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景観計画における色彩基準について

現在、いくつかの自治体で景観審議会委員やアドバイザーの委嘱を受けています。週に1~2度程度は会議や事前の資料説明や意見交換をしたり、時には現地へ出向いて関係者の方々を交え、周辺環境を確認しながら対象物の色彩についてあるべき姿を助言したり、ということを行っています。

一方、実務では団地の改修(外装の塗替え)に携わることが多いため、設計者として景観計画の届出を行うことも少なくありません。
各自治体の景観計画を読み込み、行為の制限(=色彩基準等)を見ていくと、果たしてこれが『良好な景観の形成』につながるものなのか、と疑問に感じることが増えてきました。

自治体の職員研修等に呼ばれる機会もあり、実務者の立場からそうした疑問を投げかけると、職員の中にも疑問に感じたり、運用の中で柔軟に判断できないこと(個人的にはOKだと思っても、基準からは外れている場合等)にジレンマを感じている方も多いことがわかってきました。

一律に数値で規制することの最大の問題は、それが『何のため』の色彩制限で『基準の運用が結果・成果につながっているか』ということがあいまいなまま、基準に適合しているか否かを判断するだけになってしまっていることにあります。

高彩度の外装色の出現が増え、何らかの制限が必要とされるようになった
色彩の制限を設けることの意義や効果

色彩の規制が必要とされた経緯を振り返ると、やはり『周辺環境から突出しやすい、一定規模以上の規模(面積)に対する高彩度色』を制限することにある、と考えています。
これはどこまで行ってもネガティブチェックでしかなく、(公共空間において)多くの人が『過剰だと感じる/感じやすい派手な色』を制御する効果しかありません。

景観計画における行為の制限は、制御に対しては一定の効果を上げている
色彩基準に適合していても、それが地域にとって『良好な景観』とは限らない

一般的に景観計画における行為の制限は、色彩基準のような定量的基準に加え、明確な基準には示せない考え方や方向性を定性的基準で補完している場合がほとんどです。
『周辺環境との調和を図る/調和に配慮する』という文言はその最たる例で、事業者はもちろん運用する自治体の側が『調和とは何か/配慮とは何か』ということを理解しないまま/解説しきれないまま、定量的基準のみで判断せざるを得ないという現状もあります。

周囲にあるものと『どう関係性をつくるか』ということの議論が必要
『運用の工夫』が求められている

自治体職員からは『景観計画の運用がうまくいかない』という声も頻繁に聞かれます。事業者が言うことを聞いてくれない、という相談も多く、各地の課題には共通のものが多々見られます。
効果的な基準の運用や良好な景観形成に向けての創造的な協議には
 ①専門家の活用が不可欠
 ②基準の適用範囲や規模等の見直しと緩和
 ③事後の検証と評価→良好な事例の蓄積
が『現段階では』不可欠であると考えています。

自身が考える専門家の役割

定性的基準においてはガイドラインや手引きを作成し、基準では書ききれない部分を写真で事例を示したり、図版で解説がなされているものも多くあります。なるほどよくできているなと感じる部分も多い一方、規模や用途・立地が違えばガイドラインに当てはまらない(=その通りにはいかない)側面があることも理解できます。

そうしたツール(ガイドライン等)の活用においてもやはり、現況の課題に対しては専門家の介入が議論を進めるきっかけになる、と考えています。
そもそも、『良好な景観の形成』には明確に正解があるわけではありません。最低限の目安となる基準を参考に/定性的基準を柔軟に解釈し/周辺環境(・まちなみ)との関係性の『あり方を議論』すること。

何のためにやっているのか/成果・効果があるのか、を自分自身にも問いながら、この私なりの『処方箋』をこつこつ広めています。

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