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根をはる時


「今は、嵐の中にいるのだと思おう。
何をしても上手くいかないのは、嵐だからだよ。」


「嵐の中、外へ出て新しいことをしようとしても、上手くいくわけがないし、新しいものを家の中に入れようとしても、雨に濡れて風に煽られてぐしゃぐしゃになってしまう。」


「嵐の大風、大雨を何とか免れる家の中にいるのなら、じっとそこで嵐が過ぎるのを待てばいいんだ。」


「灯りがつくのなら本を読み、
今ある財を少しずつ大切に使い、
知力、体力、財力すべてコツコツ蓄えながら、じっと耐えて待てばいいんだよ。」



「必ず嵐は過ぎ去る。虹がかかり、空も心も晴れ渡り、芽吹き育ち伸びゆく日が必ずやってくるんだ。今は、大事な根をはる時なんだよ。」



あの夏、箕面の山で。
一本の大樹が、蝉の声を借りて、ゆっくりと語りかけていました。
箕面の滝へ向かう人々を、あたたかく見守る声でした。


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