『ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策』
書籍情報
なぜ読んだか
知人がSNSで紹介しているのを見て、ダークパターンの定義ってよくわかってないなと思い読んでみた。
記憶に残ったこと
本書はいわゆるダークパターン(著者はよりバイアスのない表現にするためにDeceptive patternと呼んでいるが)について、事例とともに網羅的にわかりやすく説明する本である。
基本事項のわかりやすい解説
ダークパターンで狙われる人間の認知の脆弱性と、そのダークパターンの手法についてわかりやすく分類され記載されている。一つ一つが真新しいものではなかったが、改めて整理されると自分の中の理解もよりよいものになった。
豊富な事例
各パターンについて、実際の欧米のサービスのUIのスクリーンショットをもとに紹介されるためより理解が進む。どうしてもこの手のものは、色々な事情で適当に作られた架空のサンプルUI画像とかになりがちなので、実際に世の中にでていたビッグテックのサービスのUIだとかなり問題意識がより自分の中で具体化された。また、アメリカの大学などにおけるダークパターンによる研究なども引用しており、実際にダークパターンによりどういった反応の違いがあるかが数字でも表されているのも参考になった。
法令的な話
本書自体はもともとアメリカ(?)で販売された本なので、日本の法律には触れられていないが、それでもアメリカの法令でダークパターンがどう制限されているかが明記されていた。それとともに、それらに基づいて実際に行われた罰金なども紹介されていた。
Fortniteはダークパターンで意図せぬ購入を招きまた、そのキャンセルができないという状態に対して、5億ドルもの制裁金が2022/12に課されている。
所感
観点や情報として新しいものは正直あまりなかったが、情報が非常に整理されていてかつ網羅的で自分の中ではよりクリアになった。事例が豊富なのもすごくありがたい。
とはいえ、ダークパターンって定義難しいよなとも改めて思った。もちろん明らかにNGなラインはわかりやすい。(退会をあからさまにハードルあげたり、顧客に不利となる情報のみをあからさまに見にくくするなど)
ただ、やはりデザインの観点のバランス上、色味を薄くしたり小さくしたりすることは悪意なく行われるケースも多いだろうし、そういった情報も明らかに顧客に不利になるような内容でもないときもある。
こういうものが、ABテストにおいてCVRだけが絶対指標である(とすくなくとも現場レベルではなっていく)状態において、このダークパターンをどうやって避けていくかはきちんと考える必要がある。もちろん会社自身でもどうそのコンプライアンスを守っていくかという話もあるが、政府がきちんと取締をしていくことも重要だと思われる。それは、責任を転嫁する意図ではなく、多かれ少なかれ利益が目的にはなってしまう営利組織においてはその倫理観だけに任せることは現実的にはかなり難しいと思う。
そのため、それが経済的にも問題になりうるということを示すためにも、きちんと政府が企業に対して制裁金を課していくようになるとよいと思う。そして組織内部の人間にとっても、そういった制裁金がかされたことがあるという事実により、ダークパターンを避ける意思決定を会社の中でも促しやすくなるはずなので。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?