Jamping f"21"titf no.001
9時21分。
彼女を待つ柊は、ぬるくなったココアを見やりため息をついた。
理想的な社会人生活とは裏腹に、互いの時間を重ね合せる大変さに苛立ちを感じる。
どんなにテクノロジーが発展しても、大切な人との時間がこれほど引き裂かれるなんて、僕たちが進んでいる方向は正しいのだろうかと、文学部のようなことをふと考えることがある。
物質的にも恵まれ、やりたいと言えば周りは気持ちよく後押しをしてくれて、めでたく希望の会社に就職できた。
彼女を待つ時間くらいにストレスを感じるなんて、滑稽なんだと思う。
だけど・・・、
グローバル企業で働く柊の彼女は、営業として今日も足を使い情報をかき集めている。鞄には、お弁当・水筒・スマートフォン、それから会社支給のタブレット、ブラックベリーという古風なアイデンティティを持った通話デバイス。それから、ハンカチとティッシュと、メイクポーチ。
僕が好ましいと思うのは、「お弁当」と「ハンカチ」くらいなものだ。
それ以外は、僕らの時間を重ねるには不要なものにしか映らない。
冷めたココアのカップを傾けながら、腕時計を見やる。
9時43分。
隣の席で女子会を開く彼女たちは、デザートを注文する。
メニューをめくりながら、お店の入り口へ目をやる。
小雨が舞うようだ。スプリングコートを被ったり、コンビニのビニール傘を片手に入店する姿が目に映る。
柊の彼女の姿は、まだだ。
ありきたりな言葉であるけれど、”恋しいなんてもんじゃない。”
柊のもどかしい気持ちを書き記していこうと思います。
「Jamping f"21"titf 」をどうぞ宜しくお願いいたします🎵