サボテンのはな
いえの仙人掌が腐った。
美しい花を咲かせた仙人掌は、
砂漠でうまれたいきものなのに
与えられた水が多すぎたのだろう。
大きなからだを生かすには、
小さすぎる根にしか育てなかった。
棘の間に咲かせた花に、たくさんのハチが寄ってきた。
蜜にいのちをかけなければ、
根は腐らないとしっていたでしょう。
恋と呼ぶには軽すぎて、愛と呼ぶには重すぎた。
度重なる苦痛のどん底にいた時、美しい花はわたしを照らす唯一の光だった。そばにいるときだけ安心できた。わたしもあんなふうに美しくなりたかった。花を愛でることを許された契約が、人生で一番の成功だと思っていた。
わたしはまた、彼が地中深くまで根を張って生きる理由になれなかった。死んだあの子の生きる理由になれなかったように。いのちを削って咲かせた花が、未成熟な根を腐らせた。わたしはハチの毒針だった。
自らの棘を愛さなければ、仙人掌は生きられない。
刺して知らせる誰かの指でありたかった。