労働者派遣における実労働時間管理と賃金と派遣料金の支払いの関係
労働者派遣における実労働時間の把握責任等は次のとおりです。
これに基づけば、タイトルの問題は次のように整理されます。
イ)派遣労働者の実労働時間の把握は派遣先のみがその責任負っている。
ロ)つまり、派遣元は派遣先から提供された実労働時間情報に基づき計算を行い賃金を支払えばよい。
ハ)一方、派遣先から派遣元への派遣料金の支払いの根拠となる時間は、必ずしも分単位で支払わなければならない訳ではなく、労働者派遣契約(派遣元と派遣先との企業間契約)の取り決めによるので、法的な縛りはなく原則、自由。
二)派遣元が、派遣先から、分単位ではなく端数切捨ての実労働時間情報のみを受けているのであれば、端数を切捨てた上でそれを実労働時間であるとして情報提供を行ったのは派遣先であるから、派遣元は基本的に未払い賃金の問題(労基法第11条、24条違反)について事実上免責される。但し、派遣先のみにその原因が認められる場合に限る。
※後に派遣先から実労働時間情報の修正が為されれば、派遣元はこれに基づいて再計算して派遣労働者への賃金支払いを過不足調整すればよい。
ホ)一方、派遣料金請求のための端数切捨て後の時間情報(派遣料金請求情報)と、切捨て前の実労働時間情報の2種類が派遣先から派遣元に情報提供されている場合には、端数切捨てを行ったのは派遣元という事になる。
ヘ)即ち、派遣元の立場としては派遣料金の支払いルールを実労働時間に合わせるか、派遣先が端数切捨ての有効性について責任を負うとの事であれば、切捨て前の労働時間情報を貰わないという、いずれかの対応が考えられる。
ト)尚、派遣元が派遣労働者から労働時間の端数処理について苦情申し入れを受けた場合には、派遣元は派遣先と協議連携して、事実確認及び改善のための働きかけを派遣先に対して行う必要がある。(派遣元指針3.適切な苦情処理)
以上、イ)~ト)の説明を図示すると次のようになります。
派遣労働者等が労働時間の端数切捨てを不服として申入れを行う場合、この法的関係性を理解しておらず、派遣元事業主のみに責任があるとしてくる事がほとんどです。
ご参考ください。
三浦 裕樹/MIURA,Yūki
Ⓒ Yodogawa Labor Management Society