みかん帽
■2023年(両親81歳)
11/23
母、エントランスで転倒 続き(8)
12:15 お会計のため一旦受付へ。
旦那さんが娘たちを連れて来てくれていた。
12:30 別荘までのタクシーを呼ぶ。
看護師さんが母の洋服を着せてくれ、車いすに母を乗せて待合スペースまで連れて来てくれる。
娘たちは透かさず母の頭に注目し、「何これ―!」と騒ぐ。
「ばぁちゃん、みかん帽! みかん帽!」と、楽しそうに母の車いすの周りをぐるぐると走り回る。
周囲の人たちは苦笑い。
母は相変わらずボーっとしていて無表情ながらも、娘たちに手を伸ばして触れようとする。
せっかくなので皆で記念撮影。
12:45 タクシー到着。別荘に向かう。
待合室から外に出てタクシーの横まで、車いすに座ったまま母に移動してもらうのが一番スムーズだと思っていたのだが、やはりそううまくはいかず。
母はむくっと立ち上がり、じっと座っててくれない。
そして外に出た途端、外気の冷たさに怯み、足がすくんでしまう。
看護師さん、旦那さんも一緒になって、皆で何とかタクシーまで辿り着いてもらえるよう四苦八苦。
唯一、タクシーの運転手さんだけは微動だにせず、ただただ運転席で待機するのみ。
何とか母を乗せた後、別荘までの道案内をするも、運転手さんからは一切の返答がない。
聞こえているんだか聞こえていないんだかも分からず。
運転手さんにも当たりハズレがある。
車中で、横にいる母の頭をまじまじと見る。
頭にかぶせられたネットの先端はキュッと固結びして絞られている。
確かにみかんのネットみたい。
ネットの両耳にかかるところには穴があいており、その穴をビヨンと伸ばして両耳にひっかけて固定している。
こんな姿になってしまった母。
母の無表情が、風貌に余計異様さを増している。