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「2025年・65歳定年義務化」という重大な誤報

先に結論を申しますと2025年に65歳定年は義務化されません。

例えばあるサイトでは以下のような記載が見られますがこのセンテンスだけで言えば全くのデタラメです。

2025年4月から、定年制を採用しているすべての企業において65歳定年制が義務となります。

2013年、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により、定年が60歳から65歳に引き上げられることとなりました。

2025年完全義務化】 65歳定年制とは?

当協会にもこの誤情報を見て心配された顧客から確認の電話やメールが数件寄せられています。

まず「定年制」とは労働者が一定の年齢(定年年齢)に達すると自動的に雇用関係が終了する制度のことを言います。
そして、事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければならないとされており60歳を下回るような定年年齢を定めることはできません。(高年齢者雇用安定法第8条)

民間企業における定年制度の変遷を時系列で申しますと以下になります。

1986年:民間企業の60歳定年が努力義務化
1998年:60歳未満定年制が禁止
2000年:65歳までの雇用確保措置を努力義務化
2006年:65歳までの雇用確保措置が段階的義務化
2013年:65歳までの雇用確保措置が義務化(希望者全員)
2021年:70歳までの就業確保措置が努力義務化

2013年に「65歳までの雇用確保措置(高年齢者雇用安定法第9条)」として、定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければならなくなりました。

① 65歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入

この①~③が「雇用確保措置」であり、措置は「定年年齢の引き上げ」に限られません。
「継続雇用制度」とは現在、雇用している高年齢者を本人の希望によって定年後引き続き雇用する制度で、次のようなものがあります。

◆再雇用制度:定年でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ制度
◆勤務延長制度:定年で退職とせず、引き続き雇用する制度

「勤務延長」とは国公法第81条の3の定めに従えば「定年退職予定者の職務の特殊性又は職務遂行上の特別の事情からみて、当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときに、定年による退職の特例として、当該職員を定年退職日以降も当該日に従事している当該職務に従事させるため引き続いて勤務させる制度」とされており、再雇用制度と違って継続雇用後の労働条件が定年退職前とほぼ相違ないという違いがあります。

いずれも「定年到達」には相違なく、「退職➞再契約」という手続きを踏むのが「再雇用制度」で、「退職」という手続きを踏まないのが「勤務延長制度」ということになります。

それでは「2025年」に何が起こるのかという点についてご説明いたします。

実は2013年の「65歳までの雇用確保措置の義務化」において「継続雇用制度」を導入した場合、同年3月31日までに労使協定を締結すればその対象者を協定で定めた以下のような基準に合致する者に限定することができました。

・直近の健康診断の結果、業務遂行に支障がないと認められること。
・過去○年間の出勤率が○%以上であること。

そしてこの基準を適用できる対象労働者の年齢は老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢に併せて引き上げることが求められ、これが完全撤廃されるのが「2025年4月1日」ということになります。

労使協定が撤廃されたとしても定年年齢を60歳に据え置いたまま65歳までの希望者全員への継続雇用制度適用で法の義務を満たす訳ですから、「2025年・65歳定年義務化」という表記は完全に間違いという事になります。

先に述べましたように「定年制」は「いかなる理由があってもその年齢を下回るような定年年齢を設けることは絶対に出来ない制度」だからです。

尚、国家公務員法等の一部を改正する法律が2021年6月11日に施行され、2023年度から、国家公務員の定年60歳(原則)が2年に1歳ずつ段階的に引き上げられ、2031年度に65歳(原則)となります(2023年4月1日施行)

よって民間の65歳定年義務化はそれよりさらに先のことになるでしょう。
ご参考ください。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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