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NASDAQと東証グロース

スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズ

新興市場向け市場

CFOとして仕事をしていた頃、NASDAQへの上場手続きについての話をうかがう機会がありました。日本とはずいぶん違っていて興味深かったので、日本の新興企業向け市場である東証グロースと比べながら紹介したいと思います。

NASDAQ

NASDAQ(ナスダック)とは「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」の頭文字を取った略称です。アメリカの主要な株式市場の一つを指し、主にハイテク企業やIT関連企業などの新興企業向けの株式市場になります。代表的な銘柄には、アップル、アマゾン、アルファベット、メタプラットフォームズ、マイクロソフト、テスラ、NVIDIAなどが挙げられ、現在では日本企業も数社NASDAQに上場しています。

NASDAQへの道
NASDAQへの上場ですが、当然のように、企業の財務状態、株式の流通量、株主数、株価、売上高などの上場基準はあります。特徴的なのは以下。
・NASDAQは上場に向けて日本の東証のように外部的審査を行う組織がありません。手続き的には、SEC(米国証券取引委員会; U.S. Securities and Exchange Commission)に目論見書を提出し、コメントに対応するやり取りが中心になります。極論すれば、レギュレーションを守り、ルール通りに書類を提出すればどんな会社でも上場可能です。
・年度毎の監査が不要なので、最短6ヶ月、通常9ヶ月程度で上場が可能です。これは、内部統制要件が日本のように厳格でなく、一定の基準に満たない企業は内部統制監査が5年間免除されるためと聞きました。これは急成長を志向するスタートアップにとっては朗報です。なぜなら内部統制を強化するとどうしても事業のスピードが遅くなるからです。この点は東証グロースが見習ってもよいのではないかと思います。
・上場にかかる費用が高い(特に監査法人や弁護士にかかる費用が半端なく高い)
・上場維持にかかるエネルギーが日本より必要。日本では一度上場してしまえばなかなか上場廃止となりませんが、NASDAQは厳格な運用のため、純資産や株価等の基準を下回った場合上場廃止の可能性大です。
そしてもちろん英語でのコミュニケーションが求められます。

図1.東証グロースとNASDAQ

お国柄

上場に向けたプロセスを比べると日米のお国柄の違いが見えて面白いです。
上記から分かるように、日本はとにかくゲートの通過時に厳格さを求め儀式的であるのに対し、米国は通ってからの実践を求めより実利的です。
そしてこれは株式市場だけの話ではありません。例えば、大学も日本は入試を通るのが大変ですが入ってしまえば楽ちんなのに対し、米国では入ってからも熾烈な学習を求められます。
それぞれ良い面悪い面はありますが、個人的には、今のように変化の激しい時代には米国流のやり方の方が新陳代謝も進んで活性化するのでよいのではないかと思っています。

注)私が聞いたのは数年前のためレギュレーションが変わっている可能性もあるので留意願います。

追伸)スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズでは備忘の意味も込めて書き綴っています。各種質問やこんな話題を取り上げてほしい等のリクエストがありましたらご連絡いただければ幸いです。


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