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連載)超ハイタッチなエンプラCSチームを成立させるエコノミクス
こんにちは、テックタッチのVP of Customer Successをしている垣畑です!
こちらの記事でCSAM(Customer Success Account Manager)と題して当社CSチームの役割についてご紹介させて頂きましたが、具体的なところも最近よく質問いただくことが多いため、引き続き「エンプラCSの組織・育成・事業貢献の事例集」として当社のCSチームについてご紹介させて頂きたいと思います!
今回は「そもそも何故そんなハイタッチにできるのか」(要するに生産性は維持できるのか、コスト割れしないのか)というポイントに関しての当チームの考え方をご紹介します。
第一弾:「エンプラCSにおける、セールスチームとの連携の仕組み」
第三弾:「エンプラCSにおけるヘルススコアの事例」(リリース後にリンクさせて頂きます)
AIによる顧客動向の分析とアクションの自動化に取り組まれる今の時代とは逆の、エンプラに特化したチームのあり方の例になりますが、ひとつの事例として、少しでも参考になれば幸いです!
おさらい)CSチームの生産性をどう評価するか
事業が拡大するSaaS組織は、CSに限らず、事業内容に応じ人手のかかる各部門の生産性改善の課題に取り組まねばならないと理解しています。
これはシンプルな概念として人件費と売上の比率で見られるのが一般的です
CSの場合、日本では一般的にCSMの人数とARRを比較し、「最初はARR /CSM人数で5,000万円は目指そう」、「これが1億円を超えたら優秀といえる」、「いや、もはや2億を目指すべきでは」等のベンチマークがあると認識しています
CSM 1人あたりのARRで見ると一人あたりの給与水準の影響が加味されないせいか、アメリカですとGainsight社が、CSチームの(人数ではなく)人件費とARRを比較し、売上10-100Mドルの企業群でコストがARRの5%なら上位36パーセンタイル、10%なら上位64パーセンタイルというデータを出しています。これは8年前の記事ですが、直近では8%程度が中央値(50パーセンタイル)だというお話を聞いたことがあり、8年前と変わらない水準であると考えています。
(但し様々な特性のSaaSの平均のはずなので、あくまで参考値となります)
![](https://assets.st-note.com/img/1719714223412-XfOHIEV1IJ.png)
(Gainsight 2016)
仮にCSM1人の人件費を社会保険料も含め700万円とした場合、コスト8%に抑えるためには、700 / 8% = ARR 8,750万円を1人でカバーする計算になります。実際にはCSチームにはCS Ops、MGRなど純粋なCSM以外のメンバーも含まれますので、こうしたメンバーの割合がCSMの人件費の30%相当とすると、8,750 x 1.3=11,375万円で、「1人でARR 1億円をカバーしよう」という日本のベンチマークより少し高めの数値となるのかなと理解しています
(但し、これでやっと8年前のアメリカの中央値くらいということになります)
当チームの答え方)CSのカバーしている役割全体で生産性を考える
これらの指標は、むやみに数字だけ改善しようとして人数を絞ると、支援の質が低下しChurnという形で遅効性で効いてくるため手遅れになりやすく注意が必要です。
特にエンプラCSでは一件一件の単価、ネームバリュー的な重みが比較的重いうえ、サクセスの可否がエクスパンションにも大きく効いてくる以上、慎重に取り扱いたい要素になります。
また当社の場合(そして恐らく多くのエンプラCSチームの場合も)、ゴール設定や体制などの計画段階で、案件がスムーズに進むかテコ入れと呼ぶに近い支援が必要かの大半が決まることが多くなってます。
自動化や省力化などいわゆるロータッチ化の打ち手は常に重要な目標ではあるものの、これが最優先と言えないのが現実でした
(そのため別記事の通り、セールス段階から深く支援に入り、オンボからアダプションまで一気通貫で支援するスタイルを確立してきました)
そこで当チームでは、自分たちの生産性が妥当なのかを定量的に評価するにあたり、役割全体を改めて俯瞰して、いわゆるプロフェッショナルサービス(PS)と呼べる支援と、カスタマーサクセス(CSM)の支援の両方をカバーしていることに着目して考えるようにしています。PSとサブスクリプションの両方の収益構造で生産性を見ていくということです
(以下、当社CSチームの役割の範囲をご参照ください)
![](https://assets.st-note.com/img/1723693031734-MMNudhSRiF.png?width=1200)
CS活動そのものとシナジーに応じて分業しています
具体的には、CSチームの人件費をPS向けとCS向けに分け、「PSの利益水準が妥当か」と「CSの生産性が妥当か」の2軸で評価していくということです
![](https://assets.st-note.com/img/1719752840612-ZxqGEekgTC.png?width=1200)
この考え方で評価すると、幸い今年度に入り、CSの生産性指標(CSのコスト/ARR)でも、PSの利益率でもアメリカの水準と照らしても優良といえる水準を達成することができています。
「でもそれって結局、CSのハイタッチ支援にPSの工数が追加でかかるだけだから、実際は生産性の改善にならないのでは?」と思われるかと思います。この点は、あくまでCS活動と検討内容のシナジーが大きく、必要なナレッジ、体制や会議体を一体化させたほうが良い内容のサービスも多いため、生産性は改善します
(例えばオンボ中に解決したい課題の深堀り・特定は通常のCS活動としても行いますが、お客様の会議にも入らせて頂き課題の特定から代行するプロフェッショナルサービスを一緒に提供する場合、CS活動と一体化できる)
また「要するに超ハイタッチなCS活動の一部を有償オプションにしたということ?」という点でいうと、半分くらいはYesということになります(残る半分は純粋に、追加サービスとして立ち上げ)。
持続可能性の観点からも、当社を含めスタートアップのSaaSベンダは過去にない価値を届ける役割であるからこそ、適正な料金を頂くことで自社内に精鋭チームを作る原資とし、蓄積したナレッジをハンズオンで還元するサイクルを作るべきと考えています(なお、最近のコンサル費用の高騰等もあり、当社のPSはエンプラ企業のお客様にとっては提供価値に比べ廉価と評価頂けています)。
こうしてPSもCSもなく質の高いサービスを持続的に提供することで、幅広いお客様のサクセスを担保し日本のDXを下支えるのだ、という気持ちで積極的にハイタッチ支援を推し進めています。
補足)
なお、売上に占めるPSの割合が大きくなりすぎる状況は投資家からは評価されにくいため、一般的に言われる10-20%のラインを超えてくる場合はバランスを取る必要が生じると理解しています。こちらももちろん注視していきます(が、本業の調子が良いため、暫くはその恐れは無さそうな状況となっています)
これから)取り組むべき課題は人材の再現性と役割分担
ここまで読んで頂いた方はお察しの通りかと存じますが、これらを継続するためには、上流~中流工程を自らリードし下流工程ではうまくリソース管理をして効率的にexecutionをこなす、多能工人材のチームが必要となります。
当社はコンサルティングファーム/SIer経験者の比率が高く、今のPSの内容と親和性が高いため再現性が確保できてきましたが、今後もそれが続くとは限らないため、現在は以下のような課題に取り組んでいます
オンボ~アダプションの一気通貫のアサイン体制を維持しつつも、古参メンバー(既に比較的マルチスキルになっている)の工数をいかに浮かせるか(古参ほどアダプションで忙殺されてしまう、CSあるある現象)
→古参メンバーはアカウント担当となり広くプロマネ的に一気通貫で入ることで、サービスのクオリティコントロールを行う、Newなメンバーが現場を切り盛りするPSは内容次第で得意、不得意が生じる(さすがに全メンバーが全サービスに対応可能にはできない)ため、常に自由にアサインはできなくなる問題をどうクリアするか
→全員が対応できるPSと一部メンバに知見を偏らせるPSを仕分け、後者はマトリックス組織的にCS組織とは別のPSサービスライン別の集団を作る(要するにPSチームとして独立していく布石になります)このようなチームを担える人材にいかに再現性高く、Joinしてもらうか
→能力開発プログラムを整備し、マネジメントを含むキャリアパスの多彩さをアピールしていく
→将来は外資系SaaSのようなパートナー様との連携の重要度も高まってくるため、トライアルを進める
本稿でご紹介した生産性の評価手法では、現時点で非常に良好な指標を維持できていることから、今後もしばらくはこのスタイルで進めてみて、また違う形が見えてきたら共有させて頂けたらと考えています。
エンプラCSに関わる皆様、引き続き頑張りましょう!
当社では引き続き積極採用しています!
もし興味を持って下さった方がおられましたら、お気軽にご連絡ください!