理由が分かんない
■2022年(両親80歳)
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留守電
11:07 押し問答の続きが録音されている。
父 なんでそんな呼び出してるの? なにか用があるん? ねえ。
母 私たちだってたまには尚子の顔も見たいしね、尚子の都合が良かったらたかちゃんも送ってもらえるからね、ちょうどいいと思ったのよ。
父 こんな夜遅くする必要ないんじゃないの?
母 夜遅くないですよ、今は。お天気がいいですよ、昼間で。いい天気ですよ。
父 じゃあ何をやってるの? 何のために呼び出してるの?
母 私たちだって尚子に会いたいですよ。都合が悪かったらいいって言ってあるから大丈夫ですよ。
父 何の用で呼び出してるん?
母 顔を見たいからね。たまには会って話がしたいからね。
父 こんな夜中に?
母 夜中じゃないよ、まだ朝だよ、ここ。なに言ってるの。まだ朝ですよ。お天気がいいですよ。
父 理由が分かんない。
母 なんにもないのかな、食べるものが。
父 なんの用があって尚子を呼び出してるの? ねえ? 何の用があるんだ? 聞いてんだよ。
母 久しぶりだからね、たまには会いたいからね、来てもらってね、送ってもらおうと思ったのよ。
なんで呼び出しているのか、父がどうにも理解できず苦しんでいる。
母がいくら説明しても理解できない。
それで本人は苛立ち、訳が分からなくなり、目の前にいる母を責めるという。
さぞ苦しかろう。
こうした問答を繰り返すうちに、父が一人でヒートアップして母に詰め寄る。
埒が明かず、父が母に手を挙げるという構図は考えられなくもない。
父が母に暴力をふるうまでの背景が分かるような気がする。