リセールバリューとは?YUTORIとメルカリのアプローチ
こんにちは。今回は、近年ビジネスの世界で注目を集めている「リセールバリュー」について、詳しく解説していきたいと思います。特に、若者向けアパレルブランドを展開する株式会社ゆとり(YUTORI)と、フリマアプリ大手のメルカリの取り組みに焦点を当てながら、リセールバリューがビジネスにもたらす影響や可能性について探っていきましょう。
リセールバリューとは?基本的な概念を理解する
まず、リセールバリューの基本的な概念から押さえていきましょう。リセールバリューとは、簡単に言えば「再販売価値」のことです。つまり、ある商品を購入した後、それを再び売却する際にどれくらいの価値があるかを示す指標です[1]。
例えば、新車を購入して3年後に売却する場合、その時点での中古車としての価値がリセールバリューとなります。高級ブランドのバッグを買って数年後に中古市場で売る際の価格も、リセールバリューと言えるでしょう。
リセールバリューは、以下の計算式で表すことができます:
リセールバリュー(%) = (再販売価格 ÷ 新品購入価格) × 100
例えば、100万円で購入した車を3年後に60万円で売却できた場合、そのリセールバリューは60%となります[4]。
なぜリセールバリューが重要なのか?
ここで疑問に思う方もいるかもしれません。「なぜリセールバリューが重要なの?」と。実は、リセールバリューは消費者にとっても企業にとっても非常に重要な概念なのです。
消費者にとってのメリット
総所有コストの低減: 高いリセールバリューを持つ商品は、使用後に高値で売却できるため、実質的な所有コストが低くなります。
買い替えの促進: 所有している商品を高く売却できれば、新しい商品への買い替えがしやすくなります。
品質の保証: 一般的に、高品質で耐久性のある商品ほどリセールバリューが高くなる傾向があります。
企業にとってのメリット
ブランド価値の向上: 高いリセールバリューは、その商品やブランドの価値の高さを示すことになります。
顧客ロイヤリティの向上: リセールバリューの高い商品を提供することで、顧客満足度が上がり、ブランドへの信頼が高まります。
サステナビリティへの貢献: 商品の長寿命化や再利用を促進することで、環境負荷の低減にもつながります。
リセールバリューが低いとどうなる?
たとえばサマンサタバサはリセールバリューが低い=人気が低い、という悪循環になっているようです。
リセールバリューを高める要因
では、どのような要因がリセールバリューを高めるのでしょうか?主な要因として以下が挙げられます:
ブランド力: 高級ブランドや人気ブランドの商品は、一般的にリセールバリューが高くなります。
品質と耐久性: 長く使用できる高品質な商品ほど、リセールバリューが維持されやすいです。
希少性: 限定品や生産終了品など、入手が困難な商品は高いリセールバリューを保ちやすいです。
需要と供給のバランス: 中古市場での需要が高く、供給が限られている商品は、リセールバリューが高くなります。
商品の状態: 使用頻度が低く、傷や汚れの少ない商品ほど、高いリセールバリューを維持できます。
トレンド: 流行に左右されにくい定番商品や、逆に非常に人気の高いトレンド商品は、リセールバリューが高くなる傾向があります。
これらの要因を意識して商品開発や販売戦略を立てることで、企業はリセールバリューの高い商品を提供することができます。
リセールバリューとサーキュラーエコノミー
リセールバリューの概念は、近年注目を集めている「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」とも密接に関連しています。サーキュラーエコノミーとは、資源の効率的な利用や廃棄物の削減を目指す経済モデルのことです。
リセールバリューの高い商品は、長期間使用され、その後も中古市場で流通することで、資源の有効活用につながります。これは、「使い捨て」の文化から脱却し、持続可能な消費スタイルを促進することにもなるのです。
例えば、高級時計やブランドバッグなどは、数十年にわたって使用され、世代を超えて受け継がれることもあります。これらの商品は、単なる「モノ」ではなく、時間とともに価値が増す「資産」としての側面も持っているのです。
YUTORIのアプローチ:若者向けアパレルブランドとリセールバリュー
ここからは、具体的な企業の取り組みを見ていきましょう。まず、株式会社ゆとり(YUTORI)のアプローチを見ていきます。
YUTORIは、若者向けアパレルブランドを複数展開する企業で、2023年12月に東京証券取引所グロース市場に上場を果たしました。アパレル企業史上最短・最年少での上場を達成し、注目を集めています[6]。
YUTORIのビジネスモデル
YUTORIは、「9090」「HTH」「My Sugar Babe」「YoungerSong」など、複数のストリートブランドを展開しています。特徴的なのは、InstagramなどのSNSを活用したマーケティング戦略で、2023年11月時点で累計フォロワー数が152万人を超えるなど、若者を中心に高い支持を得ています[6]。
YUTORIとリセールバリュー
YUTORIのブランドは、若者の間で人気が高く、一部の商品は中古市場でも高値で取引されています。これは、YUTORIの商品が高いリセールバリューを持っていることを示しています。
YUTORIのCEOである片石貴展氏は、ブランドの価値について以下のように述べています:
YUTORIの海外展開とリセールバリュー
YUTORIは、国内市場だけでなく、海外市場にも積極的に展開しています。2024年2月には、韓国のファッションプラットフォーム「KREAM」で、YUTORIのブランド商品を期間限定で販売するという取り組みを行いました[6]。
この取り組みは、YUTORIのブランド価値を海外市場でも高めることを目的としています。海外での認知度が高まれば、グローバルな中古市場でのリセールバリューも向上する可能性があります。
YUTORIのマーケティング担当者は、次のようにコメントしています:
「海外展開は、単に売上を伸ばすだけが目的ではありません。私たちのブランドの価値を世界中の若者に知ってもらい、グローバルなコミュニティを形成することが重要だと考えています。そうすることで、商品のリセールバリューも自然と高まっていくはずです。」
YUTORIの今後の展望
YUTORIは、今後もブランド価値の向上とリセールバリューの維持・向上に注力していく方針です。具体的には以下のような取り組みを計画しています:
限定商品の展開: 希少性の高い限定商品を定期的に発売し、コレクター的価値を高める。
品質管理の徹底: 高品質な素材の使用と厳格な品質管理により、商品の耐久性を向上させる。
ブランドストーリーの強化: 各ブランドの世界観やストーリーを強化し、単なる「服」ではなく「カルチャー」として浸透させる。
サステナビリティへの取り組み: 環境に配慮した素材の使用や、リサイクルプログラムの導入など、サステナビリティを重視した取り組みを強化する。
これらの取り組みにより、YUTORIは商品のリセールバリューを高め、ブランド価値のさらなる向上を目指しています。
メルカリのアプローチ:フリマアプリとリセールバリュー
次に、フリマアプリ大手のメルカリの取り組みを見ていきましょう。メルカリは、個人間取引を簡単に行えるプラットフォームを提供することで、リユース市場を大きく拡大させた企業です。
メルカリのビジネスモデル
メルカリは、スマートフォンアプリを通じて、個人間で簡単に中古品の売買ができるプラットフォームを提供しています。ユーザーは、不要になった物を手軽に出品し、欲しい物を安く購入することができます。
メルカリの特徴は、以下の点にあります:
簡単な出品プロセス: スマートフォンで写真を撮り、商品説明を書くだけで簡単に出品できる。
安全な取引システム: エスクローサービスを採用し、安全な取引を実現。
幅広い商品カテゴリ: 衣類や家電から、趣味の物まで、様々なカテゴリの商品が取引されている。
配送の簡便性: 専用の配送サービスにより、梱包や発送の手間を軽減。
メルカリとリセールバリュー
メルカリは、そのビジネスモデル自体がリセールバリューと密接に関連しています。メルカリのプラットフォームを通じて、ユーザーは自分の所有物のリセールバリューを簡単に知ることができ、また、高いリセールバリューを持つ商品を見つけて購入することもできます。
メルカリの調査によると、フリマサービスの利用が消費者の購買行動に大きな影響を与えていることが分かっています[7]。
推し活(エンタメ・ホビー)では、55.2%の人が「フリマサービスで保有グッズが売れることで、他の推し活グッズを買いやすくなっている」と回答。
ファッションカテゴリーでは、34.5%の人が「フリマサービスがあることで、ファッションアイテムの買い替えがしやすくなっている」と回答。
家電カテゴリーでは、32.5%の人が「フリマサービスで売れることで、買い替え・購入をしやすくなった」と回答。
これらの結果は、メルカリのようなフリマサービスが、消費者のリセールバリューに対する意識を高め、購買行動に影響を与えていることを示しています。
メルカリが生み出す「循環型消費」
メルカリの存在は、「買う→使う→捨てる」という従来の直線的な消費サイクルを、「買う→使う→売る→買う」という循環型の消費サイクルに変えつつあります。
メルカリの広報担当者は、次のようにコメントしています:
「私たちのプラットフォームは、モノの価値を最大化し、資源を有効活用する循環型社会の実現に貢献していると考えています。ユーザーは、使わなくなったモノを簡単に売ることができ、その売却益で新しいモノを購入する。この循環が、持続可能な消費スタイルを促進しているのです。」
メルカリが明らかにした消費トレンド
メルカリの調査では、いくつかの興味深い消費トレンドが明らかになりました。
推し活(エンタメ・ホビー)における循環型消費
推し活関連商品では、55.2%の人が「フリマサービスで保有グッズが売れることで、他の推し活グッズを買いやすくなっている」と回答しています[2]。これは、ファンが自分の推しに関連するグッズを売買することで、新たなグッズを購入する資金を得るという循環が生まれていることを示しています。ファッションにおける「衣替えの消候化」
ファッションカテゴリーでは、34.5%の人が「フリマサービスがあることで、ファッションアイテムの買い替えがしやすくなっている」と回答しています[2]。これは、季節ごとの衣替えが単なる衣服の入れ替えではなく、不要になった服を売却し、新しい服を購入するという消費行動に変化していることを示唆しています。家電における「買い替えサイクルの短縮化」
家電カテゴリーでは、32.5%の人が「フリマサービスで売れることで、買い替え・購入をしやすくなった」と回答しています[2]。これは、家電製品の買い替えサイクルが短くなっている可能性を示しています。壊れる前のリセールバリューが高い状態でフリマサービスを利用し売却し、その後新品や新古品など新たな家電をお得に購入するという消費行動が背景にあるとみられます。
メルカリの新たな取り組み
メルカリは、これらの消費トレンドに対応するため、以下のような新たな取り組みを行っています:
価格なし出品機能の導入
2024年7月、メルカリは「価格なし出品」機能の提供を開始しました[7]。この機能により、出品者は価格を設定せずに商品を出品し、購入希望者からのオファーを受け付けることができます。これにより、より柔軟な価格交渉が可能になり、リセールバリューの最適化につながることが期待されています。海外展開の強化
メルカリは、韓国の最大手CtoCアプリ「雷市場」(ポンジャン)と提携し、越境販売の経路を拡大しました[7]。これにより、日本の商品のリセールバリューが国際市場でも評価される機会が増えることが期待されます。サステナビリティへの取り組み強化
メルカリは、リユースを通じたサステナビリティの推進にも力を入れています。2024年の調査では、Z世代の71.1%が直近1年間で中古品購入経験があり、リユースに前向きであることが明らかになりました[1]。メルカリはこの傾向を踏まえ、さらにリユース文化の普及に努めています。
リセールバリューの重要性の高まり
これらの取り組みや消費トレンドから、リセールバリューの重要性がますます高まっていることがわかります。消費者は単に商品を購入するだけでなく、将来的な売却価値も考慮して購買決定を行うようになってきています。
メルカリの広報担当者は次のようにコメントしています:
「リセールバリューは、今や消費者の購買決定における重要な要素の一つとなっています。私たちのプラットフォームは、消費者がより賢明な購買決定を行い、同時に資源の有効活用にも貢献できる場を提供しています。これは、持続可能な消費社会の実現に向けた重要なステップだと考えています。」
今後の展望
メルカリは、今後もリセールバリューの概念を中心に据えたサービス展開を続けていく方針です。具体的には以下のような取り組みが計画されています:
AIを活用した価格予測機能の強化:出品時により適切な価格設定ができるよう、AIを活用した価格予測機能の精度向上を目指しています。
カテゴリー別のリセールバリュー分析:各カテゴリーにおけるリセールバリューの傾向を詳細に分析し、ユーザーに有益な情報を提供することを計画しています。
サステナビリティ教育の推進:リユースの意義や環境への貢献について、ユーザーの理解を深めるための教育プログラムの展開を検討しています。
国際展開のさらなる強化:韓国での成功を足がかりに、他のアジア諸国やグローバル市場への展開を視野に入れています。
これらの取り組みにより、メルカリはリセールバリューを軸とした新しい消費文化の創造と、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
リセールバリューの概念は、単なる経済的価値にとどまらず、資源の有効活用や環境負荷の低減といった社会的価値にも直結しています。メルカリのような企業の取り組みは、私たちの消費行動に大きな変革をもたらし、より持続可能な社会の実現に向けた重要な役割を果たしていくでしょう。
まとめ
今回は、リセールバリューについて調査してみました。単なる購入価値だけではなく、リセールバリューも加味した購買行動が特に小売系では顕著になっているようです。ソフトウェアの世界ではまだ存在しないかもしれませんが、投資対効果を見る際には汎用的に使える概念だと思いますので、ぜひ活用してみて下さい。
Citations:
[1] https://about.mercari.com/press/news/articles/20240808_sustainabilitysurvey/
[2] https://about.mercari.com/press/news/articles/20231108_categorysurvey/
[3] https://nanboya.com/post-brand/mercari-measures/
[4] https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000359.000026386.html
[5] https://toyokeizai.net/articles/-/718176
[6] https://agenda-note.com/customer/detail/id=1925
[7] https://senken.co.jp/posts/mercari-240620
Citations:
[1] https://www.e-rabbit.jp/carticle/resale-value/
[2] https://dx.shiro-holdings.co.jp/p809/
[3] https://note.com/honkifactory/n/nc6ed01a72918
[4] https://221616.com/guide/resale-value/
[5] https://www.annex-neo.co.jp/column/resale_value
[6] https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000034263.html
[7] https://about.mercari.com/press/news/articles/20231108_categorysurvey/