見出し画像

人材集めは人事部の仕事じゃない

 ついにNewsPicksのフォロワーが200人を超えました。ありがとうございます、いづつです。昔のTwitterアカウントの最高記録が1000人だったので、ユーザー規模を考えると200人ってだいぶ健闘しているんじゃないかと、調子に乗っております。

 また転職ネタですが、こんどは企業側の人に向けた話です。

■もう転職って普通の活動ですよね

 電車に乗っていると、ぱっと見渡すだけでどこかしらに転職支援ビジネスの広告が目に入るくらいには、転職がありふれた光景の時代になりました。いいことです。

 さて、こうなると困るのが自分の転職も人の転職もこれまで考えもしなかった旧世代の人事部の方々。転職が盛んと言っても出る人と入る人の数の期待値は同じだろうとタカをくくっていると、出る人のほうが多くてヤバイみたいな状況になっていませんか。ただでさえ日本の労働人口というマスが減っていくことも加味すると従業員はどんどん減ります。

 ニュースを読んでいると、新卒入社から3ヶ月で出て行く人もいるし、内定を蹴ってもう一度探し直すみたいなケースも見られます。こう書く私も34歳にしてすでに4社目。同世代の親戚や友人もコロコロ転職しています。久しぶりに会ったときに「今何してんの?」くらいに、むしろ「そろそろ違う仕事してるよね?」みたいなノリで話し始めます。そんな20-30代が何を考えて求職活動しているか、わからないと対策も打てないことでしょう。ズバリお教えします。

■今どきの求職活動はこうです

(1) 会社を選んでいるわけではない

 まず、会社を選ぶという感覚がありません。たぶんここがほとんどの場合盲点かつ致命的な点ではないでしょうか。会社の雇用の安定性なんてあてにしていません。多くの会社の寿命は人の寿命より短いと、平成の30年間で学んできました。強いて近しいものを選ぶとしたら社長です。それは「この会社のガバナンスは大丈夫か」という視点。足切り材料です。みんなOpenWork(旧Vorkers)読んでいますよ。

 いまだに面接で「なぜ弊社を選ぶのか」は定番質問のようですが、そろそろ意味のないものになっています。もちろん応募者はそれなりの武装をしていますからそれっぽい回答をしますが、多くの本音は「家から近いから」「ネームバリューがあるから」「ここじゃなくてもいいんだが」などです。めでたく入社した後も、愛社精神など期待してはいけません。それは充実した勤務の毎日を実感してもらった結果、おまけでついてくるものです。ましてやリッチな食事やエクスカーションなどで露骨なおもてなしなどしようものなら、「腐った会社だ、逃げよう」と悪印象へ急転直下します。

(2) 仕事を選んでいる

 選んでいる対象は仕事です。人間はやりたいことをやっているときに最も高くパフォーマンスを発揮するというのを、よく知っています。YouTuber然り、TikTokインフルエンサー然り、そういうエネルギー溢れる生き方をしている同世代の若い人たちを簡単に見つけることができます。

 自分が老いる頃にはどうせ日本の社会保障システムは崩壊しているという諦めから、定年で仕事を辞めるという考え方もなく、預金残高よりも稼ぐ力を高めることを重視するので、生産性の高い仕事をしてその感覚を覚えていたいと考えます。

 英語では求職活動を"Job hunting"と言うことはあっても"Company hunting"とは言いません。日本語では「就職先を探す」という言い方をする人がまだいますが、そろそろ「仕事を探す」が上回っていることでしょう。望みの仕事さえあれば会社じゃなくても良いからです。

(3) 本質的には上司を選んでいる

 仕事を選んでいると書きましたが、パフォーマンスを発揮できるという環境に価値を見出しているので、それを認める上司かどうかが実は本質的に重要になります。デザイナーの仕事をしているはずなのに上司の要求が細かすぎて自分のデザインにならないとか、自分の得意分野への市場開拓を意気込んで営業になったのに既存ビジネスの防衛しかやらせてくれないとかいうことがあると、すぐ辞めます。

 いま求職者が求めていることは、求人票の記述内容が守られることは大前提の上で、自分の価値観を理解して上手に活用してくれそうかどうか。ワガママだと言いたくなるでしょうか。新人類の視点からすれば、価値の低いことをして貰える給料に持続性が見出せないだけです。

(4) 異動は強制できないものと思え

 社員は仕事や上司を選んで仕事に励んでいるので、異動は基本的に強制できないものと認識を改めてください。異動命令を素直に聞いてくれるのは「就職先を探して」きた社員だけで、「仕事や上司を探して」きた社員はインセンティブを失うので断るか辞めてしまいます

 この前のカネカの例だってそうでしょう。家族との同居と休職前の仕事に価値を見出していた社員が、事前相談のない転勤命令に従うはずがないのです。

 世の中はカネカの対応に批判的なようですが、カネカがまずかったのは「社員とその家族を大事にします」と表明しながら社員に相談なく異動を命じたからで、初めから「社員の個人事情など知らん。異動に応じないなら辞めろ」というドライな姿勢でいればよかっただけです。社員に甘くしていると経営上いざという時に身動きがとれなくなるので、おそらく今後ドライな会社が増える傾向になると思います。

■なら、どういう募集や選考をしたらいいのか

 会社でもなく、仕事でもなく、上司を選んでいるのですから、応募者と、仮に入社した場合に上司になる予定の人との1 on 1面談を設けることが不可欠になります。人が欲しい現場のマネージャーも、もはや人事部を頼るよりプロのヘッドハンターを頼ったほうが確実です。人事部には事務手続きに集中してもらいましょう。

 未だに新卒一括採用、配属先ガチャをやっている企業は、まったくもって逆行なのが、おわかりいただけるでしょうか。バブル崩壊後、すでに人生のモデルケースは溶けてなくなり、各々が頭を使って生き方を考えています。ならば企業も、過去のモデルケースを捨て去り頭を使って人集めをしなければいけないということです。

 これに気づいたからかどうかはわかりませんが、転勤を強要しないという指針設定で応募者が激増した会社があるそうです。

大学生が何を重視しているのか、よくわかる例ではないでしょうか。しかしこれ、経営視点で見て予算に手入れしづらくなって超保守姿勢を強いられる恐れがあるのと、転勤させないけどクビにはするという可能性があるので、企業側も就活生も手放しで喜べるものではないと思うのですけどね。

 ではまた。


Yoshiyuki Izutsu

https://linkedin.com/in/yizutsu/


いいなと思ったら応援しよう!