& episode 003
今日は、趣味のランニングのオフ会で豊洲でバーベキュー。
くにちゃんは、ヨーロッパに出張中で1週間程不在だ。
ラン友の佳久(よしひさ)に、近況を聞かれる。
「どうよ、彼女とは?」
「順調だよ」
「相変わらず、放置プレイか(笑)」
「信頼関係と言ってくれ(笑)」
俺だったら耐えられないなと、佳久はバンズをほおばりながら言う。
「コーラ、飲むかい?」
どうも、と佳久は受け取る。
佳久は大学時代の付き合いで、社会人になってから少し距離が遠くなっていたものの、最近趣味を通じてよく会う仲になっている。
それにしても、と佳久は続けこう言った。
「完璧すぎる彼女を持つのは大変そうだな」
そんなことはないけれどという言葉は、僕は肉汁があふれるビーフとチーズを飲み込みながら、黙って佳久の言葉を聞いた。
「俺は、自分よりできない女の子の方が可愛いと感じるよ」
お前、器大きいんだな。と、佳久はケチャップを付け足しながら話した。
「器か」
分からなくもない。男として生きるなら、愛しい人に支えられたいと思うのは多くの男性の美学。女性もまた、キャリア形成が可能になった昨今でも、そう考える人が多い。色々なことが可能になった今日だけど、やっぱりそれは人間として自然な欲だし流れなんだと思う。
「出会いと相性なんじゃないかな?」
多くの人たちの価値観の中で、僕とくにちゃんの関係はまだまだ未開の地であることは意識している。
彼女は群を抜いて優秀である。人に会うたびに、比べられからかわれることはよくある。口を揃えて「お前もがんばれ!」と熱いエールを送られる。
その度に、僕は「感謝する気持ち」が生まれる。
彼女のそばにいることで、僕はこれまでにないくらい他人から本気で熱い応援を受け取ることが多くなった。
出来る女性を彼女にするメリットはとても大きいと感じている。
「彼女と一緒にいると分かるよ。支えてもいいかなと思う気持ちになってしまうさ」
僕はくにちゃんの柔らかい髪の毛を思い出しながら、ハンバーガーをコーラで流し込んだ。大麦で作ったバンズの香ばしさを確認しながら。