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「美しい日本のくせ字」(井原奈津子著、パイインターナショナル)

読了日: 2023/5/8

なるほど人の字とは確かに気になるものだ。そこには性格のようなものが見える気がする。小生は勤め会社員時代に履歴書をよく見ることがあり、「この人は頑固気質だな」とか「外見をより気にするタイプかな」など推測したが、案外外れてはいなかったかと思う。ただし思い込みすぎはよくなく、あくまで手書き文字はその人の表出の一部であり実在の人をより良く見るべきだとは思う。

本書には芸能人、執筆者、デザイナーなど多くの手書き文字が紹介されている。小生は芸能人にあまり(ほとんど)興味はなく、また書くことを生業としている方々では、それなりの個性を含んだ文字であることもそのスタイル形成に寄与している部分であると思う。
それよりも興味深いのは、素人(いやそれぞれにおいての何らかのプロさをもった一般人。テレビで芸能人が視聴者を素人と称するのは強い不快感がある…まぁそんなことはどうでもよくて)が書く文字である。喫茶店のメニューや仕事場の人など。そして何よりこの本の(著者の)フェチさが伺えるのは、拾った紙くずなど誰が書いたのかわからない文字への考察だと思う。拾った紙くずに書かれた文字を愛おしく思い、ファイリングしているなど。。。このような日常を送っていない限り、この文字の素敵さには本書でしか出会わないだろう。

完璧なお手本的文字は確かに整ってはいるが、面白みがない。文字の魅力そのものとは、歴史的遺物を含めて、その人その背景その時代を思わせる要素や、人の手の介入さとも思う。

巻末に「くせ字練習帳」を付録するあたりのユーモラスさもにくい。

(↑?? [定価は1800円+税]です..)

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