映画「生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事」

最後の官選沖縄県知事島田叡のドキュメンタリー。島田氏についてはその生涯を紹介する本が複数出ていて、自分も何冊か読んだことがある。本映画では、それらを参考にしつつ、関係者のインタビューもうまく織り込んで、わかりやすい作品に仕上げていた。
特に、大田元知事が、島田氏に対する、軍と一体化して県民を犠牲にしたという批判について、当時の軍部の絶対性や行政の限界を指摘し、当時の実情に照らすと、軍と一体化して県民を犠牲にしたという批判は当たらないし、島田氏は置かれた中でよくやったと評価していたのが印象的だった。鉄血勤皇隊に属して沖縄戦を戦い、戦後は沖縄県知事まで務めた人物の言葉は重い。
旧内務省には、国民を守る護民官という気概があったと言われている。死を覚悟し敢然と沖縄に赴任し、沖縄県民救援に心血を注いだ島田氏には、そういう良き伝統が発露したと言えるし、それだけでなく、島田氏そのものにあったヒューマニティー、優れた資質が、限界の中で、あれだけの働きにつながったと感じる。
島田氏だけでなく、海軍の大田中将など沖縄県民の犠牲を顧みない陸軍に抗して動いていた人々も紹介されていた。
戦略の誤りを戦術で挽回することはできない。その意味で、本土決戦のための時間稼ぎであった沖縄戦は、典型的な戦略の誤りだろう。ただ、その中で、沖縄県民を救おうとした人々がいたことは、長く記憶に留められ顕彰されるべきと思う。
それと共に、大田元知事が指摘するように、島田氏ができなかったことがきちんと検証され、今後へと生かされるべきだろう。

http://ikiro.arc-films.co.jp

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