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『荒仏師 運慶』

『荒仏師 運慶』梓澤要・著を読みました。
もともと歴史小説や時代小説はほとんど読まず馴染みがないせいか、読了に20日間くらいかかってしまったようです。

好きな分野ではないこの本…なぜ手に取ったのかといえば、仏像が好きだからです。

仏像というものは、実に奥が深いものでして、その種類も多岐にわたります。尊格というランク付けがあったり、印相という手指の形でその仏様が何を訴えたいのかわかるようになっていたり、また、その衣服や持物でも区別されます。

はるか昔に造られた仏像たち…。誰が、どんな願いを込めて造ったのか。
この本は、仏像の裏にある、様々な人々の様々な思いを伝えてくれます。

主人公は仏師・運慶。仏像に興味がない方でも、一度は耳にしたことのある名前ではないでしょうか。仏師の息子として生まれ、生涯一仏師として数々の素晴らしい仏像を造り上げた彼の一生とはどんなものだったのでしょう。

実際に現存する仏像が続々出てきます。慶派とよばれる運慶の父・康慶の一門(もちろん運慶も含まれます)が造ったもの、運慶自身が造ったもの、運慶が棟梁となって造ったもの、と様々ですが、どれもこれもその裏に合ったストーリーを読むうちに、本物を見たくなってしまいます。

生き生きと描かれる登場人物たちと、説得力のある話の流れに、時々忘れてしまうのですがこれってフィクションなんですよね。
史実をもとに、作者の梓澤さんが作り上げた物語なんですよ。
梓澤さんご自身がその場で見ていたのでは?と思ってしまうような臨場感です。想像力と創造力の素晴らしさに脱帽です。

私は、一通り物語を楽しんだ後、手元にある仏像の本や自作の仏像アルバムと、本文に出てくる仏像を照らし合わせながら拾い読みしました。


手作りの仏像アルバム
…マニアですね

10歳の運慶が衝撃を受けた長岳寺の阿弥陀三尊。

北条時政直々に依頼された願成就院の仏像たち…。

実際に拝観した時も衝撃を受けた重源上人の、まるで生きているかのような坐像。

運慶の子・孫たちが作った仏像の数々。

 この『荒仏師 運慶』を読んだ今は、どれを見ても、以前、実物や写真を見た時に感じた気持ちよりも、より深く、そしてリアルに私の心に響くものがあったように思います。

仏像に興味がおありの方は是非読んでみてください。

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