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『規則より思いやりが大事な場所で』(カルロ・ロヴェッリ著、冨永星訳、NHK出版)

読書日: 2024/4/16

 青、赤そして緑。著者執筆の3冊目でした。
 専門の物理学テーマをわかりやすく読ませるシリーズとは異なり、彼の日常の思考や行動を垣間見るような綴りです。新聞雑誌記事などからの志向の派生、そして科学する人間の正義感や倫理観の大切さを感じられるようです。科学と思想・哲学の間…人類学のような捉え方が好ましく思えました。

ヒトという種の場合は、言語のおかげで重層的な抽象世界を作れることができるようになった。そこでは、従来存在しなかった新たな実在(法律、結婚、処罰、契約、王国、国家、財産、権利…)に命が吹き込まれ、それらが現実のなかで一定の地位を占めて私たちの行動を決定すると同時に、共有されたシステムの構成要素としての力を持つようになる。そこから、儀式的な身ぶりによって形作られ定期的に強化される、わたしたちの霊長類としての精神構造に深く根ざした規則が生まれる。要するに儀式は、人類の社会的精神的現実の基礎であって、私たちの暮らしの大部分はそこで展開されているのだ。

「祝祭の日々は終わった」p.158

 科学分野の(自分にとっての)新しい知見、情報に触れることができる喜びもありますが、それよりも思想、哲学的な分野での知らないことに触れることがより有意義に感じました。『事物の本性について』(ルクレティウス)、『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』(スティーヴン・グリーンブラット)など積読本が増えました(喜ばしいことに)。
 決して自分をよく見せるためのあざといものではなく、共感や発見を与えてくれるような本でした。ショートエッセイで合間に読める手軽さもよかったです。


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