1000字くらい短編「僕の夢」
僕の夢は、早くこの鄙びた田舎町を出て都会に行くことだ。
都会は危ないっていうけれど、
僕からしたら人がいっぱいいた方が安心だね。
皆優しくしてくれるし、交通事故とかは怖いけど。
とにかく早くこんな町出たいんだ。
そんな時、あゆみが車を買ってきた。
赤いワゴン。
この車でなら都会に行けると確信した僕は必死に訴えたが、
あゆみはまるで聞く耳を持ってくれなかった。
しかし、僕は運転できないし、あゆみに連れていってもらう他、
長距離を移動できる手段を持ち合わせていない。
悶々とした日々を過ごしていると、あゆみがワゴンを掃除し始めた。
ブラシでゴシゴシと豪快に汚れを取っていく。
どうやら友達と遠出でもする予定だったららしい。
僕もついていきたいとダメもとで駄々をこねてみたけれど、やっぱりあゆみは許してくれなかった。
あゆみは僕の言うことを聞いてくれないし、歩いて町まで行くなんて無理だ。
途中で車に惹かれて死んでしまう。
僕は諦めて日向ぼっこでもすることにした。
こんな田舎町じゃすることもないし仕方ない。
そうだ、このワゴンを新しい寝床にしよう。
おひさまの熱を吸収してほんのり暖かく、すべすべとした感触が心地いい。
次第に眠気が僕を襲い、夕方まで車の上の眠りこけてしまった。
「こら、ミケ!車の上に乗ったらダメでしょう!」
「みゃん!」
あゆみの怒声に跳ね起きる。
まったく、日向ぼっこくら許してくれもいいのに。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?