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『10年後、ともに会いに』

書籍情報

それは17歳の自分との約束。
「いつか、友を訪ねに世界を旅する」

27歳。
思春期を一緒に過ごした仲間たちは今、
世界のどこかで、揺れながら生きているのだろうか。

旅はヨーロッパ、北米を経て
イスラエル・パレスチナへ。
そしてエジプトで革命に出会う。

「迷ったときはどうやって決めるの?」
「それは教えないよ。だって君は答えを知っている」
トンネルの向こうに見えたものは、なに?

上記リンク先より

なぜ読んだか

今年読んだ以下の本の中で、クルミドコーヒーきっかけで出版にいたったこの本を知った。そして、この本が世界を旅する話で興味があったので読んでみた。

記憶に残っていること

世界の友を訪ねて旅をする

著書は世界の国々から生徒が集まるアメリカの高校を卒業した。そして、27歳のときに、1年間世界を旅しつつ世界各地に住む高校時代の友人を訪ねる。当然ながら当時高校生であった友人も大人になり、それぞれの人生を過ごしている。母/父になっているものももちろんいれば、仕事に行き詰まっている人もいる。そんな友人と久々に再会し、大人になったような会話もすれば大人になったことで感じるようなことを語り合ったりもしていたようだ。

きれいだけど日記のようで親しみのある文章

著者が旅の間につけていた日記をもとに書かれた本(?)であるため、変に他の人を意識しすぎていないところが良かった。文章自体は読みやすく、きれいではあるのだが、内容は他人に見られているようなことをあまり意識せずに自分自身が感じたことを丁寧に言語化しようとしていることが感じられる。

エジプトのデモ

エジプトで革命(アラブの春)がおきた前後でちょうどエジプトに著者がいて、そこで見て聞いたことも記されている。著者はもともとエジプトや情勢に詳しいわけでもなかったようだが、デモの広場に足繁く通い、実際にデモに参加している市民の人々の声を直接聞くことができたようだ。
エジプトの革命についても本で読んだことはあったものの、専門家というかすでにエジプトをかなり熟知している人の話であったため、この著者のような方が専門家とは違う切り口で現場の雰囲気を言語化してくれているのは興味深く読むことができた。

所感

いい本でした。
世界を旅する系の本は、著者がかなりエクストリームな旅の仕方をしていたりしてなかなか自分事化し辛いものが多い気はする。それはもちろん本にするのだからなにかおもしろい要素が必要で、それがたいていはその旅の異常さ/非日常さだったりするからだと思う。

この本は一方で、そこまでのエクストリームさはない。
いや、実際は著者はゆく先々で現地の人と交流し、ときには交流し、渡り歩いているので十分にすごいとは思う。それでも著者は上述の通り、自分の弱さや感じたこと、違和感みたいなものを隠すことなく、文章にしている。だから、自分とは遠い存在とは感じさせないのかもしれない。

また、この方は経験(活動)をベースにしているのではなく、旅で出会った人を中心に据えてこの本を書いている。他の旅系の本でももちろん現地民との交流については触れられるが、それと同じかそれ以上に旅先でみた景色、いったこと/やったことが中心に語られる気がする。この本ではあくまでそういったものは中心ではなく、描かれたとしても人を語る文脈のような役割を担う形になっていると感じた。そういうところに著者の想いが感じられた。


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