しなすいすいすい
朝早く起きたので近所を散歩しようとカメラを手に炎天下の外へ出ました。そしてふと思いつきでしながわ水族館へ行くことにしました。
この辺りに越して来てから4年ちょい。自宅から自転車圏内にあるのに、近いからこそ「いつでも行けるから今日はいいや」が続いて一度も訪れていないのです。
というわけで、近くの公園でレンタサイクルを借りて、すいすいすい。
ちょうど開園時間くらいに水族館に着きました。平日ですが夏休みファミリーたちがたくさんいて賑やかです。
いざ入館!と思ったのですが当日券の販売は現金のみ。ふらっと散歩のつもりで出て来てしまったので所持金は500円くらいしかありません。
せっかく炎天下の中ダラダラ汗を流してここまで来たのに……。絶望しかけましたが幸いオンラインチケットがカードで購入できるとの事で、日陰に隠れてスマホをぽちぽち。無事入館出来ました。
私はフォクトレンダーのNOKTON 35mm F1.2 というレンズを愛用しています。一番の理由は軽いから。MFレンズなのでモーターが無いのです。それと開放寄りの描写がノスタルジックだし、手でピントをクルクルするのも楽しい。愛機のX-PRO3には、ほぼこのレンズがつけっぱなしになっています。
ですが今回はこのレンズのお尻をペシペシしたい気分になりました。お魚たちが元気すぎてピントが合わない……泣。おまけに館内が暗いからシャッタースピードも稼げないし、開放寄りのうっすいピントで手元のピントリングをギュンギュン回しながらすいすい泳ぐ魚たちを必死で追いかける惨めさよ。
お魚たちは「ほれ、撮ってみい?」とばかりに水槽をいっぱいに使って優雅に泳いでいます。
私がお魚たちと格闘していると後ろから夏休みキッズたちが押し寄せてきました。五家族くらいが一緒になったその元気の塊はさながら一小隊のようで、私はそれに飲まれまいと慌てて先へ進みます。
後から気づいたのですがこの辺りにはペンギンプールがあったそうです。しかし、パワフルな子供たちに気圧されて先へ急いだ私はすっかり見逃してしまったのでした。(ちなみにこの先にあるアザラシ館も見逃しました……泣)
この辺であきらめがついて、写真も変に粘るのはやめそこそこに、すいすい先へ進むことにしました。
しながわ水族館は京急線の大森海岸駅が最寄りになります。品川の水族館というと品川駅最寄りのマクセルアクアパーク品川の方が有名かもしれません。大きいし派手だし迫力があるし。
ですが私はこちらも好きです。どちらかというと、こちらの方が好きです。こじんまりしていますが、以前訪れたことがあるようなノスタルジーを肌で感じました。
水族館って一人でぼーっと考え事をしたい時にぴったりな場所だと思います。目の前の仲の良さそうな夫婦はじっくりと説明書きに目を通して二人で何やら話していますが、私はあまり魚の生態や名前には興味がないタイプです。
その色や形やすいすい泳ぐ様を目では見ていても、頭の中ではつい別のことを考えてしまいます。
視線が水槽の中を通り抜けるとその先にある深層心理のようなものが浮かび上がって来る気がします。もう少しじっくり眺めていたいですが、後ろから賑やかな声が近づいて来ます。すいすい行きましょう。
外に出ると暗がりに慣れた目が真夏の日差しに耐えられず視界が白く飛びます。まるで異世界から現実に戻って来たようです。映画館から出る時にも感じるこの感覚が私は好きです。
後ろの自動ドアが開いてたくさんの笑い声と子供達が駆け出して来ます。滞在時間はわずか1時間ほどでしたが十分に満喫することが出来ました。(ペンギンとアザラシ館忘れてる……!)
ノスタルジックな館内と元気な子供たちの声、そして水槽の中で自由に泳ぐ魚たち。それらは混じり合い私の中に深く沈んだ幼い記憶を刺激しました。昔の夢を見たいたような不思議な一時間。
みなさんもこの夏はしながわ水族館を訪れて、今と懐かしさが入り混じる時間の汽水水槽をすいすい泳いでみてはいかがでしょうか。