ちゃんと説明できる?術前・術後補助化学療法と進行再発の化学療法の違い
「化学療法」と一言に言っても、その内容は多岐にわたります。
今回は、「術前・術後・進行再発」という目的別で行われる化学療法について解説していきます。
この記事を読むことで、下記の3点が学べます。
医師への情報提供の幅が増える
患者へ適切なアドバイスができる
薬剤師が患者の状況を把握しやすくなる
化学療法の目的把握の重要性
化学療法はそれぞれのがん種の診療ガイドラインを元に、適切なタイミングで実施されます。
今回は「手術の前後(術前・術後補助)」「手術適応にならない(進行再発)」場合の化学療法について解説していきます。
それぞれの目的(ゴール)を把握することで、化学療法や対処療法への対応は変わってくるため非常に重要な内容です。
短距離走で記録を出したいという目的(ゴール)があるのに、長距離走選手が行うような持久力トレーニングをしても目的が達成されないのと同じ事です。
化学療法の種類と目的
「術前補助化学療法」「術後補助化学療法」「進行再発に対する化学療法」の目的とデメリットについて解説していきます。
術前補助化学療法
言葉の通り、手術の前に実施する化学療法のことを指します。
手術前に化学療法を実施することで腫瘍を小さくすることが出来、手術による身体的負荷を軽減する目的で実施します。
デメリットとして、化学療法が効果を示さなかった場合、手術の適切な時期を失う可能性があることです。
代表的なものには、乳がんのAC療法(アドリアシン+シクロホスファミド)4コース*というものがあります。(*術後でも使用されます。)
術後補助化学療法
言葉の通り、手術の後に実施する化学療法のことを指します。
リンパ節転移していたりと、画像検査でも見つけられない微小がん細胞による再発リスクが高い場合には、再発予防を目的として術後補助化学療法が実施されます。
デメリットとしては、一定期間のみの投与にはなりますが、治療強度を高い状態をキープして治療を完遂したいため、その期間の化学療法の副作用はつらいものとなるケースが多いです。
代表的なものなら、StageⅢ大腸がん術後のCAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)6か月間、StageⅡ胃がん術後のTS-1単剤を1年間投与などでしょう。
Stageや再発リスクで患者状態を考慮しレジメンは選択されるので詳しくは、各診療ガイドラインを参照してください。
進行再発に対する化学療法
原則、手術適応にならない進行あるいは再発した場合に、延命を目的として化学療法が実施されます。
いかに長く続けられるかが予後に影響する為、患者のQOLも考慮しながら抗がん剤の調節も行っていきます。
デメリットとしては、延命を望み、副作用に耐えることができ、効果を得られている限りはひたすら投与を継続するという点、金銭的な問題、レジメンによっては後遺症が残りやすい。などが挙げられます。
延命目的の化学療法の代表的な例では膵がんのFOLFIRINOXや胃がんのSOX+Nivolumab、大腸がんのmFOLFOX6+Pmabなどが挙げられます。
進行再発のレジメンでは、ステージや患者の状態だけでなく、遺伝子情報なども考慮して治療選択がなされます。
各化学療法の目的(ゴール)とデメリットを把握できたと思うので、次はそれぞれの化学療法を行う上で薬剤師が必ず知ってほしい重要ポイントを再度お伝えしていきます。
術前・術後と進行再発での重要なポイント
術前・術後と進行再発の化学療法では、大きく異なる点が2つあります。
投与期間
投与量設定の考え方
それでは、術前・術後と進行再発でどのように異なるのでしょうか?
<術前・術後>
投与期間:一定の期間で終了するよう設定されている。
投与量:可能な限り治療強度を保たせる(可能なら100%-Doseで維持)
に対して、進行再発では次のような考え方になっています。
<進行再発>
投与期間:治療継続できる状況・状態ならひたすら継続投与
投与量:患者の状態やQOL、副作用状況によって随時調節される
このポイントをきちんと把握することで、化学療法に対する患者への対応が変わってきます。
患者の状況に応じて、適切に対応できるようにしていきましょう。
患者のゴールを把握してサポートしていこう
今患者が受けている化学療法が、「術前補助化学療法」「術後補助化学療法」「進行再発への化学療法」なのかを把握することは、現段階での患者の目的(ゴール)を把握すること同じです。
目的を共有することで、話も生まれやすくなりますし、患者の気持ちをさらに深く感じることもできるでしょう。
化学療法の目的が何なのか、そこを薬剤師側が把握することは、調剤鑑査や服薬指導、医師への情報提供をする上でも非常に重要です。
患者と同じ目的(ゴール)を目指してサポートしていきましょう!