春と夏のすきま、帰り道だけつないだ手
忘れられないデートがある。
デートって言っていいのかわからないけど、ただのお散歩にしては楽しすぎたから。
AM24:00渋谷から目黒川まで歩く。大通りから一本入るだけで人はほとんどいなくて、車も通らない。
途切れ途切れのふたりの会話の間には、流れる川の音だけが聞こえる心地のいい時間だった。
「今日あったかいよね。お散歩日和だ」
「ねー。目のまえに梅雨があって、その先の夏が見える」
「わかる。そういえばかえで、仕事、大変そうだね」
「うん。ちょっとだけね」
「「……」」
「パピコ食べない?」
「おぉ。はんぶんこ?」
「そうそう(笑)買い行こ」
「エモいね(笑)」
思えばふたりで過ごす時間にいつだって会話は多くない。
なんとなく楽しくて、なんとなく心地いい。仕事の愚痴とか、好きな音楽の話とか、都会の真ん中で川の流れる音に感動する時間だ。
友達にふと、この日のことを話したことがある。
「かえではさー、その人に彼女がいたりできたりしたらどう思う?」
「えぇ。考えたこともないけど、悲しくはないかも。でもちょっとだけその彼女になりたいって思うかな」
「気持ち決まってない?それ(笑)」
「いやぁ、ないでしょ(笑)お散歩仲間だよ? 田舎のおじいちゃんおばあちゃんのノリじゃん?」
「そのノリはわかんない。でも、悲しくないはウソじゃない? ウソってか、そのときになったらそれなりに凹む気がする」
まぁたぶん、親友が言ってるんだから凹むんだろうなぁ。
でも言ってしまえば、“深夜の目黒川でパピコわけあって食べただけ”だ。
行きはちょっとだけ距離感のあるふたりが、帰り道だけ手をつなぐようなそんな夜だ。
なのになぜか忘れられない。
欲を言えばもう一回くらい、おなじデートがしたい。
だいたい5~10分でポエムを書きます。
文章の練習で、不定期に書きたい気持ちだけはある。
よろしくお願いします。
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