『NBAの対コロナ作戦 ; バブル方式顛末記』
書籍情報
なぜ読んだか
本屋でたまたま本書が目についた。もともとNBAは好きだし、コロナの間にバブルという方式をとり試合を行っていたのも知ってはいたが、具体的な内容はそういえば全然知らないなと思った。(バブルがなにかについては以下の記事がわかりやすい。)
冷静に考えると、ディズニー・ワールドの中に隔離空間を作り出すってめちゃくちゃなことをしているなと思い、読んでみようと思った。
記憶に残ったこと
どちらかというと「どのようにバブル方式を行うか決め、どうやって実行されたか」みたいな企画者側の部分に興味があったのだが、著者がバスケットボールの記者であるのもありどちらかというと参加者側の内容だった。
そのため、当初の期待とは異なったが、十分に面白かった。
バブルでの生活
当然、非常に厳密な感染対策を取っている。というのも、150億円以上の費用をかけているのに結局内部で感染爆発して試合ができなくなれば大損失であるし、なにより生命に関わる。そのため、毎日のPCR検査はもちろん、厳密なソーシャルディスタンスや活動範囲制限がある。しかも、最初から最後まで勝ち残ったチームはこれが90日間も続くのだ。
そういった身体的な苦しみもあれば、当然だが精神的な苦しみも強い。ニュースだけでみていると忘れがちだが、当然90日間もそのような状態であれば正気を保つのは誰でも難しい。著者本人の体験と、選手へのインタビューからそういった状態についての描写があり、改めて過酷さを知った。
人種差別問題
ちょうどバブル開催中の期間にBLM(Black Lives matter)のきっかけとなる事件が起きた。これももちろん日本からニュースとしてはみていて、内容は知っていた。BLMを受けて、NBAの試合が数試合ボイコットされたことも知っていた。ただ、私はどこか「少ししたら再開するだろうな」くらいに思っていて、実際に少しの期間をあけて試合は再開された。
しかしながら、本書を読むとBLM自体をいかに選手やNBA自体が重く捉えていて、それが精神的に選手にも大きな影響を与えていたことがよく感じられた。NBA選手はお金もあるし、セレブであるともいえるが、そんなのは関係なく黒人のコミュニティとして落ち込み、そして強く憤りを覚えていた。試合もボイコットされたまま再開されない可能性もあり、それほどまでに深刻な状態だったのだ。改めてアメリカの人種差別の深刻さとそれに対しての強い憤りが生々しく感じられた。
感想
上述の通り、当初期待していたものとは違う内容ではあったがとても楽しめた。それぞれ選手の生活や性格も垣間見えるようなエピソードもあった。著者は普段純粋なバスケットボールの記者でもあるため、当然ながらバスケットボールに対しての戦術やプレイの描写がうまく、バスケットボールの試合が見たくなるような文であった。
この本を読むことで、NBAの選手の人柄がうかがえる本をもっと読んでみたいと思ったところ、ちょうど最近LeBronの自伝(?)が出版されていたので、購入してみた。ただ、自分史上最も厚い本であるかもしれないってレベルでボリュームがあり(688ページある笑)、ビビっている笑。
少しライトな本を一旦挟むかも。
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