』

■新しい季節、新しい呼吸
2021年の春は昨年と同じような季節を迎えまいと新しい空気を呼び起こすような作品がたくさんリリースされた。カネコアヤノの『よすが』、ミツメの『Ⅵ』、Clairoの『Sling』そしてHovvdy『TrueLove』。どれも年間ベストアルバムに入れるか大変迷いましたが最終的に選んだのはHomecomingsの『Moving Days』でした。
色々な気持ちが渦巻いたまま終わった2020年、そしてそのまま始まった2021年。何か変わったのだろうか、この日々に希望あるのだろうか。そんな迷いや葛藤も全て抱えながらそっと寄り添う、そんな作品になっている。
忙しさや不安で季節を忘れた僕らの日々に春の訪れを教えてくれた、当たり前にそこにある優しさを思い知ったのであった。


まとめ

毎回こうして最後に"まとめ"と題して1年をまとめることを書いてるんですけど、1年間をまとめることなんてできるのだろうか。してもいいのだろうか。以前よりも色々なことを向き合って考えていかなくてはいけないことが多くあるように思う。変えていくべきこと、変わらずにいるべきこと、新しく始めること、やめること。社会における様々なことが岐路に立たされている。
ただ一ついまも変わらずにずっと言えることは音楽というコンテンツを、存在を、ずっと変わらないままに愛していきたいと思っているのだ。
2022年、どうか僕らが思っていた"普通のこと"や"当たり前のこと"がひとつでも多くありますように。愛し合っていきましょう2022年、疲れながらでも生きていきましょう2022年。

2021年聴いていた楽曲に関する記事はこちら

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