英語教育論争史 (講談社選書メチエ)江利川 春雄
読了日:2023/2/11
なぜ英語教育なのか、なぜ期待する成果が上がらないのかを論議して(揉めて)きた明治以降の歴史を著す。著者は英語教員を育成してきた経験が長く、また本テーマ関連書籍を多く上梓してきた権威者だろう。多くの資料調査は歴史の詳細を担保していると思う。ただ腑に落ちないところもある。「英語帝国主義」議論が、アフリカの自治回復時にブリテン連邦議会によりまとめられた方策が日本の教育方針に影響を与えた(または日本が引用した?)ことが、我が国の英語教育における「自己植民地化」としてきたという理解は、誤謬であろう。英国・アフリカ植民地の関係におけるアフリカ諸国の第二外国語選択が、日本・日本での外国語教育がほぼ英語のみであるとの関係は、因果関係にない。政府主導の教育方針政策が問題としても、教員や教育関係者などの現場側で有効策を討てるのだろうか。さらに言えば、「教育の目的」が人間性、教養の育成であっても、ツールとしての外国語であったとしても、そのいずれかまたは両方を効果的な結果に結びつけることができるのだろうか?所感ながら、目的論自体が的を得ていないような気がする。義務教育後に生徒たちがどの分野に興味を持つかは著者の言う通りさまざまで、ゆえに、語学、コミュニケーションに興味を持てる可能性を広げることが根本的な理由でいいと思う。
「論争史」であるから二項対立は明瞭であろうが、著者の傾向も二項対立にまとめるように感じる。
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