【僕ヤバ感想】Karte.69 僕は信じてみたい
前回、山田はなぜ市川の来訪を親に言っておかなかったのかのだろうと、腑に落ちなかったけれど、今回読んで思った。
山田の認識では、もう市川と付き合っている彼氏彼女の関係なのでは?
そう思わないと、山田の性格的に合わない台詞が多いのだ。
前回最後、山田ママが市川を尋問(この時点における山田ママの発言は、字面だけ見ると、ただでさえ緊張しまくっている中二男子にとっては圧迫面接に近いものがある)したのに、山田が何も口を挟まなかったのは「市川が自分で山田との関係を説明するだろう」と信じ切っていたからであるならば。
また、萌子がその場を救おうととっさについた嘘に山田は凍りついた表情を見せていた。前回を読んだ時点では「山田が、萌子の嘘を信じていた可能性」もあったわけだけど、今回その可能性は消えて(後述)、市川がそれを否定しなかったことにショックを受けていたのだとしたら。
そして「楽しい?」って冷え切った目で市川に問いかけるのも「萌子の彼氏のフリしているのがどうして楽しいわけ?」と、完全に「彼氏の不誠実さ(?)を責めている」スタンスであったならば。
それらがすべて、完全に山田が市川とは「彼氏彼女の関係」だと思いこんでいたなら納得がいくのだ。
山田が、市川との関係を普通の友達だと思っていたならば、前回と今回、山田の態度や発言はかなり傲岸不遜なものとなるけれど、それは山田の性格とはあわない。
挙げ句に、「萌子の彼氏彼女発言」は嘘、だと市川に向かって言い切っている。山田は「もしかしたら市川、私の知らないところで萌子と付き合っていたの?」なんて疑いはミリもないから、市川に対して「どうして嘘をさっさと否定しないわけ?」と責めちゃうんである。完全に彼女面。
過去に「友達」「とりあえず」「今は」と市川から言質をとっているし、その後に起こったイベントでも「もう両思いでしょ!」と思い込んでてもおかしくないことは、ない、かも。
でも市川はそこのスタートラインにすら立っていない。そこに山田は気づいていない。
まだ自分が思い描く明るい未来を信じきれず、一旦は逃げることを決めたら(気持ちはわかる)、濁川くんがまるでCMの吉田沙○里のようにいきなり登場していた。市川にとって濁川くんは守ってくれるアル○ックなのだろうか。
濁川くんは、いまいち押しが弱いけれど、市川に考える余地を与える上では、このくらい押しが弱いほうがいいのかも。市川は心の中の濁川くんと自問自答して、濁川くんに押し切られることなく、自分で行動に移していく。
市川は山田との将来どころか、自分を信じきれていない感じ。でもそれでも自分の中の「信じる気持ちの存在」に気づけて、よかったな…と思わず保護者目線になってしまう。異性の友人の母親に対して、きちんと頭を下げられるのは、この年齢の男子としてはかなり精神年齢が高いのでは。
しかも、山田に対する、申し訳無さや、誠実でありたいという気持ちで市川は山田ママに説明することを選択する。気持ちがまっすぐで、眩しい。かっこいい。面白くてときめくだけではなく、少年少女の心の成長にもいい漫画ではないか。
萌子の態度。基本的に頭の回転が速い、その場の空気を読んだ上で、知的に素早く対応していく子だと私は思っている(山田の行動もかなり速いけれど、山田の行動にはどこか、野生の動物のような、直感めいた衝動も感じられる)。萌子の今回での行動は「どうやって市川と彼氏彼女の関係をうまく見せかけるか」に注力して、かなり緻密に動きながら、頭をフル回転させているように見える。
私が萌子だったら、山田のことは友達として好きでも、「それはそれとしてさあ、あんた、自分の親くらいにはきちんと説明しときなね」くらいは山田に対して思う。
萌子は前回、山田が強引にお菓子作りの場を決めたときに、なんとなく山田の目論見には気づいていたのではないか。そして萌子の目から見た山田ママは「厳しい人」。そんなママの手前を繕ってあげたのに、山田は根回しもせずになにしとるんかーい!そんなやつに睨まれる筋合いあるかーい!こっちはこっちで苦労してるんじゃあ!という気分になって、あえて市川を名前呼びで煽りに行ったのか。
にゃあが叫びたくのも分かる。にゃあの叫びは誰に向けたのか。その場にいた中学生全員に対してかもね。
でも、その名前呼びで、ママが三者面談のことを思い出したのかも、である。(きょーたろー、くん?そう言えばあのとき杏奈はそんな名前の子について隣のお母さんと話して飴をもらっていたわね、みたいに)。
ママはママで、いきなりのことにテンパって、市川を問い詰めたことを申し訳なく思っていたのかもしれない。なんとなく文化祭の準備の回で、山田がうっかり市川を責めて、でもすぐその後誤解が解けて謝ったことを思い出す。すぐ謝れるって親子の共通点なのかな。
ママが優しく大人の対応をしてくれてよかった。娘が三者面談で、市川の母からもらった飴を食べずにポケットに入れた、ことを思い出しただけでも娘の感情を読み取れそうである。
そんなママに対して、市川がきちんと自分の言葉で萌子の発言は嘘であることを告げ、しかも誰をも攻めることなく市川が頭を下げたのはかなり好印象ではないか。誰も責めない、というのはすごいこと。
あと、市川が消極的な選択とは言え、洗い物係を買って出たのは女子やママにとってポイント高くない?料理作るのは楽しくても、洗い物って楽しい作業ではない場合多いし(私にとってはそう)。しかもちゃんとエプロンを持ってきてる。お菓子作りは慣れていないと小麦粉で汚れたり、砂糖やバターでベタつくことも多いからエプロンをしたほうがいい(ばやしこ・・・)。でも家庭科のエプロンとは違うのね。
最後にどうでもいいこと。材料からすると、チョコレートが入ったケーキかクッキー?を作ろうとしているのだろうか。卵がかなり出ているからケーキかな。
お菓子を作るには、かなりの腕力と緻密さがいる。山田パパはどうやらシェフなり、パティシエなり、ショコラティエなり、あるいは料理人であることが今回わかったけれど、そんなプロからしたら、ばやしこが小麦粉を計量も篩にもかけずにボールに開けようとしたり、女子の腕力でバターをエアレーション(クッキーやケーキを作る上で必要となることが多いプロセス。すごく疲れる上に出来を左右する決め手にもなる)をしようとしているのを見たら、危なっかしくて見ていられなかった、であろう。
4/21追記。道具に綿棒と台がでているからクッキーかもね。クッキーなら学校で配るには溶ける心配もなく、大量に作れるし、義理配布用にはいいかも。
パパの登場で一気に空気が変わった。雪の日の出来事は明らかにされるのか。そして最後ママはどこへ行った。
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