映画感想メモ 『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』
スーパーヒーロー戦記 感想
大まかな感想としては、良くも悪くも白倉作品らしいなといった感じ。白倉Pの持つ“ヒーロー観”のようなものはやはり芯が通っており、ヒーローの持つ力とは何か、ヒーローの素晴らしさとは何かを描くヒーロー讃歌を作らせたらおそらく白倉Pの右に出るものはいないと思う。特に今回は「石ノ森章太郎先生に捧ぐ」というテーマが乗っかっているもんだから、最後の本郷猛と石ノ森章太郎とのやり取りなんかは身震いするぐらい感動的だった。
でも、しばしば顔を覗かせる悪ノリ癖のようなものが今回もかなり作用していて、若干そこがノイズになった部分もあったかな。今回の映画では仮面ライダーセイバーが「物語の力」で戦うことに合わせて、「“仮面ライダー”という物語」「“スーパー戦隊”という物語」をめぐる戦いが描かれている。当然、そこでかなり意図的にメタ視点の台詞が多用されていて、その手法自体はとても面白いものだし大好きだと感じたんだけど、少し限度を見失ってやりすぎた感はある。特にアスモデウスが「オワコン」という単語を発したあたりとか。ちょっとそれは一線を越えたんじゃないかなとなってしまった。
この辺、『仮面ライダージオウ Over Quartzer』を見たときに感じた感覚と近いものがある。あれが好きなら今回も楽しめると思うけど、逆に『平成ジェネレーションズ FOREVER』や『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』レベルのものを期待するとがっかりするかもしれないから、そういう人にはおすすめできない。僕はどっちも好きだけどね。ちょっとやり過ぎ感が強いなとは感じたけど。
あと、少し惜しいなと思ったのが歴代ヒーローが大集合する決戦シーン。スーパー戦隊がレッドしかいないのはまあしょうがないとして、声の偽物感が隠しきれていなかったのが残念だった。特に今回は、各番組のロゴをババーン!!と映し出すことで「仮面ライダー/スーパー戦隊の歴史の重み」を表現するというこれ以上なく熱い演出があったのに、そのせいで聴こえてくるヒーローの声がコレジャナイものばかりだったのが際立ってしまった。さすがに全員本人を呼んで新録しろとは言わないけど、ほとんど定型分みたいな決め台詞だけなんだからライブラリ音源くらい使ってもいいんじゃないかと思う。ちょっと贅沢な話に聞こえるかもしれないけど、『平成ジェネレーションズ FOREVER』であれだけがっつりとライブラリ音声を使って“本人の声”にこだわる様子を見せてくれた経験があるからな。
あと忘れてはいけないのがレジェンド戦士の登場だけど、これも結構賛否分かれそうだと感じた。今回のレジェンドは「物語の登場人物」として、最低限の描写以外は思い切って完全にオミットされている。物語の尺のこととかを考えると判断としてしょうがない部分があるんだろうなとは思うけど、やっぱりレジェンド戦士登場の醍醐味であるクロスオーバー感が皆無なのは否めないし、何より物語上の必然性が見つからないのが、各レジェンドに思い入れがある身としては残念だった。
とまあ結構文句が多めになってしまったけど、“石ノ森章太郎讃歌”として筋を通していたところとか、その極地としての本郷猛とのやりとりとかは本当にいい話だったから、まあ見てて悪くはなかったかな。あんまり人におすすめはできないけど。
同時上映 仮面ライダーリバイス短編 感想
最高だった。本編開始が楽しみ。「主人公と人外キャラのバディ」というのは、電王以降度々見られる伝統芸能とも言える手法なんだけど、今回のそれは今までの積み重ねを感じさせる貫禄の面白さだった。
やっぱりバイスのキャラがわかりやすく愛嬌たっぷりなのがいいよね。文句は言いつつも主人公に従順でありながら、根は怪物だから加減がわからずやりすぎちゃう感じとか、王道だけど突き抜けてやってくれるのはやはり良いものだ。(声色とか口調とか、山ちゃん演じるジーニーを彷彿とさせる感じだったのはやはり意識していたのだろうか)
変身アイテムが“スタンプ”ということで、なるほど「悪魔の契約」と掛けてるのかと思ったら、変身シークエンスでいきなりLINEのやりとりが現れたのには驚いた。スタンプはスタンプでもLINEスタンプかよと。でも、そこで一輝とバイスの会話が繰り広げられていたのは良いね。とことん「2人のバディ関係」の描写に拘るんだという気概が感じられる。
ただ一個気になったのが、途中で明らかにディケイドを意識したデザインのフォームに変身し出したこと。能力こそディケイドとは無関係だったけど、マゼンタと黒のバーコード状のデザインとか、変身サウンドに「通りすがり」という単語が入っているところとか、これでディケイドと無関係とは言わせないぞという感じ。ベルトにも思いっきり「50」と刻まれているし、50周年アニバーサリーをやるつもりなのだろうか。でも、つい最近ジオウをやったばかりだし、後番組のゼンカイジャーでもアニバーサリーをやってるし、ここでリバイスまでアニバーサリーを始めたらさすがにクドいんじゃないかな。そんなに頻発するようなもんじゃないぞ。
とはいえ、今回の短編がすごく面白くまとまっていたから本番が始まるのがとても楽しみになったのは事実。正直昨日までの段階では、脚本が特撮無経験の人だと聞いてちょっと不安を感じていたんだけど、今回ので一気に期待値が引き上がった。ここまでキャラクターが魅力的ならもう勝ちだ。
画像出典:公式ホームページ
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