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『迷宮遡行』
例の投稿企画から、今回は #読書感想文 のお題をいただきます。
私の積読棚という記事で、積読本がめでたくも150冊を超えたと書きましたが、あれから数日…現在の積読棚は148冊になってしまいました。
(あれ?積読って、減った方がいいんでしたっけ?)
さて、『迷宮遡行』貫井徳郎・著です。
前回の読書感想文も、貫井さんでしたね。
貫井さんしか読んでいないわけではないのですが、何でしょう、感想を書きやすいのかな。
まず初めにお断りしておきます。
この記事は、この『迷宮遡行』を未読で、今後読むかもしれない方はお読みにならないことをお勧めします。
完全にネタバレのオンパレードになると思います。
何だったら、読まなくても済むくらい内容に触れてしまいそうです。
主人公・迫水は現在、リストラにより職をなくし、さらには女房に逃げられる、というダブルの不幸に見舞われた状態です。
迫水には不釣り合いなくらいの美しい女房なのですが、二人はとても仲睦まじく暮らしていました。ところがある日突然、置手紙を残して女房(=絢子)がいなくなってしまいます。
これは、その消えた女房を追う迫水の物語です。
迫水の一人称で物語が進んでいくのですが、軽妙な語り口とこんな不幸のさなかでも道化役にされてしまうような性格が、物語をとてもライトな印象にしています。
迫水は、2年共に暮らした女房の軌跡を追うのですが、その工程で、実はほとんど絢子のことを知らなかった自分に気が付きます。
絢子のことを大して知らない自分にすっかり自信をなくしたせいか、それとも元々の性格なのか、すぐに人を信用してしまうし、聞いたことを疑いもせずに丸々信じるし、ぺらぺらと情報をしゃべってしまうし、あまり深く考えず行動(時には家宅侵入まで!)してしまうし…。
そういうキャラクターを生かした、のほほんストーリーかと思いきや、話がどんどん大げさになり(関東一の暴力団と関西一の暴力団・さらには台湾マフィアの登場)、もしかしてこれはイヤミスになってしまうのでは?という気配を感じ取らずにいられません。
追跡者としては三流の迫水の代わりに、私の警戒心が強くなってしまいました。
それからは、迫水が接触する人物すべてに疑いの目を向けて、
「いい人に見えるけど怪しい」
「美人ってだけで怪しい」
と、気の抜けない読書になりました。
物語の冒頭で、女房に逃げられた迫水を、我が事のように心配し嘆く親友の後東ですら、私にとっては疑いの対象になっていました。
さらには、迫水の実兄含め警察自体も疑っているので、実は後東は死んでいない…と今でも思っています。
しかし仮に警察が、この物語で一番悲しくも大きな出来事と言っても過言ではない"後東の死"を、暴力団摘発のために仕込んだ(つまり後東は生きている)としても、迫水はもう貴島を殺してしまったし。
救いようがないじゃないですか。
そしてクライマックス。この物語の主題。女房探し。
迫水はもう一度絢子に会えるのですが、これ以上ない悲しい結末を迎えます。
こんな悲劇だと思わなかった。
前半と後半のギャップよ…。
でも、これが読書の醍醐味なのでしょうね。
読んでみないとどんな物語かわからない。
だからこそ、未読の方はこの記事を読んじゃダメです。
あ、もう遅い?