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2019年9月の記事一覧

『ぴぷる』 原田まりる KADOKAWA

 人間型AIロボット、いや、人型汎用AIと結婚する話だ。AIの名は「ぴぷる」。  原田まりる、という作者を知らずに、途中まで読みかけて、作者は男性だろうと思った。登場人物の独白を読んでそう思ってしまうぐらい、ピプルを巡る人々の心理の変化がリアルに描かれているのだ。時にはその二重人格性に至るまで。  ストーリーの展開は緩やかで、心理を描くという性質上、独白が多いのだが、退屈しない。最後の30ページほどで意外な展開となり、積み重ねた心理描写は人間そのものに対する考察だったことを示

『平成くん、さようなら』古市憲寿 文藝春秋

 読み始めてすぐに、田中康夫の『何となくクリスタル』を思い出した。30歳代半ばぐらいでちょっと成功したような、例えばクリエーターなり評論活動をしている人の、それなりに豊かな都会生活における行動ぶりや、ありがちなモノ、サービスの固有名詞が散りばめられている。もしかしたら読者に、底が浅いな、という印象を持たせるために、意図的にこういう描き方をしたのかもしれない。     安楽死がテーマだ、とすぐに分かるが、その安楽死さえリッチであることの道具にされているような印象があって、虚無感