いざ縁結びの里へ
米子で1泊した翌朝。いよいよ出雲へと向かう。
買っても1000円しない特急券を別途買ってもよかったが、昨日が特急だったのでゆったりと普通列車に決めた。
米子から高性能な普通列車で
まずは普通列車出雲市行きに乗り込む。車両は「キハ126系」。山陰線のスピードアップのために「キハ187系」とセットで導入された普通車両。国鉄型と比べると速度は向上し、特急と共通設計でかなり高性能となっている。これの1両verとして「キハ121」もいる。
珍しい「ボタン式」
ボタン式のドアはかつては関西圏でも僕の地元やローカル線、長時間停車時などに頻繁に行われ、阪神電車でも採用されていたが、換気の必要性や不特定多数が接触する衛生面からか、関西では地元を含めたJR、阪神はほぼ0になった。しかし、山陰のJRや一畑電車はなぜか、ボタン式を継続している。2年前に乗ったときは車掌さん乗務の上でボタン式。どういう差なのか?
絶景とラッシュアワー
そんなこんなで、米子を発車。右に目をやると「中海」「宍道湖」がよく見えるし、普通列車でもかなりのスピード感と線路の安定感。その一方でラッシュアワーで松江に近づくにつれて混んでくる。
選曲と赤っ恥
JR西日本「アオタビ」CMタイアップを筆頭に朝っぽい曲をセレクト。車両の性能がいいからか普通列車でもかなり楽しい。余談だが、『ノーチラス』かけた後にイヤホンとったらそれがどこからともなく流れてきて「!?」と思ったら僕のスマホがポケットの中で勝手に流してたという…恥ずかった。そして、前の人が冷たい視線を向けてた理由も…
行き違い→待ち合わせ
直江駅では「反対列車の“待ち合わせ”」。奈良線や草津線などエリア内他の路線では「行き違い」と表現し、以前はそうしていたが、〝「縁結びの里」へ行くのに残念〟という乗客の意見と提案から、出雲へ向かう列車は縁起良く「待ち合わせ」と放送するように変えた。
出雲に到着!
いろいろあって1時間ぐらいで出雲市到着。
映画に出てきたあの電車へ。
出雲市からは出雲大社を目指すべく乗り換える。
奥にある「電鉄出雲市」から「一畑電車」へ。地元では「バタ電」と略して愛されている。
2010年公開の映画「RAILWAYS」の第1作はこの「バタ電」が舞台で中井貴一さん演じる主人公が50歳目前で「バタ電」の運転士になる夢を目指しながら、悪化した家族との関わりの変化を描いている。「デハニ」というオレンジ色の旧型を始め、一畑電車や地元が総力を上げてロケを決行。この後2作目に「富山地方鉄道」3作目に「肥薩おれんじ鉄道(鹿児島、熊本)」とシリーズ化された。
そんな「バタ電」で「出雲大社前」へ向かう。きっぷはキャッシュレスOKでコンビニで使えるものは全部使える感じ。それと北海道でしか見ない列車ごとの改札をしていて、ダブルで驚いた。
首都圏から山陰で余生
エレベーターを上がると待っていたのは「2100系」の「松江しんじ湖温泉」行き。オレンジに白ラインという映画でも出てきた「バタ電」のイメージカラーが目を惹く。個人的には青と黄色のツートンを図鑑で見たが、映画の影響はものすごい。
そんなこの電車はかつては「京王線」で走っていた「初代5000系」。京王の悪いイメージを変え、殻を破る存在として新宿と八王子を結ぶ特急を中心に活躍してきた。1990年代に引退したものの、「富士急行線(山梨)」や「ことでん(香川)」「伊予鉄道(愛媛)」など地方鉄道に譲渡され、現役を続けている。さらに、「伊予鉄道」から「銚子電鉄(千葉)」「富士急」から「岳南電車(静岡)」などへ2次譲渡された珍しい変遷もある。
それでも、譲渡元の昔の社名「KTR(京王帝都電鉄)」の文字や古いモーターや壁、ドアが変えられていないなど往年を偲ぶ点が散見される。
さらに数分後にやってきた当駅止まりは「ご縁電車しまねっこ号」。ピンクのビジュアルに「縁結び」や島根のゆるキャラ「しまねっこ」をあしらっている。
そんなこの電車も譲渡車。かつては東急電鉄にいて、東横線から東京メトロ日比谷線北千住への直通列車を中心に活躍していたが、副都心線などとの直通開始で撤退。上田電鉄(長野)や伊賀鉄道(三重)福島交通飯坂線に譲渡された。「バタ電」のものは中間車に運転台を付けたため東急時代とは異なる顔つきだが、車内やコルゲートの凹凸、茶色い座席などがその懐かしさを漂わせる。
雨とバタ電
さて、10時25分に電鉄出雲市を発車。さっき晴れてたのも束の間、雨が降り出してきた。乗ってる車両は年代物ではあるが、雨でも空転することなくガタゴト揺らしながら軽快に駆け抜けていく。
乗り換え
川跡までやってきたところで乗り換える。そこにいたのは「7000系」。譲渡車ではない自社発注の最新モデルだ。
どことなくJR、どことなく地元
JR四国の電車と同じ車体に「新快速」の225系電車の電装品を組み合わせたもの。米子にある「後藤工業」というJR系メンテナンス子会社が製造した「メイドイン山陰」だ。
比べてみるとどことなくそっくり。音に至っては個人的にいつも聴くモーター音。地元を思い出す。
同じでも個性いろいろ
現役唯一の1両で昼間は何度も出会し、遂には在籍車両をフルコンプで見た。それでも、4両全てラインの色が異なっていて、「出雲大社」「三瓶山※」「宍道湖」「棚田」をイメージしたカラフルさ。
行きでは小雨。帰り道では本降りの雨となったが、『雨とカプチーノ』や『DROP』がハマる感じ。『六月は雨上がりの街を書く』『蕾に雷』はワイパーのリズムと合って心地良い。「晴れ男」寄りな僕だから嬉しい旅路だ。