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【旅日記】JR津軽線のいま


JR化後の津軽線の数奇な運命

JRの津軽線は、青森駅から竜飛崎の手前となる三厩駅までの55.8kmを結ぶ路線です。この路線は国鉄時代は全線にわたって単線非電化のただのローカル線でしたが、JR化された翌年の1988年3月に青函トンネルが開業してからその運命が大きく変わることになりました。

青函トンネル開業に伴い、トンネルを含む津軽海峡線が開業しましたが、その起点は津軽線の中小国駅となりました。正確には中小国駅から少しいったところの新中小国信号場で津軽線から分岐し、青函トンネルを抜けて北海道に上陸、木古内駅に到達、そこで在来路線に接続します。

津軽海峡線は、本州と北海道を結ぶ大動脈となり、開業初日から多くの特急列車、快速列車、貨物列車が通過することとなりました。このため、最初から電化路線として建設されています。
津軽海峡線へのアクセスとなる津軽線も、これに合わせて電化され、特急や貨物列車がスムーズに走れるよう、線路や路盤自体が改良されることとなりました。ただし、改良されたのは、あくまでアクセス線となる青森駅から中小国信号場までの間です。

それまでローカル列車も区間運転を除いて原則青森から三厩まで直通していましたが、中小国までの電化に合わせて、中間の拠点駅である蟹田までは電車で運行され、末端の蟹田〜三厩間をディーゼルカーで運転する形態に徐々に移行しました。

つまり、青函トンネルの開通により、津軽線は途中の蟹田・中小国までは電化幹線で、そこから三厩まではローカル線と、二つの性格を持つようになったのです。

そして時は過ぎ、2016年に北海道新幹線が開業します。これにより、津軽海峡線は在来線の定期旅客列車は運行を全て廃止し、本州〜北海道間の旅客はすべて新幹線へ移行することとなりました。とはいえ、貨物列車は新幹線への乗り換えはできないので、引き続き津軽海峡線を走りますから、津軽線(の新中小国信号場まで)も引き続き本州と北海道を結ぶ物流幹線の一部と位置づけられることとなりました。

そして、2022年8月の台風による大雨により、中小国〜三厩間の山間部で、大規模な路盤流出などの災害に見舞われます。JR東日本は復旧費用に6億円かかること、さらに維持管理費用として毎年7億円かかるため、この費用の一部を地元で負担してほしい旨を表明しました。
正直、コロナ禍時期を除けばこの程度の費用はJRの利益のほんのわずかでしかありませんが、社会インフラであるとしても上場企業として極端な不採算事業(路線)については地元による路線維持を迫ろうということです。
最近まで地元との協議が続いていましたが、地元の外ヶ浜町と今別町が廃止とバス転換を容認したことにより、2027年春に廃止となる方向です。
この沿線には北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅があり、この駅と路線があれば、青森はおろか、仙台、東京、函館、そして将来は札幌まで直通となるわけで、地元としては多額の費用負担をして一日4本程度の列車を維持する必要はないと判断したのはやむをえないところかもしれません。
このあたり、他の純粋なローカル線とは事情が違うところですね。

廃止となるのは、旅客輸送の蟹田駅から三厩駅までの区間です。蟹田駅から新中小国信号場までは路線としては残りますが、貨物列車だけが走る路線となり、そこから三厩駅までは完全に廃止となります。

今回、津軽線の蟹田駅から三厩駅まで、今の姿を目に留めておきたいと思い、各駅を訪問してみました。

津軽線 蟹田駅〜三厩駅全駅訪問

蟹田駅

現在の津軽線は、青森から蟹田までの27.0キロでの営業となっていて、その先は代行バスが運転されています。つまり実質的な終着駅です。
津軽線は青森駅からここまで陸奥湾沿いの海岸近くを進んできており、この駅も海の近くです。駅は有人で、首都圏でも減ってきている「みどりの窓口」も営業している津軽半島の中核駅です。今は駅前広場から三厩ゆきの代行バスが出ており、列車から乗り換える人も見かけられました。

蟹田駅
蟹田駅舎の内部
三厩ゆきの代行バス

中小国駅

津軽線は蟹田駅を出ると三厩に向かって内陸方向に進路を変えます。中小国駅は蟹田駅から4.4キロ内陸に進んだところで、蟹田からの断続的に続く集落にあります。無人駅ですが、今も貨物列車が通るため電化されています。単線ではありますが、線路はまさしく幹線らしい雰囲気です。

中小国駅
中小国駅の三厩方面
中小国駅の蟹田方面

大平駅

新中小国信号場で津軽海峡線が分離し、北海道新幹線の高架をくぐった少し先にあるのが、大平駅です。大平駅のホームからは、遠くに新幹線の高架橋を臨むことができます。また、駅の横には保守線だったと思われる分断されたレールと車庫がありました。

大平駅
大平駅の三廏方向
大平駅の蟹田方向
旧保守基地?

津軽二股駅

大平駅を過ぎると上り勾配になります。サミットを超え、再び平坦になってきたところに、この地には似つかわしくない巨大な建造物が見えてきますが、これが北海道新幹線の「奥津軽いまべつ駅」です。津軽線の津軽二股駅は、この新幹線駅の脇にひっそりとあります。ふたつの駅は、連絡通路で結ばれていますが、まったくの別駅で、乗換駅としても扱われていません。
両駅というか、津軽二股駅の隣には道の駅が併設されていて、お土産を購入したり食事をとることができます。また、奥津軽いまべつ駅には無料駐車場が整備されていて、自家用車で乗りつけることが可能になっています。

北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅
津軽二股駅。奥に見えるのが北海道新幹線のホーム上屋
津軽二股駅の三厩方面
津軽二股駅の蟹田方面。遠くに見えるのが奥津軽いまべつ駅への通路
道の駅 奥津軽
道の駅にある新幹線の発車案内。東京直通が誇らしげ。

大川平駅

津軽二股駅で北海道新幹線とは実質的にお別れ、あちらはいくつかのトンネルを抜けながら最終的に青函トンネルへと突き進みます。津軽線はここから三厩まで今別町の集落にこまめに止まっていきます。
大川平は今別町の最も青森市寄りの集落です。

大川平駅
大川平駅の三厩方面。線路内の雑草がだいぶ茂っている
大川平駅の蟹田方面

今別駅

大川平駅からさらに2キロほど進むと今別町の中心部となり、町役場や商店などがあるエリアの中に今別駅があります。
今別駅は蟹田と三厩以外では、唯一きちんとした駅舎がある駅で、駅前には代行バスのほか、コミュニティバスなども入ってくるようで、駅舎内にある待合室はエアコンが入って暖かくなっているほか、トイレなども使用可能でした。

今別駅
今別駅の待合室
今別駅の三厩方面
今別駅の蟹田方面
今別駅前に止まっていたコミュニティバス

津軽浜名駅

今別を出ると津軽線は海沿い近くを走ります。海沿いは割と集落があって、そんなに寂れた感じはしません。ただ、これは青森〜蟹田間にも言えることですが、津軽線と海岸の間には集落がありますが、津軽線より山側にはほぼ人家はありません。これは、このあたりが海に沿って漁村が続いていたところに、津軽線は集落を避けてその山寄りに建設されたということなのでしょう。

津軽浜名駅
津軽浜名駅の三厩方面。待合室がある
津軽浜名駅の蟹田方面

三厩駅

三厩駅があるところは、普通に鉄道が敷けるところのどん詰まりです。三厩の集落は、三厩駅より先になりますが、ここから先は山が海近くまで迫り、ほとんど平地がないのです。ここまで集落の山側に敷かれていた津軽線ですが、その土地がなくなり、行き止まりとなった感じです。
そのため、三厩駅は集落からは離れた何もないところにあります。

三厩駅は、JR化後も比較的最近の2019年まで有人駅で駅長がいました。これは単線区間の閉塞取扱が完全自動化されておらず、運転取扱の要員が駅にいる必要があったからでした。2019年のCTC導入のわずか2ヶ月後に無人化されましたが、その後3年で災害により運転見合わせとなっています。
有人取扱いの頃は、三厩駅のホームは2線あって、機関車列車の折り返しもできました。

駅前には代行バスが止まり、駅舎も待合室として従来通り利用できています。トイレも利用できました。

三厩駅前
三厩駅
三厩駅待合室
三厩駅が有人駅だった頃の窓口
三厩駅の蟹田方面
三厩駅舎からホーム方面を見る。手前の線路は信号自動化に伴い使われなくなったもの
三厩駅前に停まる代行バス

さいごに

津軽線のバス転換が決定したことにより、今回訪れた区間にもう列車が走ることはありません。でもこの区間の鉄道駅として北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅があるのは救いです。
さいごに、まだ津軽線が現役だった頃の写真を一枚。

三厩駅に停車する津軽線の列車

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
こんな記事も書きましたので、よければ読んでいただけると幸いです。



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