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微生物が土をつくる

このnoteをご覧頂きありがとうございます。

前回の記事では、大枠の理論で述べさせて頂いた4つの課題のうちの1つ、
「光合成の阻害」について、【光】と【植物】の関係性を主体に述べさせて頂きました。

今回は4つの課題のうちの2つめである「微生物の死滅」について、
【土】と【微生物】の関係性を交えて説明させて頂きます。


【土ってそもそも何?】

誰もが触ったことがあり、誰もが知っているけど、
【土】って何?という質問に正確に答えられる人はどれだけいるでしょう。

実は【土】って地球には存在しているけど、月には存在していないんです。

何故かというと、【土】とは岩石からできた砂や粘土の上に死んだ【植物】が堆積していき、混ざり合ったものが【土】だからです。

月にはまだ植物がいないため、【土】ができません。

この【土】をつくるために、何十億年というはるか昔から岩を分解し、植物を枯らし、混ぜてくれた存在がいます。

それが【微生物】です。

【微生物】については次章で説明するとして、
【土】に対して良い悪いと判断することがあります。

生産者さんからウチの畑を見てくれ、と。

送られてきた土壌の写真

この場合はもちろん栽培するのに適した土壌になっているのかどうか判断して欲しいという意味ですが、
生態系理論として【土】をどう良い状態と判断するかと言うと、

  1. どんな種類の雑草が生えているか確認する

  2. 雑草(アブラナ科以外)を抜いて菌根菌の状態を診る

  3. ニオイを嗅いでカビ臭くないか確認する

  4. スコップで20-40cmほど掘ってみる

  5. これまでの栽培品目や栽培方法を伺う

このようなことをして土壌がどんな状態になっているかを判断します。

  1. 土壌のpHの偏りや分布がどうなっているか

  2. 微生物がどれくらい存在しているか

  3. 好気性菌と嫌気性菌のどちらが優位になっているか

  4. 有機物の量、地層の状態、水捌け、微生物の深度がどうか

  5. 土壌内の肥料成分や農薬成分、ミネラル成分の偏りがどうか

ざっくりと羅列しましたが、こういうところを考えて土壌を診るわけです。

よく土壌診断として分析に出される方がいらっしゃいますが、個人的な意見を述べるとするならばあまり意味はないのかなぁと感じています。

生物性、化学性、物理性の全てを土壌診断されるのでしたら指標としては良いかもしれませんが。

話を戻しますが、
どんな畑であろうと【土】を良い土壌にするために必要なものがあります。

それが【微生物】【有機物】【ミネラル】です。

今回はその中でも【微生物】について説明をさせて頂きます。

【微生物ってそもそも何?】

【微生物】とは目にみえないくらい小さな生物のことです。
細菌、菌類、ウィルス、カビ、微細藻類、原生動物などが含まれます。

地球上に存在する微生物の数は100万種類以上と言われ、そのほとんどが人為的に培養することは不可能と言われています。

ウィルスやカビ、菌などと聞くとあまり良いイメージを持たないかもしれません。
しかし、実のところ微生物は人間にとって身近な存在で、特に日本人は日本酒や納豆、醤油や味噌、お酢など様々なところで微生物のお世話になってい ます。

近年「腸活」なる言葉を耳にする機会が増えたと思いますが、これも【微生物】と密接な関係があります。

腸内細菌を整えることで美容や健康な身体になりましょうという感じのもので、腸内細菌に良いご飯を与えることを良しとします。

土壌も同じように土壌微生物に対して良いご飯を与えることで健康で整った土壌をつくることが可能になります。

では、土壌微生物にとっての良いご飯とはなんでしょう。

それは大きくわけて3つになります。

  1. 植物からもらう光合成エネルギー

  2. 植物や動物の死骸からなる有機物

  3. 微量要素も含んだ多用なミネラル成分

この3種のご飯を【微生物】がもらうことで、土壌は豊かになり、
豊かな土壌では肥料がなくても【植物】がすくすくと育つことになります。

【微生物と植物の関係性って何?】

生態系理論において、【微生物】と【植物】の関係性は料理人とお客さんの関係と考えています。

【光】を浴びてエネルギーを生み出す行為は【植物】にとって労働で、
【植物】は得た賃金(光合成エネルギー)を【微生物】に支払い、
【微生物】は「有機物」を食材、「ミネラル」を調味料として利用し、
【植物】にとって必要なご飯を必要なタイミングで料理としてくれる。

こんな関係性なのかなと。

人間は赤ちゃんの頃はママからミルクをもらい、
離乳食から味の薄い食べ物に変化、
学生の頃は肉!米!みたいに身体をつくるものを食べ、
大人になると魚や野菜などミネラルバランスのとれたものを食べるようになります。

それと同じなんです。

発芽のときは種自身がもつエネルギーを使い、
根を伸ばすとき、芽を伸ばすとき、葉をつけるとき、
蕾をつけるとき、花開くとき、結実するとき、
多年草の場合は根に養分を貯めるとき、

様々なタイミングで必要とするご飯は違うんです。

けれども、実際に農業指導で言われることは、
「播種や定植前に窒素を何kgいれて~」
と植物がその土壌で生まれる前にご飯を与えるんです。

特に化成肥料はハイカロリーなジャンクフード。

それを生まれる前の土壌に与え、ご飯を食べ始める頃には雨や空気に触れ、酸化したご飯になっているんじゃないかと。

酸化して腐ったジャンクフードを食べて健康な野菜ができるでしょうか。

【微生物】という料理人に新鮮で必要なご飯を都度作ってもらう方が
自然に健康な野菜としてすくすく育つんじゃないのかなと思います。

【微生物】にとっての良いご飯について、前章において述べましたが、
では、何故【微生物】の少ない土壌が増えているのでしょうか。

【微生物が死ぬ原因って何?】

はるか数十億年前から存在し、超高温の火山や空気のない地中深く、極寒の地においても何かしらの種類の仲間が存在する【微生物】さん。

もちろん、ちょっとの環境変化で死んでしまう【微生物】さんもいます。

しかし、そんな多様な仲間を持つ【微生物】がいなくなったり、変に偏っている場所があります。

それが畑と人間の腸内なんです。

畑では土壌消毒や殺菌剤など、劇薬を打ち込むことで【微生物】を全滅させ、一旦無菌状態を作り出します。

その瞬間は無菌状態で何も病気のリスクはないかもしれませんが、
自然における無菌状態というのはありえないことで、すぐに様々な【微生物】がやってきて誰もいない土壌を支配していくのです。

そうなると土壌のバランスが崩れた状態となり、常に土壌消毒をしないとダメな負のループになってしまいます。

人間の腸内もアルコールで殺菌することでバランスが崩れやすくなります。
他にも油や砂糖ばかりを摂取していると【微生物】が偏り、体調不良に陥りやすくなります。

【微生物】はバランスが大事です。
乳酸菌だけでも、納豆菌だけでも、麹菌だけでも、酢酸菌だけでも、
「〇〇だけ」は良くないんだと思います。

【土】をつくるためには【微生物】さんが大事です。

というよりも、【微生物】さんが【土】をつくるという考えで、いかに【微生物】さんにとって良い環境、良いご飯を用意してあげるかが我々【動物】がやれることなのかなと思います。

長くなりましたが、ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回は4つの課題の3つめ、「ミネラル流出」について【水】と【動物】に関係した歴史の流れを交えて述べさせて頂きます。

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