泥棒だったの?
■2022年(両親80歳)
6/7
三女と訪問
実家で整理した父の日記、アルバムを居室へ持ち込む。
6/9
留守電
1:05 深夜!
「尚ちゃん、あのね、お母さんだけど、家に泥棒が入ってね。いま家にいるの。お巡りさん呼んで。110番に電話してくれない? お願いします。」
(悲壮感漂うも、たいへんな事態になっているのを何とか冷静に話そうとしている声色)
1:11
「尚ちゃん、家にね、泥棒が入ってきてるの。警察呼んでください。大急ぎでお願いします。」
(父がトイレにでも行って戻ってきたところかもしれない。ドアを開けるような音がする。)
父 (遠くから聞こえる声)なにやってるの? え? なに? ちょっと? なにやってるん?
母 たかちゃんなの、泥棒は? 泥棒だったの? たかちゃん。
父 何言ってんの?
母 うちに泥棒に入ったの? いまどこに寝てた?
父 ここですよ。
母 隣に誰か寝てなかった?
父 寝てないよ。
母 ずっと寝てた?
父 うん、さっきまで普通に寝てたっていうか…
母 泥棒が入ったんだよ。
父 どこに?
母 そこに。うちのなかに。で、たかちゃんの横で寝てたと思うんだけど。
父 いませんよ、そんな人。
母 うん? なに?
父 そんな人はいませんでした。
母 誰もいなかった?
父 うん。どうしたの? 淳子。その泥棒がいたん?
母 この家のなかに入ってきて、たかちゃんの横で寝てた。
父 いつ? いつの話?
母 今よ、ちょっと前、ちょっと前。たかちゃん、見なかった? その泥棒。
父 見ない。
母 あー、どっか行っちゃったんだ、じゃ。逃げちゃったんだ。
父 何してた? その泥棒は。
母 なんか取られたものあるかな。お金を取るよね、取るとしたらね。でも、うちあんまりお金ないもんね。
父 お金なんか全然ないんじゃない?
母 お金なんか全然ないよね。
父 うん。
母、最初は父を泥棒と思ったのだろう。でも父に違うと言われていろいろ聞かれているうちに、泥棒が入って逃げて行ったという認識にすり替わっている。