【ライブレポ】time after time【zonji / LINE wanna be Anchors】_20221203②
zonjiの1stアルバム『Our Time Our Love』リリースイベント「time after time」東京公演が12月3日、渋谷・TOKIO TOKYOにて開催された。
以下の記事の続きとして、後編(zonjiパート)についてレポートする。
鍵盤の音から始まるお洒落なSEが流れ出し、先ほどとは違いゆったりとしたムードでメンバーが登場。衣装も全員着替えてきており、同じメンバーながらも切り替えが見事に成功していた。SEがフェードアウトすると、打ち込みサウンドから「fuwari」が始まる。この曲はリリースされたばかりのアルバム『Our Time Our Love』に収録された新曲だが、実は曲の”種”は2021年7月3日という1年以上前にRAW動画”nigeru”としてSNS上に曲のワンフレーズのデモ音源が公開されていた。zonjiは曲のアイデアの一部を公開し、リアクションが多かったものを楽曲化していくという珍しい取り組みをしており、ファンはRAW段階と完成形の違いを味わうことができる面白さがある。拳を挙げてというよりも、自由にゆらゆらと揺れながら聴くような楽曲が多いzonjiからの「揺れていこうぜ」というメッセージが溢れるメロディと淡いグリーンの照明が初っ端から忙しい日常で疲れた心を癒していく。続く「lover」でも、穏やかな曲調に合わせて自由にステージ上で揺れたり歩いたりする阿部につられるように、観客も身体を動かしながら気持ちよく聴き入っていた。seekxのスティックによるカウント音で引き締めつつ始まるのは「give&give」で、場の雰囲気の変わり様から今回のアルバムに入っていないことが納得できる。誰かにGiveをしたら、Takeがないとおかしいのではないか、そういう関係でなくてはいけないのではないかと凝り固まっていた思想を溶かしていく力がこの曲にはある。さらに、誰かに何かしてもらったのに何もできない自分の無力さも救われていくように思える。阿部がセルフライナーノーツで語っていた「誰かにプラスの何かを与えたとき、言葉では形容できない満足感や充足感を得られる。僕はその気持ちがTakeであり、誰かに与えられることをTakeだとは思わない。」という言葉からも優しい人でありたいという決意を感じた。そのような前向きな気持ちに共感する人々が、今日この場に集まっている観客なのだろう。
阿部がMCで先ほどもライワナにて自身が出ていたことを白状しつつ、「ライワナに比べるとゆったりした曲が多いので、僕も踊るのでみんなも一緒に踊りませんか」と観客をzonjiモードに誘う言葉を放った直後に、ギターを用意しながら「zonjiにもちょっとだけ盛り上がる曲があって、11月までアニメ『キングダム』の主題歌だった「geki」という曲なんですけれども、この曲は熱い気持ちほしいなって。いけますか?TOKIO TOKYO!」と激しめモードになることを提案。観客も「この曲、待ってました!」と応えるような拍手で、曲が始まる前から大きな盛り上がりをみせた。序盤の間奏の野澤のギターは音源の重ねられたギターよりも1本で演奏することによる切実さが強く響いてくる。2番の頭はあえて歌わずに音源を流して「今日一番のクラップを聞かせてください」と阿部が観客を煽り、最高潮に盛り上げた。曲を通してほとんどが真っ赤な照明で、こんな状況ではどう足掻いても熱い気持ちになってしまう。観客も前のめりになり、拳を挙げたり、大きくクラップをしたり、頭を上下に振ったりと、この曲の人の心を動かす力には抗えない様子だった。背中を強く押されるようなエネルギーが全身に満ちていく。
ここからの2曲は儚さが漂っていた。<別れは愛情>と気怠い空気を纏う「wakare」では、okbのシンセベースの音がより深く海の底にいるかのような重たい空気を作り出す。そこからつながる「ichizu」も、一途に人を想うことは美しいことだけれども、必ずしも実るわけではないという悲痛な感情が投影されている。愛というのは多様なものであることを伝えてくれるこうした楽曲がライブのスパイスとなり、飽きることなく楽しめる。
「11月23日に『Our Time Our Love』をリリースしましたー!」とイギリス英語の発音をマネしながら阿部が口火を切り、アルバムについて「僕は人生は円になっていると思っていて、始まりと終わりは区切りがあるけれど実は地続きになっているという解釈をしてこのアルバムを作りました。愛に溢れた良いアルバムが作れたと思っています。」と語った。
愛を探す歌として、アルバム1曲目に収録されている「aizou」がアルバムのメッセージの直後に届けられると、愛ゆえに憎らしいという感情が上回ってしまうこともある愛の難しさに深く頷いてしまう。サビの部分で一気に音やコーラスが重なり、間奏のギターソロがそれに続くことでドラマチックさを増していき、胸が引き裂かれそうになる。なんとなしに過ごす日常の中で、ふと襲ってくる侘しい思いのようだ。それでも最後には、<もう大丈夫さ 私たち輝くよ>という言葉で励まされ、救われる。
そこから「wait」と「matane」といった、今目の前にある愛情に向き合う大切さを歌った曲を届け、観客の心を解きほぐしていった。
「まだまだ揺れていけますかTOKIO TOKYO」という一声から始まったのは「playful painful world」、「aimai」、続けざまに最後の盛り上げりに向けてもう一度フロアを踊らせていく。zonjiの中でもロック色の強い「stay」では野澤の歪ませたギターの音が怪しく光り、なんともグルーヴィー。
気持ちよく揺れていたらあっという間に最後の一曲になってしまった驚きが隠せない中で、阿部が最後に歌う曲である「time」について話始めた。「コロナ禍の時の自分の半径1mのことを書いた曲で、僕たちは今ある幸せ、友達に悩みを聞いてもらったり、家族でどこかに行ったりする幸せは、宝物にしてはいけないと思っていて。色々なこと屈してはいけない。今ある幸せを大事にして、より彩り豊かな人生を送れるようにみんなで手を挙げて一つになってこの世界に立ち向かっていきましょう。半径1mの曲なので、友達や先輩のことについて書いているから、これ誰のことなのかなと思いながら聴いてもらえたら嬉しいです。みんなの人生がより幸せな愛溢れるものになるよう、僕たちzonjiは心から願っています。今日は聴いてくれてどうもありがとう。」アルバムのできるきっかけにもなった曲「time」が、歌も演奏も感情たっぷりに披露され、お守りがそっと掌に置かれるような安心感に包まれながら本編は終了した。
メンバーがステージからいなくなると、会場にはすぐにアンコールを求める手拍子が鳴り、ほどなくして再登場。新作グッズの『Our Time Our Love』Tシャツを着用した阿部が観客へ「みんなから溢れる幸せを今日はもらってます。マスクなんかしていても目や空気でわかります。なので、最後は僕たちから幸せを分け与えられたらなと思います。」と感謝を込めた言葉を贈った後、「僕の故郷の歌です。」という紹介から「sachiare」が披露された。懐かしさのあるメロディを奏でる野澤のギター、的確なところでアクセントを入れるseekxのドラム、曲全体を盤石に支えるokbのベース、そして大切な人と大切な故郷を想いながら時に語るように、時に叫ぶように表情豊かな阿部の歌、そのすべてがTOKIO TOKYOを幸せ色に染め上げ、ライブを締めくくった。
1stアルバムのリリースという節目のライブを終えたzonjiは今後どのように私たちに寄り添ってくれるだろうか。その熱は、その愛は、形を変えるだろう、だが決して冷めることなく、私たちのもとに音楽として届けられるに違いない。続いていくに違いない。なぜならば、同じメンバーで、異なるバンド形態ながらも、地続きの熱と愛がそこにあったから。この先の彼らを、信じ切ることができた夜だった。
zonji セットリスト
01.fuwari
02.lover
03.give&give
04.geki
05.wakare
06.ichizu
07.aizou
08.wait
09.matane
10.playful painful world
11.aimai
12.stay
13.time
en. sachiare
zonji 1st Album 『Our Time Our Love』 各種サービスで配信中
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