良いものだけを集めても良くはならない
昨日は和のお香の会、沈香でお線香を作る会を開催ました。匂い袋や塗香といった常温で香るものは何度か開催してましたが、お線香作りをお伝えするのは初めての体験。
一般には白檀の方が有名ですが、
やっぱり沈香はお香の中のお香。
「香すなわち沈」
「沈すなわち香」と言われ
他に例えようがない古淡幽玄と言われる香りです。
沈香は奥が深く学べば学ぶほど知らないことが出てきます。5年や10年でわかる世界ではないと言われる世界。学びが尽きることはありません。
この沈香を主に、他のさまざまなお香原料を混ぜ合わせて香りを作ります。
お香原料は常温のときと温めたとき、さらに燃やしたときで香りは全く変わるものが多く、お線香の調香は原料の香りを一つ一つ燃やして確認するところから始まります。
昨日もお一人お一人香炉で香りを燃やして香りを確認していただきました。
一番最初に沈香を。
途端に部屋中に沈香の幽玄かつ無二な香りが立ち上ります。
みなさんが焚かれた瞬間、少し離れた場所に立っていた私のところまで沈香の香りがふわぁーっと薫ってきて、最高の贅沢な瞬間を味わうことに。
その後いろんな香りを焚いていただきましたが、実はお香の原料は決して「良い香り」のものばかりではありません。
匂い袋や塗香もそうですが、「良い香り」一種類だけを焚くのではなく、お線香もいろんな香りをブレンドして作ります。
(注、鎌倉時代などは沈香一種類のみを大切にした時代もありました)
そしてその中には「臭い匂い」も含まれます。
こういった香りは苦味や塩辛味で香りに奥行きを出したり、侘び寂びを表現できる「枯れた」趣を表現することができます。大量に入れて香りを主張するわけではないのですが、これがあるとないとでは出来上がりの香りの奥行きに違いが出ます。
また香り全体をまとめてくれるなど大切な役割のものばかり。
全部入れないといけないわけではありませんが、いくつか選んで使うと絶妙な良い働きをしてくれます。
これは和のお香だけに限ったことではなく、こういった癖のある香りは有名な香水にも入っていたりします。
この辺の匙加減が毎回のプラクティス。
良い香り悪い香りってもちろん本当は存在しなくて嗅ぐ側の好みでもありますが、中には「特定悪臭物質」に指定されている物質を含むものもw
そんな悪臭(!)でさえお香の世界では大切にされています。
スイカに塩、
小豆を炊く時のお砂糖と少しのお塩。
甘さを引き立たせるのに
塩が必要なように、
香りの世界でも良い香りだけを集めるのではなく、そこに苦味やクセのある香りをエッセンスとして加えることでより深みが増し、より深みのある良い香りになります。
これって私たちでも同じかなと。
いつも明るく元気で何の困りごともない方も素敵ですが、
いろんな体験を重ねている方には人としての深みがあり魅力を感じます。
きっと体験の中には決して幸せと思えない体験も含まれます。酸いも甘いも噛み分けた…ではありませんが、さまざまなことを乗り越え、かつ明るく元気な方は懐深く思いやり優しさに溢れ、人間としての力を感じます。
そう思うと私たちの身に起きる「ちょっとしんどいな」って体験もいずれ宝になるのでしょうね。
お線香の香りは煙が香るのではなく、火のついている少し手前ところが熱くなり香り成分が温められて香りが周囲に開くそうです。
お客様をお迎えのときなどはおいでになる少し前にお線香を焚き、その残り香でおもてなしするとお部屋が仄かに香り上品ですね。
市販にはない天然本物のお香原料で作る世界で唯一無二の香り。
自分で作って自分で焚く。
手作りの楽しみは尽きません。
香りは癒し。
みなさま今日もご機嫌な1日を。
いつも最後までお読みくださってありがとうございます。
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