マガジンのカバー画像

散文韻文

118
日記など
運営しているクリエイター

#庭

庭、あるいは保坂和志論②

二〇二二年四月二十九日(金・祝) すごく雨  もう長いこと、日記を書けてなかった。ひさしぶりにこの青いノートを開いてみると最後のページは、今日と同じ四月二十九日の日記だった。ちょうど一年前の。すごく忙しかったわけでも日記を書くのが嫌になったわけでもなかった。でもいつのまにか中断してしまっていた日記を再開するには何か理由のようなものが必要な気がして、今日は一日じゅう強い雨がずっと降っていて、たぶんこの一年間で私はさびしいという気持ちを一度も抱いたことがなかったんだ。それはとて

夏の庭、あるいは時空間たち

話しかけられて 夏の庭 私はビールを 吹き出してしまう 過ぎ去った人 まだ見ぬ人 ちらほら 傘を持っている人 こんなに青くて 傘は不要な 今なのにね 境界線は ありません 電波は 圏外 届かない 地図を更新しようなどと 考える馬鹿ももういない 小石を並べて 墓とする あの子は誰の子だったのか 風が頰 指が髪 飛んだ鳥 死んだ猫 嫌な匂いだ 知っている おまえ、あのとき 時空間たち