抗がん剤の副作用死をどう考える?【専門薬剤師のぶっちゃけ】
抗がん剤に対する認識は正直人によってさまざまだと思います。
抗がん剤のおかげで延命あるいは完治できた場合には助かった!という人もいれば、抗がん剤による副作用で悲しい想いをされた方もいるでしょう。
今回は抗がん剤の副作用死について考える機会がありましたので、医療関係者でなくても分かるように、正直な気持ちを専門薬剤師という立場からお伝えできたらと思います。
抗がん剤とは
一般的に、がんに対して使用される薬のことを抗がん剤と言います。
抗がん剤以外の薬剤と比べると、治療効果を示す薬の量と副作用が現れる薬の量が近いことが特徴的です。
もっと嚙み砕くと、抗がん剤の効果をきちんと出すのであれば副作用はほぼ発現するという事です。
医療の進歩により今では、抗がん剤には脱毛や吐き気などが良く知られる「殺細胞性抗がん薬」だけでなく、遺伝子情報を考慮した「分子標的薬」や免疫を活性化させて抗がん剤として効果を示す「免疫チェックポイント阻害薬」が使用されるようになりました。
抗がん剤副作用は多岐にわたる
抗がん剤の種類が変わると、起こりうる副作用が大きく異なります。
殺細胞性抗がん薬:免疫力の低下や下痢、吐き気など
分子標的薬:高血圧や皮疹など
免疫チェックポイント阻害薬:自分の免疫ががん細胞以外を攻撃してしまう(自己免疫性の副作用)
副作用による死亡として注意が必要なのは、全てではありませんが、「殺細胞性抗がん薬」「免疫チェックポイント阻害薬」です。
抗がん剤の副作用は前もって分からないの?
抗がん剤を使用する上で、副作用の発現にはかなり気になる方も多いと思います。
でも実は抗がん剤の副作用の発現時期というのは予想を付けることが出来ます。
上記の図は殺細胞性抗がん薬の副作用発現時期を表わすものですが、、抗がん剤の投与より1週間以内に吐き気やだるさ、排便状況が変化しやすく、1~2週目には口内炎が出やすくなります。
免疫に関与する抗がん剤では、発現の予測をすることは困難ですが、初回投与から3か月の間は副作用の発現率が高いです。
抗がん剤による副作用死について
抗がん剤の使用で死亡してしまうのが怖い。と感じる人は少なくないと思います。
副作用死の現実
しかし、抗がん剤による死亡というのは実は少ないです。
なぜなら、副作用が強く出る場合には色々な対策がされるからです。
抗がん剤の量を減らす
抗がん剤を数週間お休みする
副作用対策の薬が処方される
これらの対策が行われるため基本的には死亡など非常に危険な状態にはなりにくいのです。
しかし、
アレルギー症状
間質性肺炎
発熱性好中球減少症
感染性腸炎
腸管穿孔
自己免疫性の有害事象
などの状態は早期に対応しなければ、重篤な結果を招きかねません。早期に治療を施す必要があるためです。
38℃を超える発熱
発熱を伴う下痢や激しい腹痛
発熱を伴う空咳や息苦しさ
1~2日で急激に変化するだるさ
上記の内容が抗がん剤治療中に発現する場合には、早期発見のためにも医療機関への連絡が必要です。
抗がん剤中の死亡とは?
抗がん剤による死亡は少ないと言いましたが、それではがん患者さんの死亡とはどんな内容が多いと思いますか?
これは経験に基づく話になってしまいますが、
抗がん剤治療でも病気を止められなくなる
肺炎や胆管炎などの別の病気(状態)の併発
による死亡が多い印象です。
抗がん剤治療が開始されると定期的に画像検査をしてがん細胞が増えているか、変わらないか、減っているか評価を行います。
がん細胞が増えている場合には、今の抗がん剤は効いていないと判断され次の治療法に移行します。
しかし、体力的な問題、がんの進行による抗がん剤投与の危険性、次の効き目のでる治療法がなくなる等の場合は抗がん剤の投与は辞め、緩和(抗がん剤の投与は行わないが症状を軽減させる方法)方向に進むことになります。
医療者に我慢せず気持ちを伝えよう
今回の記事でお伝えしたい事としては、単に「抗がん剤の直接のせいで亡くなるケースは多くない」という事ではありません。
診断を受けた時点でショックやこの先の不安を感じている方はほぼ全員でしょう。その気持ちのまま治療に移行してしまうと、精神的な負担だけでなく、副作用を我慢しひどい状況になるまで耐えようとする方が出るのも事実です。
しっかりとした対策を行う事で、リスクをグンと減らすことが出来ますので、不安な気持ちや疑問は我慢せずに打ち明けるようにしましょう。
打ち明けることで副作用の早期発見、早期対応が出来ることも事実であり、そういう方の方が副作用がコントロールできているケースも多いのです。
少しでも不安や辛い症状が軽減されたら嬉しいです。
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