PJ Novelとは「小説」を 軸に活動する “クリエイターズ コミュニティーです。 このマガジンにはメンバーの自由投稿作品を集めています。
「伊達笑兵衛生家 100m先右折」 あれは12年前の夏、四万十でのキャンプを終え、愛南町の自宅へあと少しという道中の出来事だった。 * * * * * * * 「伊達何兵衛? こんなとこにこんな看板あったか? 聞いたこともない名前やなぁ。奏太、社会で習ったか? いや、郷土史の時間とかか?」 「歴史好きやから真面目に授業聞きよるけど、ぜんぜん聞いたことないなぁ」 「それにしても伊達家か、ここらへんも宇和島藩やったな……御荘平城というと、昔で言うと平城村か。そうだ、奏太」
年に一度の夏祭りの日。 あ…… え……? 家族連れでごった返すお祭りで、幼馴染の僕と彼女は、丸々一年ぶりに顔を合わせた。偶然のようで、必然のようで……まあ、それはどちらでも良いのだけど。 少しだけ、人混みから離れて、僕たちは近況を話し合った。 どうやら彼女は地元の短大に進学したようで、相変わらず色白で可愛くて、そして……彼氏はいないとの自己申告も得た。 高3の夏以来、一年ぶりに言葉を交わす彼女は幼馴染で同級生。同じブロックに家があった僕たちは、ほんの一週間でも顔を合