今日は土曜日。いつも人が来ない、お客が来ないと嘆く古本屋に何故か人がいるぞう!そして店長がレジをしてると買取のお客が来た。大きな紙袋を持っているがなんだろう。ふっくらしてる。差し出されたのは洋服だった。洋服の買取もしてるがグラムロックなコートだ。そう、まるでイエモンが着てそうなコートだなと思いながら、店長が査定し支払う。するとお客さんは「でも、これは店長に来て欲しいんですよ。」なんと指名買いならぬ指名買取⁉️なんと表現すれば良いのだろうか。人や物を決めて買いに行くことはある。
開店でシャッター開けようとしたら近所の大家業のおばあぁちゃんがいたのでつい立ち話。すると別のおばあぁちゃんが来て「あれ?今日まだ開いてないの?」 ウッワー~!と慌てて開けたのにそのおばちゃん同士が知り合いで話してる。なんでやねん! なんとか開店作業を終えたがあーだこーだと夜になる。 常連のフィリピン人が引っ越の処分で台車を貸してくれとまた言われる。 当店に寄贈してくれるそうだ。そう、海外では寄贈する文化があるのだ。 ただ、ガラクタだと困るなぁと心配しながらも、台車を30分後に
ブルブルブルーンとエンジン音が響く中、店主は車で無事、高円寺に到着した。普段は目的地の近くまで来ても、ピンポイントでお客さんの家にたどり着けないこともある。しかし、今回は環七沿い、迷うことなく最短ルートで来れた。最高の気分だ。 意気揚々とマンションの階段を駆け上がり、インターホンを押すと、「ピンポーン」という音に続いてドアがガチャリと開く。目に入ったのは、脇に積み上げられたダンボールの山。そして未整理のもので、おもちゃ、フィギュア、ぬいぐるみ、食玩などが次々と現れる。 状態
あたりが薄暗くなるころ、一人の男が店にやってきた。通路でしゃがんで作業していた店主は、見上げるように男を見た。 「出張買取ってやってますか?CDとかがたくさんあるんですけど。」 店主は一瞬戸惑った。まだ作業中だったこともあり、すぐに返事ができない。しかし、話を聞いてみることにした――が、心がざわつく。激しく動揺していたのだ。男とは目を合わせられない。 なんとか気を取り直し、「どれくらいCDがあるんでしょうか?」と尋ねると、男は「段ボール4箱ぐらいあります」と答える。 「おお、
夕方、古本屋の電話が鳴り響いた。店主は、普段めったにかかってこない電話に驚きながら受話器を取った。 「こちらって、CDの買取とか処分ってやってますか? あと、DVDプレイヤーもあるんですけど、リモコンがないんですよ。」 「あ、大丈夫ですよ。」と、店主は快く答えた。 その約10分後、依頼の女性が店を訪れた。持ち込まれたDVDプレイヤーは特に問題のない商品だった。しかし、CDやDVDプレイヤーに加え、思いもよらぬものが紛れていた。それは――iPadだった。 「
クラジイがやってきた。店頭に出している100円のクラシックCDを数枚買う常連だ。今日は4枚をレジに持ってきたので、いつものように会計を始めた。ふと「奥にもありますよ」と店主が声をかけると、クラジイは少し悩んでから200円のCDも手に取った。「いやぁ、いつも良いものをありがとうございます」と、満足そうに言いながら代金を支払って店を後にした。 「隠居した日々を、いかに安く楽しむかが彼のミッションなんだな」と、店主は一人微笑みながらクラジイを見送った。 ところが、その数分後、ク
店主は出張買取の訪問が決まったものの、住所を聞いていなかった。相変わらずポンコツだ。慌ててSNSで紹介してくれたお客さんにDMするが住所は送られてこない。代わりに画像がきた。なんと地図だ。 店主は思わず笑ってしまった。その地図は、ルートまで細かく書かれていて、さすがイラストレーター。芸が細かくこれは助かる、初めての経験だ。ますます訪問が楽しみになった。 翌日、ブーン!とお店を開ける前に自転車で出張買取の家に到着。車を借りるにしても、まずは自力で現地へ行かねばならないからだ
閉店間際の古本屋に、その男はやってきた。作業着にタオルを頭に巻いた風貌が、まるで町の大工か何かのようだが、実はイラストレーターだったりする。おずおずと店主に近づきイケメンボイスで「ちょっと相談があるんだけど…」とささやく。 話を聞くと、彼の友人が近所で家の整理をしていたが、どうやら限界に達したらしく、手伝ってほしいという依頼だった。LPやレコード台、それに本がたくさんあるらしい。これは出張買取の依頼だと理解した店主は参考に見せられた写真に目をやる。しかし、そこで思わず「うーん
息を切らしながら、一人のおばちゃんが古本屋に飛び込んできた。 「ここ、シルバニアファミリーとか、大丈夫?」 突然だなぁ…と思う機能が店主にはまだかろうじでついていた。一言目でババーッと目的語なしで話すお客は多いのだ。平静を装うため脳をトントンと調整しながら 「はい!箱や状態によりますが買取できますよ!」と快活な返答を絞りだす店主であった。 話を聞くと引っ越しで処分に困ってたらひどい目に遭ったようだ。最近トラブルをよく聞くので何を処分したのか聞いてみると! それはなんと…
天使オバがやってきた。小柄で足が少し悪いが、たまに古本屋の店頭で雑誌を買っていく常連だ。「この間の仏教の本、すごく良かったわ」と微笑みながら、今日は2冊で220円の雑誌をレジに持ってきた。しかし、いつものように100円玉を4枚、計400円をレジにそっと置いていく。 「いいのよ」と、上品な声で言い残して。 この余分な数百円は、お釣りの端数ではない。彼女はいつも、端数にプラスし多めに支払っていく。その行為を最初は不思議に思った店主も、今ではその意味がわかっている。まるで「天使の涙
久々に来た常連客が 「店長コレいけるかな?」 おもむろに箱から取り出した白い束。目に飛び込んできたのは山積みのポスターだ。全て封がされてて、何が描かれているのかは分からない。 ぽ す た ー だ イヤな予感しかしない。 買取のため20本全部開けるのかワイが… まぁそれが仕事なんですが。古本屋店主には予感ってあるんですよ。 一本一本手に取って開けると、アイドル、ネギッコの姿が次々と現れる。 店主は現在のアイドルに詳しくない、むしろ苦手かもしれない。 昔、焼き鳥屋で出会った
まだ夏の暑さが残る午後、古本屋の扉が静かに開いた。涼しい風が一瞬店内に流れ込み、男が入ってくる。いや、違う…今は扉がなかった。 お互いに無言のまま軽く会釈するだけだが、それで十分だ。 店主が「いつ頃ですか?」と一言目を発する。彼はコミックやプラモデルが溜まると、出張買取を依頼してくるのだ。8年以上の付き合いで、店主は彼の蔵書を楽しみにしている。年齢が近いこともあるが彼の趣味は少しズレてるので興味深いのである。今まで車やバイク、自転車など様々な手段で彼の家を訪れてきた。 だが、
その日、古本屋の扉が静かに開いた。入ってきたのは、ハットを被った渋みのある碧眼のオジサマ。彼は一言も発さず、棚の間を行ったり来たりと、くまなく店内を見回していた。店主は「ひやかしだろうか…それにしても…強い意志を感じるな…」と思い声をかけた。 「何かお探しですか?」と尋ねると、彼はにっこりと微笑み、少し訛りのある日本語で「妖怪、ホラー本を探しているんです」と答えた。驚きと興味が入り混じる店主。その風貌からは想像もしなかった「妖怪」というキーワードに小さな衝撃が走った。 さ
その日、おばあちゃんが腰を曲げながら、重そうな段ボールを抱えて古本屋にやってきた。小さな体で、なんとか運んできた本をカウンターに置くと、少し息を切らしていた。その姿に、店主は自然と胸が痛む思いだった。 「重かったでしょう、ありがとうございます」と声をかけると、おばあちゃんはにこりと笑って、「いえいえ、大丈夫です」と答えた。段ボールの中には、東海林さんの作品が並んでいた。だが、心の中で店主は正直に思った。「東海林さんの本は、今はなかなか売れない。だから買取は難しいかもしれない
CDアルバムを友達に勧められてハマる体験って、自分の好みを超えて、新たな感覚を教えてくれる瞬間があるよね。自分のセンスとは違うからこそ、そのギャップが刺激的で、同時にエゴとの葛藤も生まれるけど、最終的にはその音楽に飲み込まれてしまう―そんな陥落の瞬間は、青春の象徴とも言えるかもしれない。 私にとってそれがサミー・ヘイガーがバンドに加わったアルバム「5150」。 そしてそんな青春の象徴を思いださせてくれるライブだった。 エディ・ヴァン・ヘイレンの革新性やサウンドの進化が詰まって
15年間、中野区の都立家政で静かに店を構えてきた。隣駅の急行停車駅、鷺ノ宮が800メートル先に見える微妙な距離感。新宿に向かうたびに、都立家政駅で各駅停車に乗っては、高田馬場で急行に抜かれる悔しさを何度も味わった。西武新宿線は新宿駅直結を夢見ながらも、地上げが至らずに手前で開業し、「歌舞伎町駅」と揶揄される路線。 この駅は、中野区といいつつも、北側の新青梅街道を渡れば練馬区、南に歩けば杉並区。中途半端な場所に佇む都立家政。住民でさえ「どこに住んでるの?」と聞かれると、「中野